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21 あれ?そう言う事?
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ちょっと複雑な気持ちのまま、アンセルと手を繋いで我が家へ向かう。何だろう手を繋いで、なんて小さな頃以来だ。
「ユール、痛くない?」
アンセルは気を遣ってゆっくり歩いている。うーん、基本的に気遣い出来る子なんだけどなぁ。
「……それなりに痛いよ。いつもあんなに足開かないし……まだ、なんか入ってる気がするし……」
思わず素直に答えてしまった。本当は寝ていたいけれど、どうやらアンセルとの事は皆に知れ渡ってしまっているみたいだ。父上もご承知の上だろうが、報告しない訳にはいかない。
「ごめん……って言いたくないけどごめん……抱っこしようか?」
「抱っこはしなくていいよ……後、やっぱり謝って」
「ごめん」
そして無言になってしまった。だってすぐに許して良い物じゃないよね?なんせ強姦みたいなもんだろう?私はして良いよなんて言ってないし。断れたかどうかは分からないけれど、一応非合意だった。
でも……困った事にそこまで嫌じゃなかった。何せアンセルは美形だ。そのキラキラした美しい人が私の名前を呼びながら
「ユール!ユール!好き、大好きっ」
って必死な顔して求めて来るなんて、こうむず痒いような、優越感があるというような……悪い気がしなかったんだ。しかも凄い痛い訳じゃないし、最初は違和感は凄かったけれど、ぶっちゃけ……気持ち良かった。
初めてでそんな訳ないって思ったけれど、そこら辺は天才2人の稀有な能力の無駄遣いのせいで、きっと素晴らしい潤滑油でも作ったんだろうな。
きっとダルタン辺りに聞けば
「あれ、すごく良いでしょ!初めてでもスムースインだし、一番最初のは殺菌効果とかあるんだよ!痛みも感じ難くするけど、気持ち良くなる成分もー……」
きっと熱を入れて長々と語ってくれるに違いない。全く困ったものだよ。
「でもっ私はもうこの手を離さないから」
ぎゅっとアンセルが強く手を握って来る。同じくらいの大きさの掌はいつもより暖かくてしめっている気がする。何だろう、緊張でもしているのかな……?
「アンセル……」
「ステファン子爵に受け入れて貰えなくても、私はユールと離れて暮らしたくなんかない……」
そうか、父上が許さない可能性もあるのか。私は何ともいえなかった。父上にしてみれば息子を嫁に出すつもりなんて一欠片もなかっただろうし。
「ユール、お願い……私を嫌わないで」
アンセルのお願い。何度も何度も聞いて来たアンセルのお願い。最初はその願いを叶える事に躍起になったけれど、最近はちょっと違う事に気がついた。
「ユール、お願い!」「良いよ、アンセル」
私が「良いよ」と言った時、ぱあっと明るくなってとても嬉しそうにするアンセルが見たくてお願いを聞いている気がするんだ。
「わーい!ユール、大好き!」
思えばその度に私に言ってきた「大好き」には沢山のアンセルの気持ちが詰まっていたんだろうな。そして「大好き」って言われる度に私はなんて答えた?
「ふふ、私もだよ。アンセル」
……そうか、私もアンセルの事が大好きだったか。全部冗談だと思っていたけれど、きっと冗談の部分は少なくて、本当だったんだ。
アンセルは可愛いお嬢様と結婚して幸せになるのが良いなって思っていたけれど……。
「ねえ、アンセル。聞いていい?」
手を握ったまま、アンセルに尋ねる。
「何でも」
真剣に答えてくれようとする姿も好きだなって思うから、私はやっぱりアンセルの事が好きなんだ。
「アンセル、今幸せ?」
痛いくらいぎゅっと握った手に力が入った。
「うん、とっても」
そっか、とっても幸せか。良かった、ゲームの絶望したアンセルはどこにもいなくなったんだ。
「そっか……良かった」
「でもユールに嫌いって言われたら絶望しちゃう」
それは困るな。私はアンセルを幸せにしないといけないんだから。
「分かったよ、アンセルを幸せな子にする義務が私にはあるからね」
「義務、義務なの?ユールは義務で私の側にいるの……?!」
手を引かれて、アンセルと正面から向き合った。ああ、アンセルの目が昏い。まるでゲームの時の絶望した表情に嵌っていた光のない水色の作り物みたいな昏い目をしている。
うん、これは駄目な奴だ。これは「幸せなアンセル」じゃないね。
そうか、ここでアンセルを絶望させるのも、幸せにするのも私次第か。はは、やっぱり「俺」が創った世界。
「そんな事ないよ。良く考えたんだけど、私もやっぱりアンセルの事が好きみたい……後、以外と気持ち良くてびっくりした」
可愛くて、綺麗な私のアンセル。私の大好きなアンセル。同じくらいの背の高さ。背伸びしなくても簡単にキスできる。
チュッとリップ音を響かせて女の子より綺麗に色付いている唇にキスをしたら、凄い勢いで抱き上げられた。
「わわっ!」
「は、早く!早くステファン子爵にご挨拶に行こう!早く認めて貰わなくちゃ、私我慢出来ない!!」
「何の我慢?!よく分からないけれどなんか我慢して欲しい気がするよ!」
勿論、私の父上も
「ユールの事を幸せにしてやって下さい」
と逆に頭を下げて下さったので、アンセルは私を抱きかかえたまま、その場でくるくる回っていた。こんなに喜んでくれるなんて、やっぱり私はアンセルの事が好きみたいだ!
「ユール、痛くない?」
アンセルは気を遣ってゆっくり歩いている。うーん、基本的に気遣い出来る子なんだけどなぁ。
「……それなりに痛いよ。いつもあんなに足開かないし……まだ、なんか入ってる気がするし……」
思わず素直に答えてしまった。本当は寝ていたいけれど、どうやらアンセルとの事は皆に知れ渡ってしまっているみたいだ。父上もご承知の上だろうが、報告しない訳にはいかない。
「ごめん……って言いたくないけどごめん……抱っこしようか?」
「抱っこはしなくていいよ……後、やっぱり謝って」
「ごめん」
そして無言になってしまった。だってすぐに許して良い物じゃないよね?なんせ強姦みたいなもんだろう?私はして良いよなんて言ってないし。断れたかどうかは分からないけれど、一応非合意だった。
でも……困った事にそこまで嫌じゃなかった。何せアンセルは美形だ。そのキラキラした美しい人が私の名前を呼びながら
「ユール!ユール!好き、大好きっ」
って必死な顔して求めて来るなんて、こうむず痒いような、優越感があるというような……悪い気がしなかったんだ。しかも凄い痛い訳じゃないし、最初は違和感は凄かったけれど、ぶっちゃけ……気持ち良かった。
初めてでそんな訳ないって思ったけれど、そこら辺は天才2人の稀有な能力の無駄遣いのせいで、きっと素晴らしい潤滑油でも作ったんだろうな。
きっとダルタン辺りに聞けば
「あれ、すごく良いでしょ!初めてでもスムースインだし、一番最初のは殺菌効果とかあるんだよ!痛みも感じ難くするけど、気持ち良くなる成分もー……」
きっと熱を入れて長々と語ってくれるに違いない。全く困ったものだよ。
「でもっ私はもうこの手を離さないから」
ぎゅっとアンセルが強く手を握って来る。同じくらいの大きさの掌はいつもより暖かくてしめっている気がする。何だろう、緊張でもしているのかな……?
「アンセル……」
「ステファン子爵に受け入れて貰えなくても、私はユールと離れて暮らしたくなんかない……」
そうか、父上が許さない可能性もあるのか。私は何ともいえなかった。父上にしてみれば息子を嫁に出すつもりなんて一欠片もなかっただろうし。
「ユール、お願い……私を嫌わないで」
アンセルのお願い。何度も何度も聞いて来たアンセルのお願い。最初はその願いを叶える事に躍起になったけれど、最近はちょっと違う事に気がついた。
「ユール、お願い!」「良いよ、アンセル」
私が「良いよ」と言った時、ぱあっと明るくなってとても嬉しそうにするアンセルが見たくてお願いを聞いている気がするんだ。
「わーい!ユール、大好き!」
思えばその度に私に言ってきた「大好き」には沢山のアンセルの気持ちが詰まっていたんだろうな。そして「大好き」って言われる度に私はなんて答えた?
「ふふ、私もだよ。アンセル」
……そうか、私もアンセルの事が大好きだったか。全部冗談だと思っていたけれど、きっと冗談の部分は少なくて、本当だったんだ。
アンセルは可愛いお嬢様と結婚して幸せになるのが良いなって思っていたけれど……。
「ねえ、アンセル。聞いていい?」
手を握ったまま、アンセルに尋ねる。
「何でも」
真剣に答えてくれようとする姿も好きだなって思うから、私はやっぱりアンセルの事が好きなんだ。
「アンセル、今幸せ?」
痛いくらいぎゅっと握った手に力が入った。
「うん、とっても」
そっか、とっても幸せか。良かった、ゲームの絶望したアンセルはどこにもいなくなったんだ。
「そっか……良かった」
「でもユールに嫌いって言われたら絶望しちゃう」
それは困るな。私はアンセルを幸せにしないといけないんだから。
「分かったよ、アンセルを幸せな子にする義務が私にはあるからね」
「義務、義務なの?ユールは義務で私の側にいるの……?!」
手を引かれて、アンセルと正面から向き合った。ああ、アンセルの目が昏い。まるでゲームの時の絶望した表情に嵌っていた光のない水色の作り物みたいな昏い目をしている。
うん、これは駄目な奴だ。これは「幸せなアンセル」じゃないね。
そうか、ここでアンセルを絶望させるのも、幸せにするのも私次第か。はは、やっぱり「俺」が創った世界。
「そんな事ないよ。良く考えたんだけど、私もやっぱりアンセルの事が好きみたい……後、以外と気持ち良くてびっくりした」
可愛くて、綺麗な私のアンセル。私の大好きなアンセル。同じくらいの背の高さ。背伸びしなくても簡単にキスできる。
チュッとリップ音を響かせて女の子より綺麗に色付いている唇にキスをしたら、凄い勢いで抱き上げられた。
「わわっ!」
「は、早く!早くステファン子爵にご挨拶に行こう!早く認めて貰わなくちゃ、私我慢出来ない!!」
「何の我慢?!よく分からないけれどなんか我慢して欲しい気がするよ!」
勿論、私の父上も
「ユールの事を幸せにしてやって下さい」
と逆に頭を下げて下さったので、アンセルは私を抱きかかえたまま、その場でくるくる回っていた。こんなに喜んでくれるなんて、やっぱり私はアンセルの事が好きみたいだ!
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