22 / 33
22 アンゼリカの思いと元血縁の流れ先
しおりを挟む
これは妹ざまあ小説の中だ。勿論ざまあされるのはリルファで、ざまあするのは私、アンゼリカ。でもここまで激しい内容じゃなかった。
最後、リルファは廃嫡されたマルセル様と小さな領地に引きこもって不平を垂れながらも慎ましい生活していた。ザザーラン家もセルドアの罠で爵位没収になった。騙されるように取られた訳じゃなかった。
でも大人しく妹に虐められ、俺様なセルドアに振り回され、泣きながらもやっと幸せを掴むアンゼリカに私はならない。だって、何が起こるか知っているなら全て有効に活用して、自分の手でさっさと幸せを掴み取るわよ。
神様もそのつもりで私に記憶を持たせたんでしょう?大人しいアンゼリカが見たかったのなら、記憶なんて与えるはずないものね。
だから私はあいつらからのいじめに耐えられた。全てを取り上げられても、ひたすらに勉強し、お金を稼ぎ、力を身に着けた。
「随分行くのだな」
「ええ、少し郊外ですからね。人目は気になりませんよ」
元ザザーラン家の人間を乗せた馬車は街並みを抜けて走り、暫くすると小さいながらも整えられた家についた。
「こちらです。どうぞ中へ」
「……なんと小さい。これが公爵家の人間が住む家なのか」
ドノバンが手配した男は勿論「もう公爵でも何でもないのに」と言う余計な言葉は口にしなかった。
「ではこの家の鍵です。お金はこのカバンに。2.3日もすれば銀行から支払い済みの証書が届くでしょう」
「うむ」
アンゼリカは銀行への支払いは済ますとこの男に伝えていた。そう、銀行への支払いは、だ。アンゼリカがザザーラン家の経営に関わるようになると、父のタティオは自由にお金を持ち出せなくなった。当然だが、アンゼリカはきちんと収支報告書を作っているから、お金が合わないと追及される。それが嫌でタティオは遊ぶ金……その時まだ公爵家に迎えていないドロシーとリルファに贈り物をするお金を銀行から借りたのだ。
最初は少しだったが、ドンドン限度額まで借り、西で借りられなくなると北銀行から……と言う風に王都中にある銀行から借金をしていたのだ。
そんな借金だが、アンゼリカは払うと言った。
「銀行は敵に回しちゃ駄目よ。仲良くしなくちゃ」
「確かにそりゃそうだ」
投資クラブの面々は深く頷く。融資を頼むときに行くこともあるだろう。
「では、私はこれで。メイドを2名ほど雇ってあります」
「うむ、ご苦労」
タティオに家の鍵を渡す。馬車が玄関についたのが分かったのか、中からメイドが二人出て来て頭を下げた。
「お帰りなさいませ」
「うむ」
少し横柄な態度だったが、雇われたメイド達は給料分の仕事はするようだ。何も言わず頭を下げ続けた。
「ああ!やっと一息つけますね、酷い目にあったわ!」
「でも、お父様、貴族じゃなくなってしまったの……?」
心配そうに尋ねるリルファにタティオは自信満々に答える。
「なあに大丈夫だ。どうせすぐに取り返して見せるよ。それに爵位があんなに簡単に他人に譲れるはずがない。王宮に届けたってあんなに怪しい商人では通るはずがない」
「そ、それもそうね!流石お父様だわ!」
ほっと胸を撫でおろすリルファをみて、気を良くしている。
「まあ良い、喉が渇いた。茶を入れろ!」
トレントの命令だったが、二人のメイドは顔を上げ、口を開く。
「ではお持ちになった茶器とお茶の葉をお出しください。どこにあるのですか?」
「そんなものは持って来ておらん!この家にはないのか!?」
「私達が掃除に来るまで空き家だったこの家にそのような物はありませんけど……」
「なっ!?」
4人が慌てて家の中を確かめると備え付けの家具と、寝るベッドはあれど、細かい食器や食材など何もなかった。
「くっ!仕方がない。お前ら買ってこい!」
「では買い物をするお金を……」
「くそっ」
カバンの中に詰まっていた金を二人に渡す。色々言いつけられた二人は買い物に出かけたが、かなりの量だったので、時間はかかりそうだった。
最後、リルファは廃嫡されたマルセル様と小さな領地に引きこもって不平を垂れながらも慎ましい生活していた。ザザーラン家もセルドアの罠で爵位没収になった。騙されるように取られた訳じゃなかった。
でも大人しく妹に虐められ、俺様なセルドアに振り回され、泣きながらもやっと幸せを掴むアンゼリカに私はならない。だって、何が起こるか知っているなら全て有効に活用して、自分の手でさっさと幸せを掴み取るわよ。
神様もそのつもりで私に記憶を持たせたんでしょう?大人しいアンゼリカが見たかったのなら、記憶なんて与えるはずないものね。
だから私はあいつらからのいじめに耐えられた。全てを取り上げられても、ひたすらに勉強し、お金を稼ぎ、力を身に着けた。
「随分行くのだな」
「ええ、少し郊外ですからね。人目は気になりませんよ」
元ザザーラン家の人間を乗せた馬車は街並みを抜けて走り、暫くすると小さいながらも整えられた家についた。
「こちらです。どうぞ中へ」
「……なんと小さい。これが公爵家の人間が住む家なのか」
ドノバンが手配した男は勿論「もう公爵でも何でもないのに」と言う余計な言葉は口にしなかった。
「ではこの家の鍵です。お金はこのカバンに。2.3日もすれば銀行から支払い済みの証書が届くでしょう」
「うむ」
アンゼリカは銀行への支払いは済ますとこの男に伝えていた。そう、銀行への支払いは、だ。アンゼリカがザザーラン家の経営に関わるようになると、父のタティオは自由にお金を持ち出せなくなった。当然だが、アンゼリカはきちんと収支報告書を作っているから、お金が合わないと追及される。それが嫌でタティオは遊ぶ金……その時まだ公爵家に迎えていないドロシーとリルファに贈り物をするお金を銀行から借りたのだ。
最初は少しだったが、ドンドン限度額まで借り、西で借りられなくなると北銀行から……と言う風に王都中にある銀行から借金をしていたのだ。
そんな借金だが、アンゼリカは払うと言った。
「銀行は敵に回しちゃ駄目よ。仲良くしなくちゃ」
「確かにそりゃそうだ」
投資クラブの面々は深く頷く。融資を頼むときに行くこともあるだろう。
「では、私はこれで。メイドを2名ほど雇ってあります」
「うむ、ご苦労」
タティオに家の鍵を渡す。馬車が玄関についたのが分かったのか、中からメイドが二人出て来て頭を下げた。
「お帰りなさいませ」
「うむ」
少し横柄な態度だったが、雇われたメイド達は給料分の仕事はするようだ。何も言わず頭を下げ続けた。
「ああ!やっと一息つけますね、酷い目にあったわ!」
「でも、お父様、貴族じゃなくなってしまったの……?」
心配そうに尋ねるリルファにタティオは自信満々に答える。
「なあに大丈夫だ。どうせすぐに取り返して見せるよ。それに爵位があんなに簡単に他人に譲れるはずがない。王宮に届けたってあんなに怪しい商人では通るはずがない」
「そ、それもそうね!流石お父様だわ!」
ほっと胸を撫でおろすリルファをみて、気を良くしている。
「まあ良い、喉が渇いた。茶を入れろ!」
トレントの命令だったが、二人のメイドは顔を上げ、口を開く。
「ではお持ちになった茶器とお茶の葉をお出しください。どこにあるのですか?」
「そんなものは持って来ておらん!この家にはないのか!?」
「私達が掃除に来るまで空き家だったこの家にそのような物はありませんけど……」
「なっ!?」
4人が慌てて家の中を確かめると備え付けの家具と、寝るベッドはあれど、細かい食器や食材など何もなかった。
「くっ!仕方がない。お前ら買ってこい!」
「では買い物をするお金を……」
「くそっ」
カバンの中に詰まっていた金を二人に渡す。色々言いつけられた二人は買い物に出かけたが、かなりの量だったので、時間はかかりそうだった。
78
お気に入りに追加
5,657
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
【完結】妹にハメられて、わたくしは幸せになりました〜婚約破棄断罪劇の裏の裏〜
杜野秋人
恋愛
「血を分けた実の妹に陰でこのような仕打ちをするような者など、私の皇妃として、将来の皇后として相応しいとは言えぬ!よって、今この場においてそなたとの婚約を破棄する!」
先ほどまで楽しげに談笑していたはずの婚約者は、わたくしを睨みつけてそう宣言なさいました。
わたくしは妹を虐めてなどいません。けれど彼女の腕には確かに鞭の跡が。
わたくしではないとするならば、信じたくはありませんがお兄様しかおりません。
であれば、わたくしが罪を被らねば。将来公爵家を継ぐお兄様に瑕疵をつけるわけには参りませんもの。
ええ、そう。わたくしが耐えれば済む話なのです。
ですが悔しさのあまり、涙がこぼれます。
なぜわたくしが、このような目に遭わなければならないのか。
婚約者であるルートヴィヒ皇子はわたくしとの婚約を破棄し、代わって妹と婚約すると宣言なさいました。それを陛下もお認めになって。
ああ、わたくしの人生もここまでですわね。
ですがわたくしへの罰として殿下が宣言なさったのは、辺境伯領へ流罪とし、国の守りたる辺境伯アードルフ様に嫁ぐこと。
えっ、待って?
本当によろしいのですか?
それってわたくし的には、むしろご褒美なんですが!?
この時、冤罪により断罪されたシャルロッテは知らなかった。
この婚約破棄の裏側で多くの“陰謀”が蠢いていたことを。
それは彼女には予想もつかない、壮大なまでのスケールに発展していて⸺!?
◆拙作『物語は始まらずに終わる』に登場したハインリヒ皇子の弟のルートヴィヒ皇子とその婚約者の物語。『物語は〜』から約3年後の話になります。
ちなみにこのふたりの弟が『わたくしの望みはただひとつ!』の皇弟マインラートです。
◆テンプレに則った「妹に冤罪をかけられて婚約破棄される物語」ですが、ざまあなしのみんなが幸せになるハッピーエンドの物語です。
◆書けない病で『熊男爵の押しかけ幼妻』の執筆が滞っているので、リハビリがてらプロットだけ作って放置していた話を仕上げてみました。
どんどん話が長くなりまして、全34話の中編になりました(爆)。8/16完結。
◆この物語は小説家になろうでも公開します。なろう版は全32話で8/15に完結しました。
カクヨムでも公開しました。
断罪された商才令嬢は隣国を満喫中
水空 葵
ファンタジー
伯爵令嬢で王国一の商会の長でもあるルシアナ・アストライアはある日のパーティーで王太子の婚約者──聖女候補を虐めたという冤罪で国外追放を言い渡されてしまう。
そんな王太子と聖女候補はルシアナが絶望感する様子を楽しみにしている様子。
けれども、今いるグレール王国には未来が無いと考えていたルシアナは追放を喜んだ。
「国外追放になって悔しいか?」
「いいえ、感謝していますわ。国外追放に処してくださってありがとうございます!」
悔しがる王太子達とは違って、ルシアナは隣国での商人生活に期待を膨らませていて、隣国を拠点に人々の役に立つ魔道具を作って広めることを決意する。
その一方で、彼女が去った後の王国は破滅へと向かっていて……。
断罪された令嬢が皆から愛され、幸せになるお話。
※他サイトでも連載中です。
毎日18時頃の更新を予定しています。
妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
築地シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる