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27 過保護なのはリンカなのかアリアンなのか
しおりを挟む「いーけどよー」
「嫌なのか」
「べっつにー?」
「では……」
「むーっ!」
「嫌なのか?」
「べっつにー? 俺はぁ、べっつにーぃ」
むくれている。アリアンが物凄く分かりやすくむくれている。正直面倒くさい。
「ではリンカが嫌がっているのか? お前ではなくリンカが」
ここまでいってやっとわかりやすくなった。
「そう! リンカだ、リンカが夜会に行くなっていってる!」
「……そうか。しかし、情報交換の場にたまには出向かねばならん」
「でも行ったら、絶対女どもにおっかけられるだろ? やだ」
「しかし」
「ぜってーやだって……リンカがいってる! 俺じゃねーよ?」
「それは分かっている、リンカだな」
「うん、リンカだ!」
それでもごねるアリアンを置いて私は久しぶりに夜会に顔を出している。父上が動けぬ以上、私が出席する必要があるからだし、アリアンに言った通り情報を集める必要がある。
私とアスガン宰相の貴族浄化作戦は、受け入れられるものではなかった。しかし、ここまで制裁が進み、巣食っていたもの達の断罪が進むと日和見達もこちら側に付くものが増えてくるのだ。
そうすれば隠れ潜んでいる悪を保身のために売り飛ばしたり、切り離したりする者が出るという訳だ。そのためにも社交の場へ足を運ばねばならない。
「うーうーうーーっ!」
唸りながらアリアンはたくさんの保護魔法をかけてくれた。
「これは防毒、こっちは物理反射、これは魔法反射。それからそれからそれから……」
「アリアン、私は大丈夫だ」
「いや! リンカがそれくらいしろっていってるから!」
いや、リンカはそこまでしろとはいわないだろう? それにリンカは大体寝ている。何度も無理矢理叩き起こされるから、回復がままならなくてまだ表に出てくることができないと嘆いている。
「うーーっ! ルシなんて知らないんだからなーっ! うわぁーん!」
粗方防御系の魔法をかけ終わった後、バンッと背中から真っ黒な竜の翼を生やして飛んでいってしまった。きっと夜会が終わって帰る頃には戻ってきているだろう。
正直、まだ命を狙われているのでアリアンの守護は助かる。本当にアリアンとリンカなしでこの計画は実行もできなかっただろう。
「気をつけて」
「うわぁーーんっ! 俺は強いからいいのーっ! ルシの方が気をつけろ、馬鹿野郎ぉー」
私の声が届いたのか、それでも返事を返してアリアンは飛んでいった。確かにそうだろう、まだ魔窟のような社交界に顔を出さねばならないのだから。
アリアンを伴って行ければ安全だろうけれど、あのアリアンが耐え切れるとは思えない。仕方がない、きを引き締めて情報収集に努めよう。
アリアンとリンカが心配する程、女性とは触れ合わないと思うが。
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