上 下
7 / 83

7 私達の奇妙な関係

しおりを挟む

「ひ、ひいーー!り、竜が、竜があーーー!」

 人々が恐れ慄く姿が見えて頭が痛くなる。とりあえず黒竜神殿へ向かうことにした。

「アリアン、小さくなれ」
「いーけど、抱っこすんぞ」
「断る」
「おんぶはできないぞ、翼がなきゃ効率が悪いもん。抱っこは嫌かと思って背中に乗せてきたんだが……ま、竜が空飛びゃ人はビビるわな!」
「……仕方がない、前抱きか……」
「そだね」

 この黒竜アリアンは意外と話せる奴だった。

「俺は長いこと最強だった。最強であるが故に孤独だった……リンカは賑やかで強かった。だから許した。ら!このザマだ!」

 着くまでに色々とアリアンと会話をしたがアリアンは横暴ではなかった。

「とはいえ、ルシダール。お前は人間だ……所詮100年も生きまいよ。リンカの誓約に寿命は含まれていない。我らの100年など瞬きの間、ならば付き合ってやっても良かろう。しかもリンカはお前が幸せならそれで良いらしい!お前亡き後は俺の自由にして良いそうだ、あの強大な力をな!」
「成程」

 私はほとほと、リンカの忠誠のような愛に護られているのだなと深く感じ入った。リンカのいう「推し」とはそれ程までに尊いのか。
 ならば私もそんなリンカの忠義に報いるように生きねばなるまい。
 アリアンに抱かれたまま、黒竜神殿に降り立てば慌てて神官達が飛び出してくる。何せ巫女が初めて戻ってきたのだから、驚くのも無理はない。そしてアリアンの見た目はどこからどう見ても黒竜だ。黒い角、翼に尻尾まである状態では別の生物に見立てるのは難しい。

「こ、公爵様っ……ご無事で……そ、そしてこ、黒竜様が、な、何故地上に」
「色々なことがあったのだ。竜の秘儀に関することなので、人には話せぬ。しかし、黒竜は大地を滅ぼそうというわけではない。遊戯の一つと捉えて良い」
「おー、そうな。俺もたまに地上で遊ぶのも良いよなぁ」

 真っ黒な髪に真っ赤な瞳で、私と同じくらいの背格好になっているアリアンは呑気に欠伸をして伸びをする。

「故に黒竜神殿は今まで通りに。騒ぎ立ててはならぬ、彼の遊戯の邪魔になる」
「は、ははーーっ!」
「黒竜様の支援は我が家で行う。何かあればデフィタ家へ」
「あ、ありがとうございますっ!」

 色々な問題があれども、こうして私は人の世に戻ってくることができた。強大なオマケがついて。

「ま。よろしく頼むわ、ルシ」
「ふ、私の方こそよろしく頼むぞ」

 こうして私とアリアンの奇妙な関係は幕を開けたのだ。



しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)

藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!? 手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

処理中です...