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23 いくらでもいるものではないのです

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 メイドの二人が戻ってきたのは次の日の朝だった。

「遅いっ!」

「申し訳ございません。買い物量があまりに多く、暗くなるまでかかってしまいました。ここは森に囲まれております、日が落ちてから戻る事は困難でした」

 朝から借りたであろう荷車をひき額に汗して戻ってきたメイド達に労いの言葉もなく、タティオは怒鳴った。

「我々の食事は?!」

「……買ってきたパンならありますが」

「早く用意しろ!この薄鈍め!!」

 怒鳴るだけ怒鳴って去って行くタティオの背中に冷たい視線を投げて、二人は頷き合った。

 この人を助けてやる義理はないと。

 二人のメイドがパンと簡単なスープを作り遅くなった朝食の支度をしているとドロシーとリルファがわざわざキッチンまで顔を出す。

「全く!なんて使えないメイドなのから!こんなんじゃクビよ!クビ!」

「ほんとだわ!あんた達のせいで昨日は夜ご飯がなかったのよ!どうしてくれんの?!」

 流石夫婦、親子というべきか。手を止めるメイドに怒鳴りつけ、騒ぐだけ騒いで二人は居なくなる。

 ため息をつきながら、それでも朝食の用意を整える。買ってきた食器に盛り付け、セットしなんとか朝食の体をなした。

「お前達はクビだ」

「……」

 その席でタティオではなくトレントに言われ、二人のメイドは一瞬沈黙したが

「分かりました」

 と、頭を下げて退出して行った。

「全くとんでもない使用人でしたね、父上」

「ああ、買い物が多いからだから何だ?我々を甘く見るのも大概にして貰いたい!」

「ほんと嫌だわ。使えないメイドは要らないわよ!」

「本当ね、お母様」

 四人の笑い声が響くが、の二人は少ない荷物を纏めて鼻で笑う。

「あー良かった!あっちからクビですって!」

「助かったわ~。先払いで給金もらってるけど、あんなのに一週間も付き合えないもんね!」

 二人はドノバンと言う商人に一週間と言う期限でお金を貰っていた。

「もし、あの貴族崩れどもが君達をクビだと言って追い出すなら、契約はそこまでで良い。きっと失礼な事を言うだろうから残りの日数分の給金は慰謝料だと思っておくれ」

「……分かりましたがそんなに酷いんですか?」

「ああ、絵に描いたような傲慢な貴族だったよ」

 そうドノバンに言われ、二人は顔を見合わせたが、彼の言うことはとても正しかった。

「それにしても酷い買い物だったわよね。こんな誰も来ない家に住むのに食器はやたら豪華な物を指定するし」

「スプーンは銀ですっけ?食器だけでだいぶお金が無くなったけど、どうするんだろ?」 

「預かったお金の半分は使ってるわよね、アレ。あのお金がなくなったらあの人達、どうやって生きるんだろ?」

 元々一週間の契約だ。荷物は多くない鞄にきれいに仕舞い込んで二人は首を傾げるが、結局は

「ま、私達の知った事ではないわね」

「そーね。最後の挨拶も……要らないか」

 顔を出しても怒鳴るだけなら、会いたくもない。

「行こ行こ。最後の報告をラグージ家に上げてくれって事だしね」

「そこでボーナスが貰えるって本当かしら?酷い貴族もいれば太っ腹な貴族もいるもんよね」

「でもこの家のあいつらはもう貴族でも何でもないんでしょ?」

「らしいわねー」

 二人は静かに家を出る。すると正面に簡素な馬車が停まり、中から男達がぞろぞろと降りてきた。

「あの、この家にタティオさんはいらっしゃいますか?元タティオ・ザザーランと言うのですが」

 メイド達は最後の仕事をきちんと果たす。

「ええ、おりますよ。今、お食事中かもしれませんが」

「なるほど、ありがとうございます。我々も忙しい身なのにこんな辺鄙な場所まで来させられたんだ。さっさと終わらせて帰りましょう」

「全くですね」

「ええ」

 やってきたのはタティオが借金をしていた銀行の職員であり、返済がなされた為書類を持ってきた人達であった。

「さっさと終わらせて帰りましょう。長居は無用だ」

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