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29 誤解できないくらいにしっかりはっきり
しおりを挟む「レンにはしっかり言葉で伝えなければ伝わらないことかと思いました。私はあなたが好きです、とても大好きです、愛しています」
「……うひゃい……」
顔から火が出そうだ。どこかに逃げ出したくても殿下の膝の上に座らされてがっしり捕まっているから、身動きできない。唯一できるのは両手でまっかっかな顔を隠すくらいだ。
あの後、思考が停止して呆然と立ち尽くす俺をサッと抱え上げて室内、しかもベッドルームまで移動した殿下はベッドの端に腰掛け、膝の上に俺を乗せて楽しそうに話し始めたんだ。隙なんてなかった。
「レン、あなたはとても可愛らしいですよ、一目見た時から気に入っていました。ちょっと暴走する時もありますが、今ではそれもあなたらしくてとても良いと思っています」
「……ひゃい……」
「それにあなたの作るご飯はとても美味しい。前にずっとあなたのご飯が食べたいと言ったのは覚えていますか?」
「……ひゃい……」
確かに言われた。ご飯食べたいって朝ごはんも食べたいって。だから俺は一生懸命ご飯作ったよ、毎日。
「だから一生そばにいてご飯を作ってくれるものだと思っていました。しかも朝ごはんも作ってくれると約束しました。朝ごはんを作るなら、毎朝同じ家で就寝するでしょう? ならば結婚しているのが一般的かと思ったのです」
「……ひゃぃい……」
そういえばそうか。通いのお手伝いさんとかも毎日毎朝やってくるのは無理か、おやすみ欲しいもんね……ってことは俺、結構前からそんな感じのこといわれてたの?
「それにレンも私のことを好きだといってくれましたよね? あれは嘘?」
「う、嘘じゃないです!」
いつからか分からないけど、俺は殿下のことが好きだ……好きだと思う。きっかけは全然分かんないけど、なんか好きだなーって気持ちがどこからかいっぱいやって来て気がついたら好きだった……と、思う。
いや、違う……俺は殿下が俺のことを叱ってくれるから好きなのかもしれない。俺とリンじゃ似た者同士で楽しくなると周りが見えなくなってやり過ぎてしまう。あの聖剣をぶっ叩いた時も、本当は少しやばいんじゃないかなって思ってた。でもやってみたい気持ちが大き過ぎてやっちゃった。もし、あの場に殿下がいたら絶対止めてくれたと思うし、俺だって止まってたと思う……。
「良かった!」
指の隙間から、凄く嬉しそうな輝く笑顔が見える。この人が喜ぶと俺も凄く嬉しいんだ……。だからこの人を喜ばせたいって思っちゃうんだ。
「ねえ、レン」
「……はい……?」
いつの間にか殿下の右手が伸びて来て、顔を覆っていた俺の手を取って顔の前から避けさせていた。
青くて綺麗な目な少し翳っている、どうしたんだろう? 何か悲しいことでもあったのかな……。
「あなたを愛しているから、私も魔王と同じことがしたい……レン、あなたを抱きたい」
「……?!」
「嫌……?」
言われたことが衝撃過ぎてつい言葉が出てこなかったけれど、それよりも悲しげに暗くなっていく青い目がとても寂しくて、悲しかった。俺、おれはこの人にこんな目をさせたくない……俺、この人に笑っていてもらいたい、嬉しいって喜んでいて欲しい。
「い……嫌、じゃ……ない、です」
「レン!」
「わっ!」
まさかそのままベッドに押し倒されるとは思ってもみなかった。
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