上 下
14 / 83

14 私が主人公なのよ(エリーゼ

しおりを挟む

私はエリーゼ。選ばれし聖女エリーゼ。

「きゃああ!」

 普通のOLだった棚橋エリが歩きスマホをしていたら落ちた穴の先はこの異世界だった。

「うそ、ここ「エリーゼの為に」じゃない?!」

 愛読していた小説の世界だって知って凄く嬉しかった!しかも私は主人公のエリーゼ。王太子に溺愛され、騎士団長に傅かれ、宰相、神官長……そしてこの大陸の守護竜にも愛される無敵の存在なの!

「え? 巫女が、私じゃ、ない……?」
「は、はい……」

 何もかも順調に進んでいたのに、異変があったのは巫女選定だった。ここでエリーゼが黒竜の巫女に選ばれ、もうかなり好感度が高い王太子や騎士団長に涙ながらに別れを告げるところなのに!

「み、巫女は一体どなたが?」

 私より純粋無垢な存在がこの世界にいるはすないのに、なんで?一体誰が巫女に選ばれたの??

「そ、それが……ルシダール・デフィタ公爵様で」
「はぁ?!ルシ様がぁ!? なんでよ!」
「ひいっ!」

 つい報告に来たシスターに大声をあげてしまった。いけない、いけない! 聖女はそんなはしたないことしちゃ駄目だ。

「こ、こほん。しかし、公爵様は、その……男性ですよね?」
「ひ、あ、はい……竜の巫女は代々女性から選ばれてきておりましたから、異例中の異例となりますが、何度見てもデフィタ公爵様のお姿が浮かぶそうで」
「そ、そうなの……分かったわ。ありがとう。このことは内緒でね?」
「え、ええ! 勿論ですわ」

 巫女が誰なのか事前に漏らしてはいけない規則だ。でも私はさっきのシスターに頼み込んで教えて貰った。この世界の人は全員私に優しいから、頼めば何でもいうことを聞いてくれる。流石主人公は違うわ!

「しかし、困ったわね」

 私が巫女に選ばれて黒竜に会い、黒竜から「おもしれー女」認定されなきゃ色々不都合があるのよね。私達が自分で乗り越えられないような大きな災厄に見舞われた時、助けてくれるのが黒竜アリアンなんだから。
 どうにかしてアリアンと接点を持たなきゃいけないのに!

「それになんでもうルシ様が……」

 私だってまだルシ様との絡みがないのに。ルシダール・デフィタ公爵はストーリーが進んで今のおじさん宰相が暗殺されてから登場する攻略対象者なのに。おじさん宰相の後をついで宰相に就任するんだけど、そのちょっと冷たい見た目も相まっていろんな人から反発されて、疲れちゃうの。
 それを心配した心優しい聖女の私が助けてあげて仲が深まって行くのに!

「うーん、おかしいなぁ」

 何か私の知らない所で変なことが起こってる気がする。嫌だな、この世界の主人公は私なのに。私のための世界なのに!

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)

藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!? 手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います

たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか? そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。 ほのぼのまったり進行です。 他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

処理中です...