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34 時系列がおかしいの(エリーゼ そしてアリアンの呟き

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「エリーゼ。こんな夜更けに街へ出るなど」
「だって義賊フリーズが出るのは夜でしょう? チャールズ」
「しかし、義賊フリーズは……」
「早く探しましょう! 義賊とはいえ賊なのよ。そんなのを王都に放置するなんて駄目よ」
「エリーゼ、話を聞け」

 私は次の日からチャールズと共に夜の王都を練り歩く。義賊フリーズはお金持ちの貴族を狙って襲い、金品を奪っていく盗賊だ。そして奪った金の大半は貧しい人々に分け与え……とにかく攻略対象者なのよ。そしてエリーゼの説得でフリーズは貴族を襲うのをやめて、何故そんなことをするか教えてくれるの。

 実はフリーズはアカデミーの教授なのよ! 親友の気が弱い背が低くて眼鏡のギディアンをこっそり支援するのにお金が必要だったって訳。ギディアンって24歳なのに、少年枠に入ってる攻略対象者なのよね~フリーズと同じ年とは思えないんだけど、まあハーレム要員だし入れてやらなくもないわよ?
 私とチャールズは何日も何日も夜の街を歩き回った。

「聖女エリーゼ‼︎」
「ひゃあっ!」

 夜に出歩いているから昼間の勉強は眠くて眠くて……つい。

「いい加減にしてくださいませっ! ああ、もうっわたくし今日で聖女の家庭教師を辞めさせていただきます!」
「ええ~~そんなぁ」

 三人目の先生に辞められてしまった……勉強もマナーも全然進んでないよう……でもフリーズとギディアンがハーレムに入れば二人の頭脳のお陰で難しいことは全部二人がやってくれるんだよね!だからどうしてもゲットしておきたいのよ。

「エリーゼ、そろそろ君につける家庭教師がいないんだが……」
「そ、そんなこといわずに誰か紹介してください、カイン様」
「とはいえ、私の仕事も全然終わらないし……ああ、どうしてこんなに難しいんだ」

 最近気が付いたけれど、カインってあんまり頭が良くないのよ。今までの仕事は全部ナディティアがやっていたって聞いてびっくりしたわ。もう本当にカインのためにもフリーズとギディアンを早く見つけなくっちゃ。そのために義賊フリーズを摑まえなきゃいけないのに……。

 そしてチャールズと街を探し回って一ヵ月。フリーズは姿どころか噂も聞かなくなっていたの。なんでよ!

「聞け、エリーゼ! 義賊フリーズはもう3ヵ月も前から現れていない! 他の街へ移ったかどこかで野垂れ死んだといわれている! もう騎士団でもフリーズを追っていない‼︎」
「えええええええええ~~! なんで、なんでよおおおっ!」

 嘘でしょ、どうしてよっ。もう小説と違うけど、直接アカデミーに乗り込むしかないわ!

「なら……なら、アカデミーについてきて、チャールズ!」
「それで気が済むなら昼間に付き合おう。毎夜無駄な放浪は勘弁してくれ、私も業務に支障が出る」
「わかったわよ……」

 そしてアカデミーにいって私はブルブル震えるしかなかった。

「なんで……なんでギディアンの研究室がこんなに立派になってんの⁈」
「わっ、なんですかあなた! 急に来て。ここは大事な研究をしているんです、部外者は立ち入らないで、タイラーお願い」
「ああ、君は……後ろの人は騎士団の人か? すまないが本当に大切な研究をしているんだ、すぐに出て行ってくれ」
「それはすまない、エリーゼ、出るんだ」

 信じらんない信じらんない! 滅茶苦茶アカデミーの隅っこの汚い部屋に閉じ込められて研究もお金がなくて全然できなくて食べるのもやっとのはずのギディアンがきれいな研究室で凄い装置で研究してんの? お金がなくて死にそうになってたのを私が支援して研究を続けるはずでしょう!? どうしてそんなツヤツヤした顔してんのよ、ありえないのよ! そしてもう怒った、怒ったんだから‼︎

「チャールズ、離して! あいつがフリーズよ、義賊フリーズの正体は学園の教師のタイラーなの!」
「……エリーゼ、何を言っているんだ」
「本当よ、あいつが貴族からお金を奪ってたのよ!」
「そんな根拠のないことを」
「だって、私知ってるもの!」

 小説の内容を私が忘れるわけないじゃない! それなのにタイラーは顔色一つ変えずにため息をついた。

「騎士団の方……その人を連れて行って貰えますか? それに私が義賊フリーズだって? どうしてそんなことを思ったのか。あまり気分のいいことじゃないです、勘弁してくださいよ」
「あ、ああすまないな。エリーゼ、帰ろう」
「嫌よ、チャールズ! あいつなんだから、絶対よ」
「……いくら、私が平民とはいえ何の証拠もなしに泥棒呼ばわりされるのは心外です、帰って下さい!」
「ああ、エリーゼ行くぞ!」
「チャールズ!」

 私は無理やりチャールズに引っ張られてアカデミーから追い出された……なんで、なんでなのよ! タイラーは義賊フリーズなのは小説を読んでる人なら絶対知ってるし、ギディアンは全然貧乏じゃないし……もうどうなっちゃってるの、この小説は‼︎ これじゃあ二人とも私のハーレムに入ってくれないじゃない!



「義賊フリーズの正体は本当にタイラーなんだ。ギディアンがあんまりに貧乏で見てらんなくて盗みをしてんの。だからルシがギディアンに支援してあいつの衣食住と研究費が足りたら、タイラーがフリーズになって盗みをする理由がなくなったの。だから街にもう義賊フリーズはでない、そゆこと」
「……なるほど」
「ま、マジでやばい奴が出たら俺がやっつけてやるから安心しろ!」
「その時は頼むぞ、アリアン」
「おう!」
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