上 下
19 / 26

19 ねえ、幸せ?*

しおりを挟む
「あ……あああ……」

「ユール、ユールっああっ……凄い、凄いようっ……」

 準備とか必要なはずなのに、最初からこんなに入るはずないのに。きっとダルタンが作った薬か何かを使ったのかとは思うけれど、お腹の奥いっぱいにアンセルのモノが深く突き刺さっている。

「アン、セル……」

「ユールの中、凄い……気持ちいい……ああ、嬉しい、嬉しい……ユールと一つになってるなんて……好き、大好き……ユール、大好き……ユール気持ちいい?」

「う……」

 気持ちいいかと聞かれたら、気持ち悪い方が強い。塗りたくられた薬の効果か何かで痛みはないけれど、出すべき場所にかなりの太さのモノを入れられたら気持ちいはずがない……。それでもだ。

「ユールの中、暖かい……ああ、凄いよう……すぐ出ちゃいそう……ユール、ユール……ああっ好き、好き……」

 自分の上でそれはそれは幸せそうに恍惚の表情を浮かべるアンセルを見てしまうと、アンセルが求めるならそれもいい事なんじゃないかと勘違いしてしまいそうになる。

「ユール……一回出すね……ああ、凄いよ。ユール!ユールっ!」

「アンセ……ひうっ!」

 ぐいっと一度強く押し付けただけだったのに、アンセルはどろりとした物を吐き出した。なんだこれ?!なんだこれ?!

「あ、あ、ああ……っ」

「ユール、ユールッ」

 アンセルの射精は暫く止まらず、引き抜いた時にごぷり、と変な音を立てて溢れ出てどうしたらいいか分からなくなった。

「ねえ、いいよね?」

 アンセルが持っている薄い青に光る液体が入った小瓶……見た事がある。ダルタンがやっと完成したんだと一度だけ見せてくれた瓶……男性妊娠薬だ……!

「や、やら……だめ……」

 そんなのを飲んでしまったら赤ちゃんが出来てしまう……駄目だそれはいくらアンセルのお願いでも駄目だ。

「ユール、お願い……」

「あ……」

 よくわからない罪悪感が湧き上がる。アンセルががっかりした、アンセルを幸せにしてやらないといけないのに、きっとあの顔のアンセルは幸せじゃない……。アンセルを幸せにするにはどうしたらいい?

「じゃあ、これは私が飲むね。ユール、私の中に頂戴ね?」

「だめっ……アンセルは、こ、公爵様の跡を継ぐんだ!」

 次期公爵が子供を産むなんて、きっと弱点になってしまう、醜聞に巻き込まれてしまう。それは駄目だ、絶対に!

「じゃあ、ユール……お願い」

「う……」

 それでも返事が出来ないでいると、アンセルはその小瓶の蓋を開けて中身をぐいっと煽ってしまった。

「アンセルッ!?」

 飲み込んでいない、口の中に含んでいるだけ……ゆっくりアンセルの顔が近づいてくる……ああ、そういう事か口移して私の飲んで欲しいという事か……迷う時間は一瞬しかなかったが、目を閉じて受け入れた。ごくりと飲み下すのをみて、アンセルは私の知る中で一番可愛らしく美しくて、幸せそうな笑顔を浮かべた。

「ユール、大好き。私の可愛いお嫁さん。ずーっとずーっと大事にするからね」

 ぎゅっと抱きしめてくれるアンセル。そのアンセルの背中に腕を回した。

「一つ聞いてもいい?アンセル」

「なあに?私の可愛いユール」

「アンセルは、今、幸せ?」

「勿論!今まで生きてきた中で一番幸せだよ!!」

 そう、そうか……そうなら

「良かった……私はアンセルを幸せに出来ている?」

「うん!私にこんな幸せをくれるのはユール以外出来ない事だもの!」

 良かった……それなら、良かった。ゲームと違って意外と細くなくてしっかりしたアンセルの体にぎゅっと抱き着いた。



 
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

第二王子の僕は総受けってやつらしい

もずく
BL
ファンタジーな世界で第二王子が総受けな話。 ボーイズラブ BL 趣味詰め込みました。 苦手な方はブラウザバックでお願いします。

釣った魚、逃した魚

円玉
BL
瘴気や魔獣の発生に対応するため定期的に行われる召喚の儀で、浄化と治癒の力を持つ神子として召喚された三倉貴史。 王の寵愛を受け後宮に迎え入れられたかに見えたが、後宮入りした後は「釣った魚」状態。 王には放置され、妃達には嫌がらせを受け、使用人達にも蔑ろにされる中、何とか穏便に後宮を去ろうとするが放置していながら縛り付けようとする王。 護衛騎士マクミランと共に逃亡計画を練る。 騎士×神子  攻目線 一見、神子が腹黒そうにみえるかもだけど、実際には全く悪くないです。 どうしても文字数が多くなってしまう癖が有るので『一話2500文字以下!』を目標にした練習作として書いてきたもの。 ムーンライト様でもアップしています。

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

タチですが異世界ではじめて奪われました

BL
「異世界ではじめて奪われました」の続編となります! 読まなくてもわかるようにはなっていますが気になった方は前作も読んで頂けると嬉しいです! 俺は桐生樹。21歳。平凡な大学3年生。 2年前に兄が死んでから少し荒れた生活を送っている。 丁度2年前の同じ場所で黙祷を捧げていたとき、俺の世界は一変した。 「異世界ではじめて奪われました」の主人公の弟が主役です! もちろんハルトのその後なんかも出てきます! ちょっと捻くれた性格の弟が溺愛される王道ストーリー。

なぜか知りませんが婚約者様はどうやら俺にデレデレのようです

ぷりん
BL
 俺、シノ・アイゼンベルクは貧乏貴族の一人息子である。そんな彼の所に一通の手紙が届く。そこには、『我、ノアール・スベリアはシノ・アイゼンベルクに婚約を申し込む。もし拒否するのであればスベリア家を敵に回すと思え』と書かれたものが届く。婚約を拒否する訳にはいかず、ノアールの婚約者となったが、、、  聞いていた噂と彼は違いすぎる?!噂ではノアール・スベリアは氷のように冷たい雰囲気をもち、誰にも興味を示さず笑顔を見せない男。しかし、めちゃくちゃイケメンで夜会では貴族のご令嬢をメロメロにしているという噂である。しかし、ノアールはシノにデレデレのようで、、?!  デレデレイケメン宰相×自己肯定感皆無不憫所長 作者はメンタル弱々人間です<(_ _)> 面白いと思われた方はお気に入り登録して頂けると大変作者の励みになります。感想貰えると泣いて喜びます。また、番外編で何か書いて欲しいストーリーなどあれば感想によろしくお願いします!

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

処理中です...