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13 俺、過保護にしてた?
しおりを挟む「ルシぃ」
「……ありがとう、アリアン」
「おう!」
結果、二日昏睡状態に父上は陥ったが持ち直し、久々に笑顔を見せてくれた。
「ルシダール。アリアン殿のやったことは正しかったようだ。刺すような痛みも消え、夜に聞こえ続けた呪詛の声も消えた」
「なんと……父上はずっと耐え続けておったのですか」
「心配をかけたくなくてな。どうせ死にゆく我が身ならばと」
「父上……」
これはアリアンをもっと褒めなくてはならないな。
「ルシとーちゃんが元気になればルシも喜ぶだろ? あーでもまだ毒にやられた肉が残ってるから一週間後くらいかな? もっかいやんぞ」
「お頼み申します、アリアン殿」
「おっけー」
次は汚れても良い場所でやってもらうことにしよう。
「んま、これもルシを聖女に近づけない為に必要なことなんだけど」
「どういうことだ?」
「とーさん死ぬだろ? んで宰相も殺されちゃってルシが宰相になるんだ。そしたらさ、仕事とか重圧とか孤独とかで、ついコロッと聖女に引っかかるんだよ、やだろ!」
「それは嫌だな……アリアン、お前アスガン宰相が殺されるって今いったか?」
「うん。あいつが死んでルシが宰相になって、宰相のルシが聖女の餌食に」
「アスガン宰相を殺させるわけにはいかん、アリアン。宰相を守ってくれ」
しかしアリアンは顔を顰める。
「やだよ、俺はルシのそばにいる。近くであのおっさんが襲われたら助けてやらんこともないけど」
「……っ」
アリアンの行動原理は私の身の安全が第一。それは分かる。しかしアスガン宰相を失うわけにはいかない。
「アリアン、お前の鱗をーー」
「もっとやだよ?! あれ、ものすごーく痛いんだから! しかも人間に竜語魔法を使わせるなんてとんでもねぇんだぞ! ルシだけ特別なんだから!」
「そ、そうなのか」
何でもなさげにアリアンが口に入れてくるから……。
「そうだよ! 与えた鱗は二度と復活しないし、傷も治んねぇんだからね?!」
無造作に服をまた捲り上げれば脇腹の一箇所から血が滲んでいる。
「竜鱗を失った場所は弱点になるし。だから、本当に、本当に特別なの!」
「そ、そうか……すまなかった」
「うんっ分かればいいぞ。心配ならおっさんに近くにいて貰えばいいだろ」
「そう……するか」
「おう!」
その後、アリアンの髪を少し切って作った結界守りをアスガン宰相と父上に肌身離さず持ってもらうことになった。
「え? そんな程度で守れちゃうもんなの??」
「何度も助かったとアスガン宰相は言っているが」
「え? え? 俺、どんだけルシのこと過保護にしてたの??」
「分からんが……リンカの願いなのではないか?」
「そ、そうだな……俺のせいじゃなくてリンカのせいだな!リンカのせい!」
「そうだな」
リンカのせい、と言っておけばアリアンは納得するらしかった。ならば少しリンカのせいにさせてもらおう。このくらいならばリンカは怒りはしないだろうし、気分を悪くしたら私から謝っておくとしよう。
「ドレスでも買えばよいか」
「はあ?! 俺はドレスなんか着ねえけど?!」
「リンカ用だよ」
「あー、うん。女はそーいうので機嫌直るもんな」
ドレスの2.30着で父とアスガン宰相の命が守られるなら安いものだ。
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