58 / 83
58 やり過ぎ、だろうか?
しおりを挟む
「おかえりー!」
「ただいまー!」
デフィタ邸の入り口前にはリンカや使用人達が詰めていて、上空にいる私達の姿を確認して手に振って迎えてくれた。
そのまま、扉の前に着地すると、出迎えたリンカにアリアンは元気に返事を返した。
「尻尾ねー、鱗を剥がしてあちこちに配ったんだー。そしてお肉は厨房で焼いて貰ってるんだよー」
「えー、硬くて食えなさそうじゃねぇ?」
「それが意外と付け根の方は柔らかいみたい。先っちょはよく煮込まないと駄目だって」
「へぇ~そんなもんなのかぁ」
自分の尻尾でなければ何の痛痒も感じないのか、リンカとアリアンは笑っている。私は何となくぞわぞわとするのだがな。
「竜のお肉なんて食べた人いないから、まずリンカ達が味見した方がよさそうだよ。普通の人間に変な作用があったら困るからね」
「もう料理長辺りムキムキになって鱗とか生えてるかもな?」
「えー? 煮込んだ湯気で? まっさかぁ……リンカ見てくる!」
「俺も見てぇ!」
出迎えてくれたはずのリンカは慌てて厨房に駆けていった料理長が無事であることを祈るのみだ。
「ルシダール様……ご無事で」
「ああ、お前達も手当は終わっているか?」
「ええ、リンカ様がご尽力下さいまして、人死はありません」
「そうか」
一歩前に出た執事に屋敷の状況を確認する。この家を放り出してアリアンの元へ向かったのだ……自重しなくては。
執事の視線がちらちらとうるさい。こんな不躾な者ではなかったはずなのだが、一体どうしたのだろうか。
「あの、ルシダール様」
「何か?」
その態度に少し苛立ちを隠せなくなってくる。
「アリアン様は、その怪我をしているとリンカ様から聞いております。中で治療をしては如何でしょうか」
「む、そうだったな。行くぞ、アリアン」
「俺、厨房行きたい!」
「手当をしてからだ」
「はーい……」
平気そうな顔をして大人しくしているから忘れかけていたが、アリアンは肩が痛いといっていたではないか。
「ほ、本当にリンカ様の言った通りだ」
「あのアリアン様を抱いたまま離さないですね……」
「アリアン様も嬉しそうだし、ルシダール様も嫌がっている様子もないし」
「ラブラブで帰ってくるってこういうことですか……なるほどなるほど」
使用人達が何かボソボソと呟いていたが、特に問題はないだろう。我が家の使用人達は信頼もできるし有能な者ばかりだからな。
「私もしっかり認識を改めました。ご無礼をお許し下さい」
「突然どうした。お前はきちんと仕事をしていると評価しているぞ」
「ありがたきお言葉」
そう頭を下げる執事はどうしたというのだろう?
「リンカ様が冷やしてやって欲しいとのことですので、部屋でお待ち頂けますか?」
「ああ、頼む」
そうして待っているとしばらくして部屋に最初にやってきたのはリンカで、何か憤慨していた。
「もうっもうっ! やり過ぎなんだわっ! 仕方がないかもしんないけど、ちょっとくらい考えて欲しい訳っ」
「リンカ?」
「ルシ様っ! ずっとアリアンを膝に乗せっぱなしなの! 皆、遠慮して声かけられないでしょっアリアンも当然って顔して乗ってないの!」
「えっ?」
「ふむ……?」
そういえばアリアンを抱き抱えて戻って来て、そのまま部屋まで連れて行き確かに膝の上に乗せていた。そうか、私とアリアンの距離が近過ぎたから皆戸惑っていたのか。リンカに指摘されるまで気が付かなかった。
「ただいまー!」
デフィタ邸の入り口前にはリンカや使用人達が詰めていて、上空にいる私達の姿を確認して手に振って迎えてくれた。
そのまま、扉の前に着地すると、出迎えたリンカにアリアンは元気に返事を返した。
「尻尾ねー、鱗を剥がしてあちこちに配ったんだー。そしてお肉は厨房で焼いて貰ってるんだよー」
「えー、硬くて食えなさそうじゃねぇ?」
「それが意外と付け根の方は柔らかいみたい。先っちょはよく煮込まないと駄目だって」
「へぇ~そんなもんなのかぁ」
自分の尻尾でなければ何の痛痒も感じないのか、リンカとアリアンは笑っている。私は何となくぞわぞわとするのだがな。
「竜のお肉なんて食べた人いないから、まずリンカ達が味見した方がよさそうだよ。普通の人間に変な作用があったら困るからね」
「もう料理長辺りムキムキになって鱗とか生えてるかもな?」
「えー? 煮込んだ湯気で? まっさかぁ……リンカ見てくる!」
「俺も見てぇ!」
出迎えてくれたはずのリンカは慌てて厨房に駆けていった料理長が無事であることを祈るのみだ。
「ルシダール様……ご無事で」
「ああ、お前達も手当は終わっているか?」
「ええ、リンカ様がご尽力下さいまして、人死はありません」
「そうか」
一歩前に出た執事に屋敷の状況を確認する。この家を放り出してアリアンの元へ向かったのだ……自重しなくては。
執事の視線がちらちらとうるさい。こんな不躾な者ではなかったはずなのだが、一体どうしたのだろうか。
「あの、ルシダール様」
「何か?」
その態度に少し苛立ちを隠せなくなってくる。
「アリアン様は、その怪我をしているとリンカ様から聞いております。中で治療をしては如何でしょうか」
「む、そうだったな。行くぞ、アリアン」
「俺、厨房行きたい!」
「手当をしてからだ」
「はーい……」
平気そうな顔をして大人しくしているから忘れかけていたが、アリアンは肩が痛いといっていたではないか。
「ほ、本当にリンカ様の言った通りだ」
「あのアリアン様を抱いたまま離さないですね……」
「アリアン様も嬉しそうだし、ルシダール様も嫌がっている様子もないし」
「ラブラブで帰ってくるってこういうことですか……なるほどなるほど」
使用人達が何かボソボソと呟いていたが、特に問題はないだろう。我が家の使用人達は信頼もできるし有能な者ばかりだからな。
「私もしっかり認識を改めました。ご無礼をお許し下さい」
「突然どうした。お前はきちんと仕事をしていると評価しているぞ」
「ありがたきお言葉」
そう頭を下げる執事はどうしたというのだろう?
「リンカ様が冷やしてやって欲しいとのことですので、部屋でお待ち頂けますか?」
「ああ、頼む」
そうして待っているとしばらくして部屋に最初にやってきたのはリンカで、何か憤慨していた。
「もうっもうっ! やり過ぎなんだわっ! 仕方がないかもしんないけど、ちょっとくらい考えて欲しい訳っ」
「リンカ?」
「ルシ様っ! ずっとアリアンを膝に乗せっぱなしなの! 皆、遠慮して声かけられないでしょっアリアンも当然って顔して乗ってないの!」
「えっ?」
「ふむ……?」
そういえばアリアンを抱き抱えて戻って来て、そのまま部屋まで連れて行き確かに膝の上に乗せていた。そうか、私とアリアンの距離が近過ぎたから皆戸惑っていたのか。リンカに指摘されるまで気が付かなかった。
417
お気に入りに追加
562
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる