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8 明けて

1 ご挨拶周り

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「除夜の鐘怖い除夜の鐘怖い」

 幾人か飛び込んできて、こたつの中でブルブル震えていらっしゃる方もいらっしゃいましたが、滞りなく牛様はお帰りになり

「にゃーーーん!にゃおにゅ~る頂戴~~~!」

 虎(?)様が飛び出してきました。今年の虎様はとてもコンパクトになるのがお得な方のようで、黄色に黒の縞模様がある猫の姿がお気に入りようでした。

「すみません……用意していなかったので、後で買いに行ってきます」

「やったー!」

 どうやら暫くは風鈴食堂の私が私用で使っている部屋に住まわれる事に決めたようですね。

「よろしくね、小春」

「はい、虎様」

「にゃん!」

 少しチキンの仕入れを増やした方が良さそうです。元旦はそのままお節を頂き、2日からご近所へ挨拶周りへ

「ボクもいくにゃん!」

「ではお願いします」

 虎様を懐に入れて行くと、虎様は大人気で

「まあまあ!年神様、よろしくお願いしますねぇ~」

「にゃーん!」

 近所の方々に撫でられてご満悦でした。これならあちこち散歩に出歩いてもこの方が風鈴食堂に滞在している方だと皆さまに覚えていただけたと思います。


「にゃーん!にゃおにゅ~るいっぱーい!」

「おやおや……」

 いつも来てくださる皆様が風鈴食堂へご挨拶へ来てくださっていました。

「好物だとお聞きしたので!」

「ありがとうございます、ノブ先生」

 1番にやって来たのは代議士のノブ先生と秘書の川北さんでした。ノブ先生はどこから聞きつけたのか両手に提げた買い物袋から、沢山のにゃおにゅ~るを出します。

「いつでもお持ちしますので!今年も一つよろしくお願いしまします!」

「にゃん!」

 ご機嫌な虎様にビシッと頭を下げるノブ先生と、

「あ、あのう……ググってみたら、マグロがお好きとか書いてあったので持って来ましたぁ……昨年のアドバイスのお陰で友人が増えて、とても良い年になりました……」

 狸の姿に戻っているたぬきち先生の前にマグロの刺身をそっと押し出している。
 たぬきち先生は片目だけ開けて

「私は干し柿も好きだが?」

「ひえっ!今すぐ買ってきますっ!」

 おやおや、少し意地悪ですね。

「今度来るときにもってこい」

「はいーーっ!沢山持って来させてくださいぃーーー!」

 どうもこの川北さんは恵太郎さんと似たような人種で、目の前の不思議な物を受け入れるタイプのようです。

「……川北君はたぬきち先生に気に入られたんだね?」

「ええ、相当ですよ。また来いなんて中々言わない方ですからね」

 そっとノブ先生が私に耳打ちをしてきました。羨ましい!と言う呟きも聞こえましたが

「川北君が私の事務所に居てくれるうちは安泰だな!」

 わはは!と笑って帰っていかれました。その後も沢山の方が訪問されて、虎様に挨拶をしたり、たぬきち先生とお話をしたり。
 何かと力が高まっている期間ですので、普段は見えぬ物が見えたり、聞こえたりするようでした。

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