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6 推しは一人でも多い方が良い。

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 ネリは衛兵に連れて行かれる。

「お兄様、私はお兄様とチェレネ様は無実だと分かっておりますよ」

「ありがとう、マリー。流石に母上に報告してくるよ……」

「はい」

 がっくり肩を落として北の離れに戻られるお兄様。可哀想でも可愛い堪らん!

 残ったお茶や割れたカップの片付けを頼んで、私はお母様の元へ向かう。お母様は少しも毒に触れておらず、しかも懐妊も分かって嬉しいけれど、一歩間違えば危なかった事を思い出し、怖くなっているのか微妙な顔つきだった。そりゃそうよね。

「マリエル!」

「お母様、まずはご無事で良かった。そして赤ちゃんも。弟かしらね?絶対可愛いわ!」

 多分弟で立派な「クラブ・ジャック」になってくれるはずよ!滾りますなあ!!

「ま、まさかあの女……」

「馬鹿なメイドの暴走ですわ、間違いありません」

「マリエル!でもあの女が!!」

「ネリというメイドの仕業です。本当に愚かなメイドでした。お母様を傷つけたらどんな事が起こるかも考えられない、そんな愚か者でした」

 私は口には出しませんがチェレネ様ではないと訴えます。お母様の言う「あの女」はメイドのネリでなくてはならないのです。

「マリー!」

「お母様。お願いです。私の弟の為にもそんなにお怒りにならないで……」

「それを言われると弱いわ」

 命を狙われて怖かったでしょう。でも、でも……お母様にチェレネ様とヴィンセントお兄様を恨んで欲しくない。

「……怒ってるお母様は美しくない、でしたっけ?マリエル」

「はい!」

 お母様は私を抱き寄せた。かすかに震える体、やっぱり怖かったんだ。それでもお母様は気丈に振る舞う。

「マリエル、マリエル!私の天使。これからもお母様とこの子を守ってちょうだい」

「お任せ下さい、お母様。マリエルは絶対お母様をお守りして弟にも絶対会いますわ!」

 そして推しに課金するんです!因みに「クラブ・ジャック」も私の推しよ!


 この事件はメイドの単独犯で処理される事になった。

「まさかチェレネ様が……」

「そんな事ないわ。変な憶測はしないの。お母様付きのメイドに愚か者はいない、そうでしょう?」

「は、はい!マリエル様!」

 噂も消しておかなきゃ。愚かな者はメイドだって処刑される……ネリは良い教訓になったと思うの。

「お母様、チェレネ様を恨まないであげて。チェレネ様のシモンズ子爵家ではお父様の命令を拒める訳ないんだから」

「分かっているよの……でもこの怒りをどうしたら良いか分からなくて……」

 そうね、お母様のような令嬢は結婚相手が全てと教え込まれているものね。それなのに、クラブエースのお父様はお母様に冷たい……あの野郎め!でもね、私に考えがあるの。ふふ、そんなお母様には……。

「お母様、御本を読みましょう?」

「え?」

「私、最近読むようになったのですが、面白いのですよ?」

 あるのよ!娯楽恋愛小説。きっとお母様は気に入ってくださるわ!ふふふ。勿論私が読むのは絵本よ?でも隠れて……うひひ、楽しいわ!

「え?そうなの?あらあら??」

 気がつくとお母様の部屋に全巻揃ってたわ、最高ね!
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