6 / 89
6 推しは一人でも多い方が良い。
しおりを挟む
ネリは衛兵に連れて行かれる。
「お兄様、私はお兄様とチェレネ様は無実だと分かっておりますよ」
「ありがとう、マリー。流石に母上に報告してくるよ……」
「はい」
がっくり肩を落として北の離れに戻られるお兄様。可哀想でも可愛い堪らん!
残ったお茶や割れたカップの片付けを頼んで、私はお母様の元へ向かう。お母様は少しも毒に触れておらず、しかも懐妊も分かって嬉しいけれど、一歩間違えば危なかった事を思い出し、怖くなっているのか微妙な顔つきだった。そりゃそうよね。
「マリエル!」
「お母様、まずはご無事で良かった。そして赤ちゃんも。弟かしらね?絶対可愛いわ!」
多分弟で立派な「クラブ・ジャック」になってくれるはずよ!滾りますなあ!!
「ま、まさかあの女……」
「馬鹿なメイドの暴走ですわ、間違いありません」
「マリエル!でもあの女が!!」
「ネリというメイドの仕業です。本当に愚かなメイドでした。お母様を傷つけたらどんな事が起こるかも考えられない、そんな愚か者でした」
私は口には出しませんがチェレネ様ではないと訴えます。お母様の言う「あの女」はメイドのネリでなくてはならないのです。
「マリー!」
「お母様。お願いです。私の弟の為にもそんなにお怒りにならないで……」
「それを言われると弱いわ」
命を狙われて怖かったでしょう。でも、でも……お母様にチェレネ様とヴィンセントお兄様を恨んで欲しくない。
「……怒ってるお母様は美しくない、でしたっけ?マリエル」
「はい!」
お母様は私を抱き寄せた。かすかに震える体、やっぱり怖かったんだ。それでもお母様は気丈に振る舞う。
「マリエル、マリエル!私の天使。これからもお母様とこの子を守ってちょうだい」
「お任せ下さい、お母様。マリエルは絶対お母様をお守りして弟にも絶対会いますわ!」
そして推しに課金するんです!因みに「クラブ・ジャック」も私の推しよ!
この事件はメイドの単独犯で処理される事になった。
「まさかチェレネ様が……」
「そんな事ないわ。変な憶測はしないの。お母様付きのメイドに愚か者はいない、そうでしょう?」
「は、はい!マリエル様!」
噂も消しておかなきゃ。愚かな者はメイドだって処刑される……ネリは良い教訓になったと思うの。
「お母様、チェレネ様を恨まないであげて。チェレネ様のシモンズ子爵家ではお父様の命令を拒める訳ないんだから」
「分かっているよの……でもこの怒りをどうしたら良いか分からなくて……」
そうね、お母様のような令嬢は結婚相手が全てと教え込まれているものね。それなのに、クラブエースのお父様はお母様に冷たい……あの野郎め!でもね、私に考えがあるの。ふふ、そんなお母様には……。
「お母様、御本を読みましょう?」
「え?」
「私、最近読むようになったのですが、面白いのですよ?」
あるのよ!娯楽恋愛小説。きっとお母様は気に入ってくださるわ!ふふふ。勿論私が読むのは絵本よ?でも隠れて……うひひ、楽しいわ!
「え?そうなの?あらあら??」
気がつくとお母様の部屋に全巻揃ってたわ、最高ね!
「お兄様、私はお兄様とチェレネ様は無実だと分かっておりますよ」
「ありがとう、マリー。流石に母上に報告してくるよ……」
「はい」
がっくり肩を落として北の離れに戻られるお兄様。可哀想でも可愛い堪らん!
残ったお茶や割れたカップの片付けを頼んで、私はお母様の元へ向かう。お母様は少しも毒に触れておらず、しかも懐妊も分かって嬉しいけれど、一歩間違えば危なかった事を思い出し、怖くなっているのか微妙な顔つきだった。そりゃそうよね。
「マリエル!」
「お母様、まずはご無事で良かった。そして赤ちゃんも。弟かしらね?絶対可愛いわ!」
多分弟で立派な「クラブ・ジャック」になってくれるはずよ!滾りますなあ!!
「ま、まさかあの女……」
「馬鹿なメイドの暴走ですわ、間違いありません」
「マリエル!でもあの女が!!」
「ネリというメイドの仕業です。本当に愚かなメイドでした。お母様を傷つけたらどんな事が起こるかも考えられない、そんな愚か者でした」
私は口には出しませんがチェレネ様ではないと訴えます。お母様の言う「あの女」はメイドのネリでなくてはならないのです。
「マリー!」
「お母様。お願いです。私の弟の為にもそんなにお怒りにならないで……」
「それを言われると弱いわ」
命を狙われて怖かったでしょう。でも、でも……お母様にチェレネ様とヴィンセントお兄様を恨んで欲しくない。
「……怒ってるお母様は美しくない、でしたっけ?マリエル」
「はい!」
お母様は私を抱き寄せた。かすかに震える体、やっぱり怖かったんだ。それでもお母様は気丈に振る舞う。
「マリエル、マリエル!私の天使。これからもお母様とこの子を守ってちょうだい」
「お任せ下さい、お母様。マリエルは絶対お母様をお守りして弟にも絶対会いますわ!」
そして推しに課金するんです!因みに「クラブ・ジャック」も私の推しよ!
この事件はメイドの単独犯で処理される事になった。
「まさかチェレネ様が……」
「そんな事ないわ。変な憶測はしないの。お母様付きのメイドに愚か者はいない、そうでしょう?」
「は、はい!マリエル様!」
噂も消しておかなきゃ。愚かな者はメイドだって処刑される……ネリは良い教訓になったと思うの。
「お母様、チェレネ様を恨まないであげて。チェレネ様のシモンズ子爵家ではお父様の命令を拒める訳ないんだから」
「分かっているよの……でもこの怒りをどうしたら良いか分からなくて……」
そうね、お母様のような令嬢は結婚相手が全てと教え込まれているものね。それなのに、クラブエースのお父様はお母様に冷たい……あの野郎め!でもね、私に考えがあるの。ふふ、そんなお母様には……。
「お母様、御本を読みましょう?」
「え?」
「私、最近読むようになったのですが、面白いのですよ?」
あるのよ!娯楽恋愛小説。きっとお母様は気に入ってくださるわ!ふふふ。勿論私が読むのは絵本よ?でも隠れて……うひひ、楽しいわ!
「え?そうなの?あらあら??」
気がつくとお母様の部屋に全巻揃ってたわ、最高ね!
94
お気に入りに追加
2,508
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました
平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。
王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。
ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。
しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。
ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?
リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~
汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。
――というのは表向きの話。
婚約破棄大成功! 追放万歳!!
辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19)
第四王子の元許嫁で転生者。
悪女のうわさを流されて、王都から去る
×
アル(24)
街でリリィを助けてくれたなぞの剣士
三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
「さすが稀代の悪女様だな」
「手玉に取ってもらおうか」
「お手並み拝見だな」
「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」
**********
※他サイトからの転載。
※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。
強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します
天宮有
恋愛
私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。
その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。
シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。
その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。
それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。
私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。
【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します
佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚
不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。
私はきっとまた、二十歳を越えられないーー
一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。
二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。
三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――?
*ムーンライトノベルズにも掲載
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる