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1 「俺」は生まれ変わる
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「あ……」
僕は思い出してしまった。僕の、というか「俺」の前世という奴を。
俺は売れないゲーム製作者だった。どちらかと言うとシナリオライターだ。自信を持って作った王道ファンタジー物は誰にも見向きもされなかった。
何本作ってもダメで、泣く泣く美少女モノに転向した。それでも誰にも評価されなかった。これも行き詰まってエロに手を出し15禁を経て18禁を作り始めてやっと評価をして貰えるようになったが、生活と言う面では雀の涙だった。
そして俺は転機を迎える。所謂BL18禁に行ったのだ。そこでエグ過ぎる猟奇的とも言えるキッツイのを出した。
「禁忌の天使」
主人公のアンセルがそれはそれは酷い目に遭う未成年お断りのエグい同人ゲーム。あんまりに酷い内容なので企業に持ち込みなど考えた事もない。
それが大当たりした。
株式会社ユールと言う名前で出した「禁天」はマニアでコアな性癖のお嬢様達に大変評価され、そのお陰で俺は生活できるようになった。俺の生活は禁天のアンセルの涙の上に成り立っていたんだ。
しかし長年の不摂生、不健康な生活が祟って40代半ばで一人で死んだ。会社で夜中の発作だった。次の日に出社して来たバイト君が発見して大騒ぎになっただろう。
短かったけれども好きな事をやって認められ、生活も出来た。良い人生だったと言っていいと思う。恋人には恵まれなかったけれどね。
その事を思い出したのは7歳の僕、ユール・ステファン子爵令息。そして目の前で転んだ僕を心配そうに見下ろす同じ年のめちゃくちゃ可愛い男の子。
「ご、ごめんね!ユール、大丈夫……?」
キラキラした繊細な金髪にどうやったらそんなに澄んだ色になるのか分からない空色の瞳の美少年が手を伸ばす。僕はその細くて白い手を取る。
「うん、大丈夫だよ……アンセル」
「良かったぁ!」
僕を引っ張って立たせてくれるこの世の天使。まだ禁忌に染まっていない完璧な愛し子、アンセル・フェルム公爵令息が微笑んでいる。
間違いない。この子はあのアンセルだ。「俺」が知る限りの最低な行為を全て施され堕とされた天使アンセルがまだ幸せだった頃、アンセルの人生の絶頂期。
7歳のアンセルが立っていた。
「俺」は、僕は一体どうしたら良いんだろうか……。
僕は思い出してしまった。僕の、というか「俺」の前世という奴を。
俺は売れないゲーム製作者だった。どちらかと言うとシナリオライターだ。自信を持って作った王道ファンタジー物は誰にも見向きもされなかった。
何本作ってもダメで、泣く泣く美少女モノに転向した。それでも誰にも評価されなかった。これも行き詰まってエロに手を出し15禁を経て18禁を作り始めてやっと評価をして貰えるようになったが、生活と言う面では雀の涙だった。
そして俺は転機を迎える。所謂BL18禁に行ったのだ。そこでエグ過ぎる猟奇的とも言えるキッツイのを出した。
「禁忌の天使」
主人公のアンセルがそれはそれは酷い目に遭う未成年お断りのエグい同人ゲーム。あんまりに酷い内容なので企業に持ち込みなど考えた事もない。
それが大当たりした。
株式会社ユールと言う名前で出した「禁天」はマニアでコアな性癖のお嬢様達に大変評価され、そのお陰で俺は生活できるようになった。俺の生活は禁天のアンセルの涙の上に成り立っていたんだ。
しかし長年の不摂生、不健康な生活が祟って40代半ばで一人で死んだ。会社で夜中の発作だった。次の日に出社して来たバイト君が発見して大騒ぎになっただろう。
短かったけれども好きな事をやって認められ、生活も出来た。良い人生だったと言っていいと思う。恋人には恵まれなかったけれどね。
その事を思い出したのは7歳の僕、ユール・ステファン子爵令息。そして目の前で転んだ僕を心配そうに見下ろす同じ年のめちゃくちゃ可愛い男の子。
「ご、ごめんね!ユール、大丈夫……?」
キラキラした繊細な金髪にどうやったらそんなに澄んだ色になるのか分からない空色の瞳の美少年が手を伸ばす。僕はその細くて白い手を取る。
「うん、大丈夫だよ……アンセル」
「良かったぁ!」
僕を引っ張って立たせてくれるこの世の天使。まだ禁忌に染まっていない完璧な愛し子、アンセル・フェルム公爵令息が微笑んでいる。
間違いない。この子はあのアンセルだ。「俺」が知る限りの最低な行為を全て施され堕とされた天使アンセルがまだ幸せだった頃、アンセルの人生の絶頂期。
7歳のアンセルが立っていた。
「俺」は、僕は一体どうしたら良いんだろうか……。
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