【完結】不憫令息を幸せにする。責任を取ったつもりがこういうのはちょっと違うと思います!

鏑木 うりこ

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11 溶ける系人間だっているんだよ!

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「えーと、いた。あいつだ、ここで待っててアンセル」

「私も行くよ」

 私はそれを必死に止める。

「ダメダメ!アンセルみたいなキラキラが不用意に近づくとダルタンみたいな陰キャは溶けちゃう!」

「ユール、人間は溶けないよ……?」

 いやいや!溶ける!その100万ドルの笑顔に当たったらダルタンなんて灰だね、灰!
 私はアンセルを待たせて教室の隅っこで背中を丸めて完全な陰キャモードのダルタン・トレバーに声をかけた。

「ねえ、ちょっと良いかな、ダルタン・トレバー子爵令息」

「うっ!ユ、ユール・ステファン……ぼ、僕に何か用……?」

 真っ黒な髪に分厚い眼鏡の上に前髪まで伸ばしてパーフェクト陰キャなダルタン。こいつはオタクなんだ。

「トレバー領って薬草で有名だろ?それでさ薬のことで相談したい事が……」

「なんの薬?!」

 但し、薬剤オタク。薬に飛びつくんだよね。

「アンセルの父親がずっとベッドなのは有名な話だろ?何とかしたくて」

「あー……背中を打って歩けない上にずっと歩いてないから足が萎えた系?」

「流石!」

「へへ……」

 承認欲求に飢えたダルタンはちょっと褒めるとまるで子犬が尻尾を振るがごとく。ゲームではダルタンを褒めるのはお薬大好きランディ先輩なんだ。
 ダルタンは借金を背負わされ脅されとんでもない薬を先輩に作らされて行く。

 その中でも傑作なのが妊娠薬だ。偶然なのかダルタンが天才なのかは分からない。ゲームではランディの卒業パーティーで無理矢理飲まされ種付けされてしまう。

「アンセル!今飲んだ薬はねぇ、男の子でも赤ちゃんが出来ちゃう薬だよぉ?さあ、いっぱい犯して上げるから、ボクの子供を産んでねぇ♡」

「い、嫌ぁ、嫌ぁ!!助けて、助けてユール!!嫌ぁーーーー!」

 そしてアンセルは見事に妊娠し、大きく膨れたお腹ではどうしようもなく学園は中退。領地に篭るつもりが王太子に薬の事と、子供が産まれた事を知られてしまう。

「アンセル、私の子も産んでくれるな?」

「嫌!嫌です!!」

「ならばお前とランディの子の命は保証出来ぬが?」

「うう、うう……っ」

 まだ赤ん坊のアンセルの息子ルディを取られ、言う事を聞くしかないアンセル。そこから離宮に閉じ込められ、正気を失って行く。
 アンセルは何人ものオレルアンの子供を産んだが、その子達は一瞬しか会わせて貰えず取り上げられた。
 そうして邪魔になったアンセルは隣国の貴族に売られ……またもや鎖で繋がれる生活に……。

 そんな事はさせないぞ!

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