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44 お家に帰りたい
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「悪いが近隣諸国全てここを見張ってるぞ。石を投げれば間者に当たる、そんな状況だ」
「ひい!黒いおじさん!」
おかしい、村人と我々しか知らないはずの裏山要塞になんで黒曜将軍が現れるんだ。しかもこんな夜更けの密談中に!
「すいませぇん……探りに行ってつかまっちゃいましたぁ……」
「あ、クレヤボンスの部下の2号くん……」
諜報部を纏めているクレヤボンスにも部下がいる。全部で何人いるかは教えてくれないけれど、相当な数がいるらしくていつも有益だったり無益だったり笑えたりする情報を教えてくれるのだけれどその中で「2号君」と呼ばれている若者が子猫でも吊り下げられてるかのようにぶら下げられている……ありゃぁ深入りして捕まったんだぁ。
「ちょっと自決しようかと思ったんですけどぉ開戦中じゃないし、助けてくれるかなぁ~って。ボスに相談したら死ななくて良いよー黒曜将軍に泣きつきなさーいって言われまして」
「まあ、死ななくて良かったよ。命は大事にしてよね」
「ふわー、女神モードありがとうございますー」
会話の端々に意味が分からない単語が混じっていたけれど、今は2号君と遊んでいる場合じゃないよね。2号君をそこら辺にポイっと捨てて、黒曜将軍は私の横に来た。怖いなぁミニィ助けて。
「まあ、そうだろうと思っていました。どう見ても我が国のポンコツ諜報員ではない普通の動きをする怪しい村人が増えてましたからね」
「ぽ、ポンコツってうちの部隊以外にもちゃんと王家の諜報機関だってあるんだから……」
確かにあるんだよね、でもそれは全員が吐き捨てるような顔をした後薄ら笑いを浮かべる。
「アレがねぇ」
「まああの程度が限界なんですよ」
「ヘイズの方が情報集めますよ、アレに比べたら」
うん、そうだね……王家自慢の諜報機関はなんていうか……使えない。クレヤボンス達が一ヶ月以上前に掴んで来た情報をものすごく得意げに報告して来るなんてザラだった。大体報告された時には対処もすんでいることが多くて
「今更いわれてもなぁ……」
ってことばっかりだから放置してたんだよね。どっかの公爵家のお墨付きだった気がしたけど、もうどうでもいいか。
「そういう輩ですらここの異常さに気がついてるんだ。我が国や近隣がこの村に間者を放ってないわけないだろう」
「あ、はい」
私を捕まえようと伸ばして来た黒曜将軍の腕から逃れてミニィに飛びつく。ちゃんと捕まえてくれて助かった。危なく爪でミニィの服にぶら下がる所だったよ。
「あやつらでは大した情報は得られんだろうがな。温泉が出て賑わってると吹聴しておくつもりだ」
それでもまだ腕を伸ばしてくる黒曜将軍からミニィは逃してくれる。私はタムにスローインされた。
「へぇ、他国の将軍が何故そんな情報操作の手伝いをしてくれるんです?言っておきますが子狐は渡しませんよ」
椅子に座って会議していたのにミニィはぱっと立ち上がり、黒曜将軍とタムの間に壁を作った。
「なぁに、欲しい物が有れば必ず手に入れて来た俺だぞ?」
左にゆらりと黒曜将軍は傾く。これはひっかけだ!将軍は右から抜けて来る!
「くっ!」
「遅いぞ、百頭!」
右に抜けると思わせてやっぱり左から来た!ううっ、異常過ぎる早い体捌きにミニィではついていけない!
「ヘイズっ!」
「おうっ!」
びゅん!と風を切り裂いてタムからヘイズに投げ渡される。あまりの速さに体が流線形になりそうだよ!
タムが投げた射線上にヘイズの小脇があって、勢いそのままに抱えられて外へ飛び出した。
「それを返せ!」
「お前んじゃねーし!」
黒曜将軍はもうタムの頭を踏み台にしてヘイズに飛びかかってる。やだもう、このひと怖い!
「やらせっかぁ!」
「ふっ」
どこに仕掛けてあったのか矢が黒曜将軍の肩当てに刺さる。ありゃ無傷だ、上手い。
「あーっ!あんな所に義父上が二週間穿き潰して穴の空いたしましまパンツが干してあるー!」
「どこだ?!ぐはっ」
一瞬よそ見をした黒曜将軍はクレヤボンスがこっそり張っていた縄に足を引っ掛けて見事にすっ転んだ。
もうやだ、お家に帰りたい。
「ひい!黒いおじさん!」
おかしい、村人と我々しか知らないはずの裏山要塞になんで黒曜将軍が現れるんだ。しかもこんな夜更けの密談中に!
「すいませぇん……探りに行ってつかまっちゃいましたぁ……」
「あ、クレヤボンスの部下の2号くん……」
諜報部を纏めているクレヤボンスにも部下がいる。全部で何人いるかは教えてくれないけれど、相当な数がいるらしくていつも有益だったり無益だったり笑えたりする情報を教えてくれるのだけれどその中で「2号君」と呼ばれている若者が子猫でも吊り下げられてるかのようにぶら下げられている……ありゃぁ深入りして捕まったんだぁ。
「ちょっと自決しようかと思ったんですけどぉ開戦中じゃないし、助けてくれるかなぁ~って。ボスに相談したら死ななくて良いよー黒曜将軍に泣きつきなさーいって言われまして」
「まあ、死ななくて良かったよ。命は大事にしてよね」
「ふわー、女神モードありがとうございますー」
会話の端々に意味が分からない単語が混じっていたけれど、今は2号君と遊んでいる場合じゃないよね。2号君をそこら辺にポイっと捨てて、黒曜将軍は私の横に来た。怖いなぁミニィ助けて。
「まあ、そうだろうと思っていました。どう見ても我が国のポンコツ諜報員ではない普通の動きをする怪しい村人が増えてましたからね」
「ぽ、ポンコツってうちの部隊以外にもちゃんと王家の諜報機関だってあるんだから……」
確かにあるんだよね、でもそれは全員が吐き捨てるような顔をした後薄ら笑いを浮かべる。
「アレがねぇ」
「まああの程度が限界なんですよ」
「ヘイズの方が情報集めますよ、アレに比べたら」
うん、そうだね……王家自慢の諜報機関はなんていうか……使えない。クレヤボンス達が一ヶ月以上前に掴んで来た情報をものすごく得意げに報告して来るなんてザラだった。大体報告された時には対処もすんでいることが多くて
「今更いわれてもなぁ……」
ってことばっかりだから放置してたんだよね。どっかの公爵家のお墨付きだった気がしたけど、もうどうでもいいか。
「そういう輩ですらここの異常さに気がついてるんだ。我が国や近隣がこの村に間者を放ってないわけないだろう」
「あ、はい」
私を捕まえようと伸ばして来た黒曜将軍の腕から逃れてミニィに飛びつく。ちゃんと捕まえてくれて助かった。危なく爪でミニィの服にぶら下がる所だったよ。
「あやつらでは大した情報は得られんだろうがな。温泉が出て賑わってると吹聴しておくつもりだ」
それでもまだ腕を伸ばしてくる黒曜将軍からミニィは逃してくれる。私はタムにスローインされた。
「へぇ、他国の将軍が何故そんな情報操作の手伝いをしてくれるんです?言っておきますが子狐は渡しませんよ」
椅子に座って会議していたのにミニィはぱっと立ち上がり、黒曜将軍とタムの間に壁を作った。
「なぁに、欲しい物が有れば必ず手に入れて来た俺だぞ?」
左にゆらりと黒曜将軍は傾く。これはひっかけだ!将軍は右から抜けて来る!
「くっ!」
「遅いぞ、百頭!」
右に抜けると思わせてやっぱり左から来た!ううっ、異常過ぎる早い体捌きにミニィではついていけない!
「ヘイズっ!」
「おうっ!」
びゅん!と風を切り裂いてタムからヘイズに投げ渡される。あまりの速さに体が流線形になりそうだよ!
タムが投げた射線上にヘイズの小脇があって、勢いそのままに抱えられて外へ飛び出した。
「それを返せ!」
「お前んじゃねーし!」
黒曜将軍はもうタムの頭を踏み台にしてヘイズに飛びかかってる。やだもう、このひと怖い!
「やらせっかぁ!」
「ふっ」
どこに仕掛けてあったのか矢が黒曜将軍の肩当てに刺さる。ありゃ無傷だ、上手い。
「あーっ!あんな所に義父上が二週間穿き潰して穴の空いたしましまパンツが干してあるー!」
「どこだ?!ぐはっ」
一瞬よそ見をした黒曜将軍はクレヤボンスがこっそり張っていた縄に足を引っ掛けて見事にすっ転んだ。
もうやだ、お家に帰りたい。
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