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16 キラキラしたものが良いらしい
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父上は歩くことはできなくなったが、車椅子で仕事を始められた。
「デフィタ家のことは任せておきなさい。ルシダール、お前はアスガン殿と国を頼むぞ」
「ありがとうございます、父上」
「アリアン様、ルシダールのことをよろしくお願い致します」
「いいぜー。ちゃんと毎日家に帰って寝るくらいの時間は取らせるよーにすっから! 残業、駄目、絶対ってリンカの深層意識が騒いでるし」
「リンカ様、ありがとうございます」
「がはは! 任せておけーぇ」
父上はデフィタ公爵として貴族の上に立っていた男であり、王族にも意見する力と威厳のある男だった。こうしてアリアンにへりくだるのは、アリアンが治療してくれたからではない。アリアンが強くて使える奴だと確信したからだ。
大事をなし得る前の自分のプライドのような小事は綺麗さっぱり捨て切れる人なのだ。
「ルシダール、アリアン様とリンカ様に感謝せよ。幸運の上に胡座をかいてはいかんぞ」
「……肝に銘じまする」
今の圧倒的な状況は実際の所、リンカの心一つなのだと思い至ってぞっとする。リンカが心変わりするとは思わないが、何があるか分からない。
私は毎日アリアンを伴って王城へ出かけ、アスガン宰相と仕事をし、夜には屋敷に帰る生活をしている。王城に留まることもあるが、アリアンは私の部屋を用意するように指示し、大きなベッドが二つある広い部屋が与えられていた。
「人間、寝ないと駄目なんだぞ」
「リンカの意識だったな。そういえば竜は大丈夫なのか?」
「竜は寝溜めができるんだ。でもまあ暇だから寝るけどな! 自動障壁もあるし」
「そうだな……」
最近は減ったがやはり暗殺者が送り込まれて来た。毎食、アリアンが最初に鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。
「あー捨てて。悪意の匂いがする、おっさんも食うなよ。料理当番か、運んだメイドか……もう死んでるかもな」
兵士に確認させると植え込みの中にメイドの死体が隠されていることも最近は減っている。
どうやってもアリアンの絶対防御を突破できないと気がついてきたらしい。
「私もなんとか生き延びております。アリアン様のお陰です」
「ん!」
「助かる、アリアン」
「おう!」
アスガン宰相からの感謝の言葉をアリアンは受け取らない。だからアスガン宰相から感謝されたアリアンを私が褒めるという非常に面倒な工程を取らされる。
しかし、この程度のことでアスガン宰相の命が守られるなら安いものだ……少し面倒だが!
「おい! ルシもっと褒めろ!」
「何故」
「俺がこの国の真ん中にいるせいで魔物がビビって寄ってこない! どうだ!!褒めろ」
「それは助かる。ありがとう」
「ふふーん! へへへ」
分かりやすく嬉しそうに頬を赤らめて胸を張る様子は微笑ましいのだが。
「デフィタ公爵、本当のことです。アリアン様がこの国にいらしてから、魔物被害の報告が殆どありません」
「そうか……アリアン、何か欲しい物はあるか?」
「なんかキラキラしたものくれ!」
「分かった」
「やったー! 指輪がいいな」
「指輪?」
「うん! なんでだろうなぁ……リンカの深層意識かな? ルシに買ってもらいたいみたいだ」
「まあ、いいだろう」
リンカはアリアンより強大な力を持っているが、普通の女性が欲しがる物を欲するのだな。
「国宝の指輪でも良いのですよ?」
「うっせ! ルシに買ってもらいたいんだよ、よくわかんねぇけど」
「は、はいっ」
リンカは私が買い与えることに意味を見出しているのだな。ならば感謝を込めて真面目に選んでやらねばなるまいよ。
「デフィタ家のことは任せておきなさい。ルシダール、お前はアスガン殿と国を頼むぞ」
「ありがとうございます、父上」
「アリアン様、ルシダールのことをよろしくお願い致します」
「いいぜー。ちゃんと毎日家に帰って寝るくらいの時間は取らせるよーにすっから! 残業、駄目、絶対ってリンカの深層意識が騒いでるし」
「リンカ様、ありがとうございます」
「がはは! 任せておけーぇ」
父上はデフィタ公爵として貴族の上に立っていた男であり、王族にも意見する力と威厳のある男だった。こうしてアリアンにへりくだるのは、アリアンが治療してくれたからではない。アリアンが強くて使える奴だと確信したからだ。
大事をなし得る前の自分のプライドのような小事は綺麗さっぱり捨て切れる人なのだ。
「ルシダール、アリアン様とリンカ様に感謝せよ。幸運の上に胡座をかいてはいかんぞ」
「……肝に銘じまする」
今の圧倒的な状況は実際の所、リンカの心一つなのだと思い至ってぞっとする。リンカが心変わりするとは思わないが、何があるか分からない。
私は毎日アリアンを伴って王城へ出かけ、アスガン宰相と仕事をし、夜には屋敷に帰る生活をしている。王城に留まることもあるが、アリアンは私の部屋を用意するように指示し、大きなベッドが二つある広い部屋が与えられていた。
「人間、寝ないと駄目なんだぞ」
「リンカの意識だったな。そういえば竜は大丈夫なのか?」
「竜は寝溜めができるんだ。でもまあ暇だから寝るけどな! 自動障壁もあるし」
「そうだな……」
最近は減ったがやはり暗殺者が送り込まれて来た。毎食、アリアンが最初に鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。
「あー捨てて。悪意の匂いがする、おっさんも食うなよ。料理当番か、運んだメイドか……もう死んでるかもな」
兵士に確認させると植え込みの中にメイドの死体が隠されていることも最近は減っている。
どうやってもアリアンの絶対防御を突破できないと気がついてきたらしい。
「私もなんとか生き延びております。アリアン様のお陰です」
「ん!」
「助かる、アリアン」
「おう!」
アスガン宰相からの感謝の言葉をアリアンは受け取らない。だからアスガン宰相から感謝されたアリアンを私が褒めるという非常に面倒な工程を取らされる。
しかし、この程度のことでアスガン宰相の命が守られるなら安いものだ……少し面倒だが!
「おい! ルシもっと褒めろ!」
「何故」
「俺がこの国の真ん中にいるせいで魔物がビビって寄ってこない! どうだ!!褒めろ」
「それは助かる。ありがとう」
「ふふーん! へへへ」
分かりやすく嬉しそうに頬を赤らめて胸を張る様子は微笑ましいのだが。
「デフィタ公爵、本当のことです。アリアン様がこの国にいらしてから、魔物被害の報告が殆どありません」
「そうか……アリアン、何か欲しい物はあるか?」
「なんかキラキラしたものくれ!」
「分かった」
「やったー! 指輪がいいな」
「指輪?」
「うん! なんでだろうなぁ……リンカの深層意識かな? ルシに買ってもらいたいみたいだ」
「まあ、いいだろう」
リンカはアリアンより強大な力を持っているが、普通の女性が欲しがる物を欲するのだな。
「国宝の指輪でも良いのですよ?」
「うっせ! ルシに買ってもらいたいんだよ、よくわかんねぇけど」
「は、はいっ」
リンカは私が買い与えることに意味を見出しているのだな。ならば感謝を込めて真面目に選んでやらねばなるまいよ。
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