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3 お母様のおシワは美しくありませんわ

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「お前のせいで私のマリエルが……!」

「お母様、そんなことはございませんよと何度も申し上げたではありませんか。ほら、眉間のおシワ。伸ばして伸ばして!」

「でもね、マリエル!こいつが……ッ」

「こいつではありません、ヴィンセントお兄様ですわ……それにねお母様……」

 ひそひそっとお母様に耳打ちをする。

「お母様、良くご覧になられて?ヴィンセントお兄様はとても美しい人です、お顔が」

「憎いあの女の子供を美しいなんて……」

「ふう、お母様はまだまだですわ。憎かろうが美しい物は美しい。お母様の美を愛でる心はその程度ですの?」

「え……」

「何も怖がる事なんてありませんのに。お怒りになるお母様はあまり美しくありません……マリエルは少しがっかりですわ……」

「マリエル!?」

「お母様には常に美しくあって貰いたいのです。それにチェレネ様を虐められるお母様のお顔は……マリエルちょっと悲しいです」

 お母様は美女だ。とてもとても美女だ。はっきり言って眩しいくらいなのに、目を吊り上げて、眉間に皺を寄せて大きな口で怒鳴るお母様は流石に美しいとは思えない……。もっと微笑んで、優しく笑っていて欲しいと思うのは娘として当たり前だよね。

「マ、マリエルが……そう、言うなら……」

「嬉しい!」

 こんなに美人なお母様がいるなんて幸せ過ぎて涙が出そう!前世の金ばかりせびる親と比べたら月とスッポン、いやスッポンにも申し訳ないくらい!

「あ、あの……マリー……?」

 あ、しまったつい目の前の美女に気を取られて目の前の美少年を失念していた。

「うっ!眩しいっ課金しなきゃ!お、お兄様とりあえず何か欲しい物はありませんかっ!?」

「え……ないよ。マリー……僕は君が無事ならそれで……」

 はい!?私の健康がお兄様の欲しい物ですと!?

「分かりました、このマリエル!好き嫌いせず、運動もしてばっちり健康に毎日過ごすことをお約束いたします!」

「え?あ、うん……それは良い事だね……?」

「お任せください!」

 でもそれじゃ課金力が足りないわ……なんとかしないと……。


 お兄様は私の無事を確認すると戻って行かれた。流石にお母様だって今まで憎んでいたお兄様をすぐに許すことは出来ないから、居心地が悪かったんだと思う。お兄様の前で私はぶっ倒れたから、責任を感じてお見舞いに来てくれたのよ、こんな針の筵の私のお母様の所まで。偉い感動した、課金しないと。

「それより、課金よ……」

 いくら私がクラブ公爵家の娘と言えど……家のお金で推しに課金するのは些か嫌だ。自分で稼いだお金で推しに貢ぎたい。

「……でも私は今6歳……どうやって稼げばいいのかしら……?」

 この世界のお金事情について良く知る必要があるわ。

「お金はいくら貢いでも良い物だものね……!」

 前世ではかなりブラックな会社にしか入れなかった。だから月給は生活費をよけたらあまり残らなかったし、ボーナスだってスズメの涙だ。そんなんじゃダメだ。そんな戦闘力課金力じゃ推しを推せない!

「もっと……もっとよ!倍プッシュだわ!それには私の戦闘力お金稼ぎ能力を高めるしかないわ。異世界チートは使えるかしら?ド定番のシャンプーリンス。ポーションに……マヨネーズは!?もう何でも使わないと足りない、圧倒的に!」

 私は早急に課金力を高める必要性を噛みしめていた。



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