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3 もうそれなのか!アンセル

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「お父様とお母様が領地に視察に行くんだ。でも、私はもう7歳だし、留守番くらい出来る……けど、寂しくなったらユールが泊まりに来てくれる?」

「もうなのか!アンセル!」

「えっ?!どうしたのユール??」

 もう最初の不幸だ。アンセルは不幸のオンパレードだから詰め込むにはスケジュール過密なんだ。
 間違いない、アンセルは7歳の時に両親を馬車の事故で失う。更に母親のお腹には双子の弟がいていっぺんに4人の家族を失うのだ。

 シトシトと冷たい雨に打たれて、涙が枯れ果てた7歳のアンセルが墓の前で立ち尽くすスチル。

「凄く暗くお願いします」

 俺はそこそこ絵は描けたが、BLのキツいのは無理だったからビジュアルは外注した。そのクリエイターにそんな発注をしたのを思い出した。

「分かりました」

 短いメールのやり取りだったけれど、クリエイター予想より哀しい場面の下絵をくれたので1発OKした。そして出来上がりも最高でこれからのアンセルの不幸な未来が滲み出ていて最高だった。

「駄目だ!アンセル!中止にして貰うんだ!それも駄目ならせめて日にちをずらして貰って!!」

「な、何を言ってるの??ユール」

 このまま出発したら、隘路に仕掛けられた罠が作動してアンセルの家族は殺されてしまう。

「良いから!俺がフェルム公爵に言う!!一緒に来て!」

「ユール?ユール??」

 僕はアンセルの腕を引いて失礼だけど、フェルム公爵に突撃した。後で怒られるかもしれないけど、死ぬよりマシだ!

「公爵様!視察に行かないで!」

「ユール?礼儀は0点だけど理由があるのかな?」

 しまった!そこまで考えてなかった!アンセルが寂しがるなんて人のせいにしたくないし……あ!そうだ、この時点で公爵は知らないだ。

「マルグリット様のお腹に赤ちゃんがいませんか!?」

「へ?」「ふぇ?」

 アンセルも公爵も変な声を上げる。そりゃそうだろ。何せアンセルのお母様、マルグリット様が妊娠していたのは亡くなってから気がついたんだもんな。

「お腹に赤ちゃんいる女性の旅行は危険が伴うと聞きました!」

 押し通せ、俺!

「ど、どうしてそう思ったんだい?ユール」

「去年のお母様みたいになってた気がしますから!」

 僕のお母様のリースさんは去年妹を産んで居る。とても可愛い。だから押し通す!

「しかし、マルグリットは何も言っていないぞ……?」

「お医者様に聞いてみて!」

 うーん、と公爵様は唸ったが

「もしユールの話が本当なら……そうだな、医者の診察などすぐ終わるし。何かあれば私は悔やんでも悔やみ切れないものな」

 僕はほっと胸を撫で下ろす。そうしてマルグリット様の妊娠は確認されて

「私も全く気が付きませんでしたわ」

 と、頭を撫でて貰い、公爵様からは

「ユール!お前は我が家の救世主だな!」

 と高い高いされてから、ずっと狙ってた初級魔導書を買って貰い

「ユール!私、お兄様になるんだよ!」

 アンセルの輝くばかりの笑顔を貰った。

「ユール!よく分かったね!」

「えへへ……」

 ステファン家のお父様達にも褒められて、頑張って良かったと思う。いい仕事をした!

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