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3 嫌がらせを受けているようなのです

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「この芋女のくせに!どうやってルイフト様に取りいったのよ!泥棒猫!」

「はぁ」

 毎日パルスェット様にも絡まれる。あれだけ派手に婚約破棄されたのに、パルスェット様は次の日から何事もなかったように学園にきちんと来ている。そして

「あーら!ごめんなさい?手が滑りましたわぁ?」

「……」

 ぱしゃっと私に水をかけてくる。これは嫌がらせなのね?

「ほほほ!こんなものも避けられないなんて!」

 避けると面倒だし、私が避けると後ろにいた御令嬢がびしょ濡れになるのでわざと避けなかったのですけれど。

「アナスタシア!」

 どこから聞きつけたのか分かりませんが、遠くからルイフト様が血相を変えて走ってくる。

「ルイフトさまぁ!こんな芋女など放っておいて私と行きましょう」

「アナスタシア!大丈夫か!かけられたのはただの水か?具合は?!」

「あ、大丈夫です」

 匂いも刺激もないからただの水でしょう。ルイフト様はきれいにパルスェット様を無視する。これだけの存在感を無視できるルイフト様も大概だと思います。

「なんて事だ、早く着替えを。風邪をひいてしまう」

「大丈夫ですよ。丈夫なので」

 鍛えてますから。りんごのたくさん入った箱は重いですからね。かなり小さな頃から手伝いをしていましたし。

「そうも行くまい!さあ、行こう」

 ルイフト様に手を引かれ、歩き出そうとする私達の前にパルスェット様は立ちはだかります。

「何よ!貧乏男爵の娘じゃない!」

 金切声が廊下に響き、生徒達がとばっちりを受けないように遠巻きに見ています。私もできれば見ている側に入りたいです……。

「ヘザー侯爵令嬢。君はなんて品性の欠如した者なんだ。アナスタシアだけならまだしも、公衆の面前でローレット家まで貶めるのか?」

 静かでそれでいて冷たくルイフト様はパルスェット様に言い放ちます。

「だから……」

 続きの言葉を口にしようとするのを止めました。これ以上、事を大きくするのはいけません。私は無言でルイフト様の袖を引っ張ります。気づいてこちらを向いたルイフト様に首を横に振り、静止を呼びかけました。
 何か言いたげなルイフト様でしたが、分かって下さったようで、小さく笑みを浮かべて下さいました。

「そうだな、行こうアナスタシア。着替えなくては。誰か、少し遅れると教授に伝えておいてくれないか?」

 生徒の一人が分かりましたと答えて、私はルイフト様に付き添われながら、この場を離れました。

「何よ何よ!冴えない芋女のくせに!」

 何とか騒ぎを広げず穏便に終わらせたと思ったのに、パルスェット様の怒りは増したようでした。あの方は何をやっても、言っても怒るのでどうしようもないのですけれども。それにしても侯爵令嬢があのような振る舞いで良い物なのでしょうか……?


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