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7 私達の奇妙な関係
しおりを挟む「ひ、ひいーー!り、竜が、竜があーーー!」
人々が恐れ慄く姿が見えて頭が痛くなる。とりあえず黒竜神殿へ向かうことにした。
「アリアン、小さくなれ」
「いーけど、抱っこすんぞ」
「断る」
「おんぶはできないぞ、翼がなきゃ効率が悪いもん。抱っこは嫌かと思って背中に乗せてきたんだが……ま、竜が空飛びゃ人はビビるわな!」
「……仕方がない、前抱きか……」
「そだね」
この黒竜アリアンは意外と話せる奴だった。
「俺は長いこと最強だった。最強であるが故に孤独だった……リンカは賑やかで強かった。だから許した。ら!このザマだ!」
着くまでに色々とアリアンと会話をしたがアリアンは横暴ではなかった。
「とはいえ、ルシダール。お前は人間だ……所詮100年も生きまいよ。リンカの誓約に寿命は含まれていない。我らの100年など瞬きの間、ならば付き合ってやっても良かろう。しかもリンカはお前が幸せならそれで良いらしい!お前亡き後は俺の自由にして良いそうだ、あの強大な力をな!」
「成程」
私はほとほと、リンカの忠誠のような愛に護られているのだなと深く感じ入った。リンカのいう「推し」とはそれ程までに尊いのか。
ならば私もそんなリンカの忠義に報いるように生きねばなるまい。
アリアンに抱かれたまま、黒竜神殿に降り立てば慌てて神官達が飛び出してくる。何せ巫女が初めて戻ってきたのだから、驚くのも無理はない。そしてアリアンの見た目はどこからどう見ても黒竜だ。黒い角、翼に尻尾まである状態では別の生物に見立てるのは難しい。
「こ、公爵様っ……ご無事で……そ、そしてこ、黒竜様が、な、何故地上に」
「色々なことがあったのだ。竜の秘儀に関することなので、人には話せぬ。しかし、黒竜は大地を滅ぼそうというわけではない。遊戯の一つと捉えて良い」
「おー、そうな。俺もたまに地上で遊ぶのも良いよなぁ」
真っ黒な髪に真っ赤な瞳で、私と同じくらいの背格好になっているアリアンは呑気に欠伸をして伸びをする。
「故に黒竜神殿は今まで通りに。騒ぎ立ててはならぬ、彼の遊戯の邪魔になる」
「は、ははーーっ!」
「黒竜様の支援は我が家で行う。何かあればデフィタ家へ」
「あ、ありがとうございますっ!」
色々な問題があれども、こうして私は人の世に戻ってくることができた。強大なオマケがついて。
「ま。よろしく頼むわ、ルシ」
「ふ、私の方こそよろしく頼むぞ」
こうして私とアリアンの奇妙な関係は幕を開けたのだ。
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