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48 アリアンは?
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「怪我した人は!?」
「おりますが、命に別条はありませんっ」
階下からリンカの焦った声が聞こえ、どんどん近づいてくる。そうか、人死にはなかったかそれは良かった……。本来ならば私が率先して怪我人の救護の指揮や屋敷の状態を判断しなければならないのに、立ち上がれないでいた……なんと情けないことか。
「ルシ様ッ! ご無事ですか!」
「ああ……大事ない」
すれ違う使用人達に軽く指示をしながら、リンカはまっすぐ私の元へ駆けつけてくれた。アリアンのことが心配だろうに一番頼りにならない私をきにかけてくれているのだな……。
「青のクソ野郎ですか!?」
「ああ……」
「あの野郎……調子に乗りやがって……!」
リンカはいつもほとんど人間と変わらない恰好をしている。それなのに、今は瞳も金色になり虹彩は縦に裂け竜族特有の目をしていた。頭部から6本の黒い角と耳が尖り、頬には鱗が浮いていた。
「ほんの少しアリアンの力が弱まったからって……絶対許さない」
髪がゆらりとしたから上へ揺らめく。目に見える怒気が吹き上がっていた。リンカはこれからすぐに飛び立ってアリアンを助けに行くだろう。何の力ない、睨まれただけで動けなくなるような私とは違ってリンカなら連れ去られる最後の最後まで私を心配し、何も出来ない私を責めたりしないアリアンをその手で助け出しに行ける。
「ああ……リンカ、頼む。アリアンを……私は、何も出来なかった……情けない」
「……ルシ様……」
私はただの人間で、いくらアリアン相手に強く出れてもそれは結局リンカの力だ。私は、何も出来ない弱い存在だ。リンカの怒気がふっと消える。瞳が金色から黒に戻り、人と同じような丸い形になる。鱗も消え、角も消えてリンカは人と変わらぬ姿に戻ってゆく。
「ルシ様……ねえ、ルシ様。聞いてもいい?」
「ああ、私に答えられることならなんでも。アリアンを早く助けにいってやってくれ」
最近のアリアンは常に眠いせいか動きも鈍い。青竜の最初の薙ぎ払いから私を庇った時は相当頑張って動いたのだろう。絶対に一人では逃げ出せないはずだから。
「ルシ様……ルシ様にとって、アリアンって何?」
「リンカ」
そんなことより早くアリアンを救いに行ってほしい、リンカ。
「答えて、ルシ様。アリアンってルシ様のなんなんですか?」
「リンカ、そんなことより」
「ルシ様、答えて」
あまり大きくない声だが、逃がさない力に満ちたリンカの声。命令のようであり、哀願のようであり、私の気持ちと覚悟を試すかのような硬質な声が辺りを支配する。
「アリアンは……」
便利な駒であり、忠実な犬のようであり。面倒な存在で、わがままで理解に苦しむ困った奴だ。
「私の……」
最初は仕方がなくだっただろうが、今は違う。意地を張る事もあるが素直にいうことを聞き、嘘をつかない絶対に裏切らない。私の為に何かをすることを嫌がらず、喜んでやってくれる。褒めれば満面の笑顔で喜び、叱ればがっかり落ち込んで小さくなる。
「私の……」
私よりずっとずっと強いはずなのに、傍にいないと寂しいと泣き、ずっとくっ付いていたがる。挙句の果てに怖くて仕方がないのに因果をひっくり返し、私の子供まで産もうとしている。愚かで……愛らしい。
そうだ、こんな所で座り込み、誰かに委ねて良いものではない。私は立ち上がり、そしてリンカにきっぱりと告げる。
「アリアンは私のモノだ、誰かに盗られるなど絶対に許さない!」
「うきょっ! オス味ィ! オス味が眩しいイイイイッ! ヒーッ!ご褒美ありがとうございますううう!」
竜だからなんだ、アリアンは私の……私の 妻だ!
「おりますが、命に別条はありませんっ」
階下からリンカの焦った声が聞こえ、どんどん近づいてくる。そうか、人死にはなかったかそれは良かった……。本来ならば私が率先して怪我人の救護の指揮や屋敷の状態を判断しなければならないのに、立ち上がれないでいた……なんと情けないことか。
「ルシ様ッ! ご無事ですか!」
「ああ……大事ない」
すれ違う使用人達に軽く指示をしながら、リンカはまっすぐ私の元へ駆けつけてくれた。アリアンのことが心配だろうに一番頼りにならない私をきにかけてくれているのだな……。
「青のクソ野郎ですか!?」
「ああ……」
「あの野郎……調子に乗りやがって……!」
リンカはいつもほとんど人間と変わらない恰好をしている。それなのに、今は瞳も金色になり虹彩は縦に裂け竜族特有の目をしていた。頭部から6本の黒い角と耳が尖り、頬には鱗が浮いていた。
「ほんの少しアリアンの力が弱まったからって……絶対許さない」
髪がゆらりとしたから上へ揺らめく。目に見える怒気が吹き上がっていた。リンカはこれからすぐに飛び立ってアリアンを助けに行くだろう。何の力ない、睨まれただけで動けなくなるような私とは違ってリンカなら連れ去られる最後の最後まで私を心配し、何も出来ない私を責めたりしないアリアンをその手で助け出しに行ける。
「ああ……リンカ、頼む。アリアンを……私は、何も出来なかった……情けない」
「……ルシ様……」
私はただの人間で、いくらアリアン相手に強く出れてもそれは結局リンカの力だ。私は、何も出来ない弱い存在だ。リンカの怒気がふっと消える。瞳が金色から黒に戻り、人と同じような丸い形になる。鱗も消え、角も消えてリンカは人と変わらぬ姿に戻ってゆく。
「ルシ様……ねえ、ルシ様。聞いてもいい?」
「ああ、私に答えられることならなんでも。アリアンを早く助けにいってやってくれ」
最近のアリアンは常に眠いせいか動きも鈍い。青竜の最初の薙ぎ払いから私を庇った時は相当頑張って動いたのだろう。絶対に一人では逃げ出せないはずだから。
「ルシ様……ルシ様にとって、アリアンって何?」
「リンカ」
そんなことより早くアリアンを救いに行ってほしい、リンカ。
「答えて、ルシ様。アリアンってルシ様のなんなんですか?」
「リンカ、そんなことより」
「ルシ様、答えて」
あまり大きくない声だが、逃がさない力に満ちたリンカの声。命令のようであり、哀願のようであり、私の気持ちと覚悟を試すかのような硬質な声が辺りを支配する。
「アリアンは……」
便利な駒であり、忠実な犬のようであり。面倒な存在で、わがままで理解に苦しむ困った奴だ。
「私の……」
最初は仕方がなくだっただろうが、今は違う。意地を張る事もあるが素直にいうことを聞き、嘘をつかない絶対に裏切らない。私の為に何かをすることを嫌がらず、喜んでやってくれる。褒めれば満面の笑顔で喜び、叱ればがっかり落ち込んで小さくなる。
「私の……」
私よりずっとずっと強いはずなのに、傍にいないと寂しいと泣き、ずっとくっ付いていたがる。挙句の果てに怖くて仕方がないのに因果をひっくり返し、私の子供まで産もうとしている。愚かで……愛らしい。
そうだ、こんな所で座り込み、誰かに委ねて良いものではない。私は立ち上がり、そしてリンカにきっぱりと告げる。
「アリアンは私のモノだ、誰かに盗られるなど絶対に許さない!」
「うきょっ! オス味ィ! オス味が眩しいイイイイッ! ヒーッ!ご褒美ありがとうございますううう!」
竜だからなんだ、アリアンは私の……私の 妻だ!
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