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6 良かったな、お前が世界最強だ
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「し、信じられん……クソリンカ……」
光が収まるとリンカのいた場所に、私より少し年嵩の青年がしゃがみこんでいた。髪の色は真っ黒で、瞳は真紅。瞳孔が縦に割れ、爬虫類の瞳だ。耳に飾りひれ、頭には立派な6本の角に黒い尻尾。少年の姿だったリンカが10歳ほど年を取った感じだろうか。
こちらが黒竜の人化した姿なんだろう。
「クソが」
「口が悪いな」
「悪くもなるだろう!リンカを騙したな」
騙す?人聞きが悪い。
「騙してなどいないことは知っているだろう?リンカが勝手にやったことだ」
黒竜は瞳に怒りの炎を宿した。
「てめぇ……虫けらの分際で俺に逆らうんじゃねえ……!」
ゆらり、と立ち上がる。恐怖、恐怖の風が吹きつけて目の前の存在が絶対に勝てないものだと気づいてしまう。気を失う寸前まで追い詰められたが……嘘をつかないリンカのまっすぐな目が私を支えた。
「おすわり」
「ギャン!!」
黒竜はその場にくしゃっと潰れた。おすわりか?これは。
「て、てめえ……」
「黙って」
「むぎゅっ!」
黒竜は口を押えてバタバタしている。リンカの力は本当にすさまじい。
〈あああ……ルシ様ぁ……力加減間違えて、表にいれなくなっちゃったあ……暫く寝ますぅ。お休みなさあぁい〉
リンカの思念の声が聞こえて、小さくなって消えた。なるほど、さっきの服従魔法に力を使い過ぎたのか。そしてそれは寝れば戻るのか。
「ありがとう、リンカ。私は大丈夫そうだ」
礼を言うと暖かくて満足そうな気配がして、そして消えていった。リンカには伝わったんだろう、良い夢が見れることを祈っている。
「さて、私は君のことを何と呼べばいいのかな?」
「ぐぐぐぐ……」
私は黒竜に向き合ってニヤリと嫌な微笑みを向けてやることにした。
「言わねばリンカに習って黒ちゃんか黒トカゲか……」
「むぐーーーっ!」
「……喋ってよし」
「クソが!」
「汚い名前だ」
「ちげーーよ!」
この黒い竜は意外と短気だ。きっとこいつは生まれながらにしての強者なのだ。だから下に見られることもあまりなく、さらに本人の力も強いから馬鹿にされることはほぼ皆無。
「アリアンだ!」
「この大陸の守護竜の名前と一緒だな」
「そりゃそうだ。俺だからな」
「本当なんだな」
「嘘をつく必要があるのか? 」
確かに絶対王者である竜が嘘をつく必要などあるはずがない。
「そうか」
「そうだぞ、ルシ」
「……ルシ様ではないのか?」
あまりに横柄な態度に意地悪がてらそう聞いてみると、黒竜は怒りを露わにする。
「リンカと一緒にすんな! なんで俺様が人間に謙らなきゃならんのだ!!」
「お座り」
「ぎゃんっ!!」
学習能力が低いのかアリアンはまたその場にくしゃっと潰れた。
「悪かった、悪かったから!」
「許す」
「結構短気だな、ルシは」
「飼い犬は最初の躾が大事だからな?」
明らかに挑発的なことをいったのに、アリアンは一睨みしただけで大人しかった。
「まあ、お前もリンカの力がどんだけか知りたいって思ったんだろ? いっとくがリンカの力は本物だ。あいつは本当に強い……良かったな、お前本当に世界で一番強いよ」
「……そんなになのか?」
「ああ、使い所は間違えるな、世界を滅ぼせるぞ」
「肝に銘じる」
そして私は竜化したアリアンの背中に乗って地上へ戻ったのだ。
光が収まるとリンカのいた場所に、私より少し年嵩の青年がしゃがみこんでいた。髪の色は真っ黒で、瞳は真紅。瞳孔が縦に割れ、爬虫類の瞳だ。耳に飾りひれ、頭には立派な6本の角に黒い尻尾。少年の姿だったリンカが10歳ほど年を取った感じだろうか。
こちらが黒竜の人化した姿なんだろう。
「クソが」
「口が悪いな」
「悪くもなるだろう!リンカを騙したな」
騙す?人聞きが悪い。
「騙してなどいないことは知っているだろう?リンカが勝手にやったことだ」
黒竜は瞳に怒りの炎を宿した。
「てめぇ……虫けらの分際で俺に逆らうんじゃねえ……!」
ゆらり、と立ち上がる。恐怖、恐怖の風が吹きつけて目の前の存在が絶対に勝てないものだと気づいてしまう。気を失う寸前まで追い詰められたが……嘘をつかないリンカのまっすぐな目が私を支えた。
「おすわり」
「ギャン!!」
黒竜はその場にくしゃっと潰れた。おすわりか?これは。
「て、てめえ……」
「黙って」
「むぎゅっ!」
黒竜は口を押えてバタバタしている。リンカの力は本当にすさまじい。
〈あああ……ルシ様ぁ……力加減間違えて、表にいれなくなっちゃったあ……暫く寝ますぅ。お休みなさあぁい〉
リンカの思念の声が聞こえて、小さくなって消えた。なるほど、さっきの服従魔法に力を使い過ぎたのか。そしてそれは寝れば戻るのか。
「ありがとう、リンカ。私は大丈夫そうだ」
礼を言うと暖かくて満足そうな気配がして、そして消えていった。リンカには伝わったんだろう、良い夢が見れることを祈っている。
「さて、私は君のことを何と呼べばいいのかな?」
「ぐぐぐぐ……」
私は黒竜に向き合ってニヤリと嫌な微笑みを向けてやることにした。
「言わねばリンカに習って黒ちゃんか黒トカゲか……」
「むぐーーーっ!」
「……喋ってよし」
「クソが!」
「汚い名前だ」
「ちげーーよ!」
この黒い竜は意外と短気だ。きっとこいつは生まれながらにしての強者なのだ。だから下に見られることもあまりなく、さらに本人の力も強いから馬鹿にされることはほぼ皆無。
「アリアンだ!」
「この大陸の守護竜の名前と一緒だな」
「そりゃそうだ。俺だからな」
「本当なんだな」
「嘘をつく必要があるのか? 」
確かに絶対王者である竜が嘘をつく必要などあるはずがない。
「そうか」
「そうだぞ、ルシ」
「……ルシ様ではないのか?」
あまりに横柄な態度に意地悪がてらそう聞いてみると、黒竜は怒りを露わにする。
「リンカと一緒にすんな! なんで俺様が人間に謙らなきゃならんのだ!!」
「お座り」
「ぎゃんっ!!」
学習能力が低いのかアリアンはまたその場にくしゃっと潰れた。
「悪かった、悪かったから!」
「許す」
「結構短気だな、ルシは」
「飼い犬は最初の躾が大事だからな?」
明らかに挑発的なことをいったのに、アリアンは一睨みしただけで大人しかった。
「まあ、お前もリンカの力がどんだけか知りたいって思ったんだろ? いっとくがリンカの力は本物だ。あいつは本当に強い……良かったな、お前本当に世界で一番強いよ」
「……そんなになのか?」
「ああ、使い所は間違えるな、世界を滅ぼせるぞ」
「肝に銘じる」
そして私は竜化したアリアンの背中に乗って地上へ戻ったのだ。
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