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26 うちの子、世界一
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「おじさん……その本をどうするの?」
「私が懇意にしている出版社に持って行ってたくさん作って貰おうと思うんだ。この本は良いものだ、きっとこの本が図書館や孤児院、教会、学校にあれば隅々までマイワード将軍と黒将軍の素晴らしさが広がるだろう」
「わ、わあ!凄い……おじさん凄い」
「おじさんではなくて、黒曜……いや、ヨウルさんと……いや、ヨウルお兄さん?ヨウルお義兄さんと呼んでくれて良いんだよ、ラセル君」
学校や教会にこの本を寄付すれば子供達は喜ぶだろうし、ラセルのように今まで字を読めも書けもしなかった子供達が字を覚えることができる。黒曜将軍は素晴らしい心の持ち主だ、と感動しかけたがやめた。なんだがその心に私利私欲の影が濃過ぎる……なんだお義兄さんって。意味が分からないが、あいつは危ない奴だ。
因みに黒曜将軍の本名はヨウル・アルトウィンと言う。真っ黒な黒曜の鎧を愛用してるから、黒曜将軍って呼ばれているんだ。歳は私より2.3下だった気がするんだが、お兄さんで良いのか?もやはおじさんでは??
「ヨウルさん? 」
「仲良くしような、ラセル」
「はい!」
わあああ!ラセルが懐柔されてしまったあ!駄目だ、ラセルそのおじ……お兄さん?は怖い人なんだぞ!戦場でその姿をみただけで敗走する奴もいたんだから……でも戦場だけだったな。戦場以外で会ったことがないというのもあるけれど、今の私はもう戦いに身を投じる事もない。ならば黒曜将軍と敵対することもないのか。
なら頭から怖い人だと決めつけるのは良くないのかもしれない……彼はああ見えて冗談好きの青年なのかもしれないものな。
「しかし今まで敵対していた黒曜将軍と仲良しこよしは少し抵抗がありますね。とりあえず……」
ミニィは姿勢を楽にしながらそんなことを言う。でもそれが私の元部下達の本音だろう。何度も黒曜将軍とぶつかって敗走させられたし、彼に斬られて残った傷を持つ者も多い。ヘイズなんていっぱいあるだろうしな。
「この本にサインください」
「む?喜んで」
マルターン戦記Ⅱを懐からさっと取り出すミニィにその中表紙にサインしてくれる黒曜将軍。
「ミニィさんへって入れて貰っていいですかね?」
「構わんぞ」
「やった!」
あー!良いな良いな!私もイアンさんへって書いてもらいたかったなあ!ちょっとうらやましそうにそれを眺めていたら、ラセルがぎゅっと抱きしめてくれた。
「ねえねえ、聞いた?イアン。僕の大好きなマイワード将軍の本がいっぱいできるんだって。素敵だねえ、もしかしたら僕も一冊貰えるかな?そしたらね。僕、枕の下に本を入れて寝るんだ。知ってる?枕の下に本を入れて寝ると本の内容が夢に出てくるんだよ。僕、夢の中でマイワード将軍に会えるかも」
「そうなんだ!凄いね。夢でマイワード将軍になんていうの?」
そっかあ、夢でも会いたいって言ってくれるんだ。ラセル、私も嬉しいよ。
「んとね。僕もマイワード将軍みたいに強くなりたいってお願いするんだ。皆を守れるくらい強くなりたい……」
そうか、ラセルは一方的に家族を奪われてばかりなんだ。両親の死因は分からないが狐のイアンは死にかけ……狐は亡くなってしまい代わりに私が入っている。ラセルも自分の無力さを嘆いているんだ、私と同じように。
「ラセルは強くなれるきゅん。保証するきゅん!」
「ほんと?皆を、イアンやミニィさんやヘイズさんも守れるくらいに?」
「なるきゅん!何なら世界で一番強くなれるきゅん!」
「わあ!ホント!?僕、強くなりたい!」
世界一はちょっと言い過ぎたかもしれないけれど、きっと真面目で心の優しいラセルならすぐ強くなる。だって周りに先生がいっぱいいるんだもんね。
「そうだな、この国で最強ならすぐかもしれん。イアン・ワイアード将軍がいないこの国は何の脅威もないからな」
黒曜将軍まで顎を撫でながらそんなことを言っている。
「ソルフラウでも私が最強らしいから。私を超えたら近隣で一番強くなれるぞ、ラセル君」
「わあ!そうなんだ。僕、頑張るね」
「ああ、頑張って強くなろうな」
あれ?黒曜将軍までラセルに稽古をつける気なの??黒曜将軍の直属の部下達までうんうんと頷きながら涙してるものまでいるんだけど。
「あの将軍が……人にものを教えようなど! 」
「良かったッスね!将軍!弟子ッスよ弟子! 」
「弟子、欲しがってましたもんね!将軍」
「ソルフラウでは怖がって子供達寄ってきませんからね!ラセル君はいい子だァ~」
……え、黒曜将軍ちょっと可哀想……。
「私が懇意にしている出版社に持って行ってたくさん作って貰おうと思うんだ。この本は良いものだ、きっとこの本が図書館や孤児院、教会、学校にあれば隅々までマイワード将軍と黒将軍の素晴らしさが広がるだろう」
「わ、わあ!凄い……おじさん凄い」
「おじさんではなくて、黒曜……いや、ヨウルさんと……いや、ヨウルお兄さん?ヨウルお義兄さんと呼んでくれて良いんだよ、ラセル君」
学校や教会にこの本を寄付すれば子供達は喜ぶだろうし、ラセルのように今まで字を読めも書けもしなかった子供達が字を覚えることができる。黒曜将軍は素晴らしい心の持ち主だ、と感動しかけたがやめた。なんだがその心に私利私欲の影が濃過ぎる……なんだお義兄さんって。意味が分からないが、あいつは危ない奴だ。
因みに黒曜将軍の本名はヨウル・アルトウィンと言う。真っ黒な黒曜の鎧を愛用してるから、黒曜将軍って呼ばれているんだ。歳は私より2.3下だった気がするんだが、お兄さんで良いのか?もやはおじさんでは??
「ヨウルさん? 」
「仲良くしような、ラセル」
「はい!」
わあああ!ラセルが懐柔されてしまったあ!駄目だ、ラセルそのおじ……お兄さん?は怖い人なんだぞ!戦場でその姿をみただけで敗走する奴もいたんだから……でも戦場だけだったな。戦場以外で会ったことがないというのもあるけれど、今の私はもう戦いに身を投じる事もない。ならば黒曜将軍と敵対することもないのか。
なら頭から怖い人だと決めつけるのは良くないのかもしれない……彼はああ見えて冗談好きの青年なのかもしれないものな。
「しかし今まで敵対していた黒曜将軍と仲良しこよしは少し抵抗がありますね。とりあえず……」
ミニィは姿勢を楽にしながらそんなことを言う。でもそれが私の元部下達の本音だろう。何度も黒曜将軍とぶつかって敗走させられたし、彼に斬られて残った傷を持つ者も多い。ヘイズなんていっぱいあるだろうしな。
「この本にサインください」
「む?喜んで」
マルターン戦記Ⅱを懐からさっと取り出すミニィにその中表紙にサインしてくれる黒曜将軍。
「ミニィさんへって入れて貰っていいですかね?」
「構わんぞ」
「やった!」
あー!良いな良いな!私もイアンさんへって書いてもらいたかったなあ!ちょっとうらやましそうにそれを眺めていたら、ラセルがぎゅっと抱きしめてくれた。
「ねえねえ、聞いた?イアン。僕の大好きなマイワード将軍の本がいっぱいできるんだって。素敵だねえ、もしかしたら僕も一冊貰えるかな?そしたらね。僕、枕の下に本を入れて寝るんだ。知ってる?枕の下に本を入れて寝ると本の内容が夢に出てくるんだよ。僕、夢の中でマイワード将軍に会えるかも」
「そうなんだ!凄いね。夢でマイワード将軍になんていうの?」
そっかあ、夢でも会いたいって言ってくれるんだ。ラセル、私も嬉しいよ。
「んとね。僕もマイワード将軍みたいに強くなりたいってお願いするんだ。皆を守れるくらい強くなりたい……」
そうか、ラセルは一方的に家族を奪われてばかりなんだ。両親の死因は分からないが狐のイアンは死にかけ……狐は亡くなってしまい代わりに私が入っている。ラセルも自分の無力さを嘆いているんだ、私と同じように。
「ラセルは強くなれるきゅん。保証するきゅん!」
「ほんと?皆を、イアンやミニィさんやヘイズさんも守れるくらいに?」
「なるきゅん!何なら世界で一番強くなれるきゅん!」
「わあ!ホント!?僕、強くなりたい!」
世界一はちょっと言い過ぎたかもしれないけれど、きっと真面目で心の優しいラセルならすぐ強くなる。だって周りに先生がいっぱいいるんだもんね。
「そうだな、この国で最強ならすぐかもしれん。イアン・ワイアード将軍がいないこの国は何の脅威もないからな」
黒曜将軍まで顎を撫でながらそんなことを言っている。
「ソルフラウでも私が最強らしいから。私を超えたら近隣で一番強くなれるぞ、ラセル君」
「わあ!そうなんだ。僕、頑張るね」
「ああ、頑張って強くなろうな」
あれ?黒曜将軍までラセルに稽古をつける気なの??黒曜将軍の直属の部下達までうんうんと頷きながら涙してるものまでいるんだけど。
「あの将軍が……人にものを教えようなど! 」
「良かったッスね!将軍!弟子ッスよ弟子! 」
「弟子、欲しがってましたもんね!将軍」
「ソルフラウでは怖がって子供達寄ってきませんからね!ラセル君はいい子だァ~」
……え、黒曜将軍ちょっと可哀想……。
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