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46 そちらもそろそろテコ入れを

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 リンカもそれがいいといい、アリアンは小さく縮まりながらもそのままでいいという。当人達がそれでよいなら私に何もいうことはない。

「行ってきます」
「ああ、頼んだ。リンカ」

 私の手足のようにリンカは雑用から何からを買って出てくれ、何でもこなしてくれる。アリアンはずっと眠いらしく、昼夜問わずベッドの上で小さく丸まって寝ている。そして私は寝室のベッドの横に小さなテーブルと椅子を置いて仕事や読書をしていた。膝の上から降りたものの傍に居ないと不安らしい。
 たまにアリアンは目を覚まし、少しだけ果物をかじりまた寝ている。たまに寝息が途切れ、ごそごそと動きだす。

「ん……」
「起きたのか」
「ん……なんでこんなにねみぃんだろぅ……」
「……季節のせいだとリンカが言っていただろう」
「そっかぁ」

 卵が本格的に成長してきたからだとリンカはこっそり教えてくれる。アリアン自身に教えないのは「たぶんビビるから」だそうだ。自分の体の変化に女性でも驚くことが多いそうで、そうでなくても意外と怖がりなアリアンではどんな素っ頓狂なことをするか分からないからと笑っていた。

「ふぁ……」
「眠いなら寝ると良い」
「ん……」

 アリアンは枕を抱えてまた眠りに落ちる。こうしてたまに目を覚ました時に、私かリンカが傍に居ないと慌てて探し回る。少し面倒だなと思う所もあるが、頼りにされると悪くない気持ちにもなる。仕事の方はリンカが張り切って片付けてくれるから、以前より進展が早い。リンカは私以上に仕事をこなねば気が済まない性格のようだ。私達にはしっかり休憩を取れという割に本人はどうしているのやらか。
  
 アスガン宰相から貰って来た書類を精査する。やはり王家家族の支出額が大きい……特に王太子だ。去年より増加しているのが聖女のための支出だ。やっと周囲から聖女の存在意義について疑問視する声が上がり始めた。以前の王宮ならば事なかれ主義か私腹を肥やすのに忙しい奴らばかりだったので、まともな議題があがってこなかったが今は違う。まともに自分の頭で国のために考えることができる貴族ばかりだ。そして私やアスガン宰相が間違っていれば
きちんと反対意見を口にできる気骨のある人物が多数いる。

「存在意味のない聖女にかける金はどうなのだ」

 誰もが静かに頷いたようだ。竜の巫女にもなれなかった聖女、国に災害が訪れないが故にその癒しの力を使ったこともない聖女。ただただ、王太子に侍り、騎士団長を顎で使う女。国の貴人としての教養もマナーもなく、やる気も見えないらしい。もう聖女の教師を務めたいという貴族女性はいないという話で、王妃付きの侍女が必要最低限のことを教え込んでいるが、覚えは良くない。故に外交の場に出す事もできないし、他国の支援にも使えない。

「外交パーティにも出せぬのになんだこのドレス衣装代というのは」

 王太子が自分の財産から出しているのであれば誰も文句はいわない。しかし厚顔無恥にも公的に請求してきたのだ、これは流石に声が上がる。

「聖女にドレスが必要か?」
「聖女らしく僧服で良かろう」
「着飾る意味などないではないか」

 至極当然な意見が交わされたと書かれているし、私も同意する所だ。大人しく神に祈り、街の人々を癒して回ればよいのに、不相応なことをしようとして余計な支出を繰り返している。それを制御できぬ王太子の無能、引いては王家の対応について貴族達からの不満は日々溜まっている。
 一度アスガン宰相に出向いていただき、話を詰めねばならんかもしれない。

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