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4 迷子の狐

2 思いがけない情報を

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「む」

「お」

 ぽん、ぽん!といい音がして、ぽんきち先生とこんたさんが棚の上に乗ってしまいます。

「すいませーん、やってますかぁ?」

「あ、はーい。いらっしゃいませ」

 綾樫食堂は時に普通の食堂です。暖簾が出ているときは普通のお客様もお迎えしております。

「学生二人なんすけど」

「お好きなお席にどうぞ」

 年の頃は高校生くらいでしょうか?この近くではあまり見かけない顔ですが、何かのついでに少し足を伸ばした、そんな感じでしょうか。食べ盛りと言った顔をしていますね。

「お?蕎麦じゃん。たぬき蕎麦に……きつね蕎麦ァ?珍しいな!」

 あ!さっきまでぽんきち先生とこんたさんが召し上がっていたおそばを下げ忘れていました。二人とも美味しく召し上がったのですが、何せお二人が食べたのは料理の「美味しい所」人間の学生さん達がその料理をみても誰も手を付けていないまだ新品の料理にしか見えませんよね……。

「お兄さん、これ誰かのなの?」

「え?ええ……どうしても急がなければならないご用事が出来たとかで帰られてしまって……」

「手もつけずに?もったいねえ!」

 ふふ、確かに勿体ない気はしますね。たぬきち先生のお残しなら不思議な力が溢れていそうですけれど、こんたさんのは……まあ仕方がないですよね。

「お兄さん!これ、食っちゃっていい!?」

「えっ……構いませんけれど」

「やった!2杯づつな!いただきまーす!」

「ふへ!いいねえ!食おう食おう!」

 なんて気のいい学生さんでしょう。味や食感が抜けて美味しくなくなったお料理ですが、やはり捨てるのはもったいない気がします。こうして食べてくださるととても嬉しいものです。

「……」「……」

 あ、やっぱり美味しくなかったですね!ごめんなさい。

「あ、あの宜しければ、もう一杯食べませんか?」

 たぬきち先生とこんたさんのおかわりの分をもう茹で始めていたので、出来てしまったんです。

「いただくっす」「食うッス」

 たぬき蕎麦ときつね蕎麦。学生さんの前にことりとおきます。

「……すげー良い匂い……さっきのとおんなじ蕎麦だよな?」

「見た目は一緒だ、よな?」

 あはは……ごめんなさいね。

「これはうめえええ!」

「伸びてないし!味もするし!うめーーーー!」

 重ね重ね……。

「あーーーー食った食った!」

「三杯も食ったら流石に腹いっぱいだわー!」

 確かにそうですね。するとこんたさんのお席に座っていた学生さんがふと、棚の上を見上げています。そこにはたぬきち先生とこんたさんがいるはずですが……?

「あれ?あの狐。俺のばーちゃんちに居た奴じゃね?片っぽいなくなったってばーちゃんがすげー悲しんでたヤツに似てる」

 え!?何ですって??

「そのお話詳しく聞いても良いですか?」

「うん。俺は村木透哉。ここからちょっと離れたとこに住んでんだけど、もうちょっと離れた所にばーちゃんが一人暮らししててね?そこにさ結構立派な神棚があるんだ。その神棚にいる狐の狛犬が片っぽいなくなっちゃったって言ってて。そいつに似てるんだよね~~~」

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