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22 アンゼリカの思いと元血縁の流れ先

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 これは妹ざまあ小説の中だ。勿論ざまあされるのはリルファで、ざまあするのは私、アンゼリカ。でもここまで激しい内容じゃなかった。
 最後、リルファは廃嫡されたマルセル様と小さな領地に引きこもって不平を垂れながらも慎ましい生活していた。ザザーラン家もセルドアの罠で爵位没収になった。騙されるように取られた訳じゃなかった。

 でも大人しく妹に虐められ、俺様なセルドアに振り回され、泣きながらもやっと幸せを掴むアンゼリカに私はならない。だって、何が起こるか知っているなら全て有効に活用して、自分の手でさっさと幸せを掴み取るわよ。
 神様もそのつもりで私に記憶を持たせたんでしょう?大人しいアンゼリカが見たかったのなら、記憶なんて与えるはずないものね。

 だから私はあいつらからのいじめに耐えられた。全てを取り上げられても、ひたすらに勉強し、お金を稼ぎ、力を身に着けた。



「随分行くのだな」

「ええ、少し郊外ですからね。人目は気になりませんよ」

 元ザザーラン家の人間を乗せた馬車は街並みを抜けて走り、暫くすると小さいながらも整えられた家についた。

「こちらです。どうぞ中へ」

「……なんと小さい。これが公爵家の人間が住む家なのか」

 が手配した男は勿論「もう公爵でも何でもないのに」と言う余計な言葉は口にしなかった。

「ではこの家の鍵です。お金はこのカバンに。2.3日もすれば銀行から支払い済みの証書が届くでしょう」

「うむ」

 アンゼリカは銀行への支払いは済ますとこの男に伝えていた。そう、銀行への支払いは、だ。アンゼリカがザザーラン家の経営に関わるようになると、父のタティオは自由にお金を持ち出せなくなった。当然だが、アンゼリカはきちんと収支報告書を作っているから、お金が合わないと追及される。それが嫌でタティオは遊ぶ金……その時まだ公爵家に迎えていないドロシーとリルファに贈り物をするお金を銀行から借りたのだ。
 最初は少しだったが、ドンドン限度額まで借り、西で借りられなくなると北銀行から……と言う風に王都中にある銀行から借金をしていたのだ。
 そんな借金だが、アンゼリカは払うと言った。

「銀行は敵に回しちゃ駄目よ。仲良くしなくちゃ」

「確かにそりゃそうだ」

 投資クラブの面々は深く頷く。融資を頼むときに行くこともあるだろう。


「では、私はこれで。メイドを2名ほど雇ってあります」

「うむ、ご苦労」

 タティオに家の鍵を渡す。馬車が玄関についたのが分かったのか、中からメイドが二人出て来て頭を下げた。

「お帰りなさいませ」

「うむ」

 少し横柄な態度だったが、雇われたメイド達は給料分の仕事はするようだ。何も言わず頭を下げ続けた。

「ああ!やっと一息つけますね、酷い目にあったわ!」

「でも、お父様、貴族じゃなくなってしまったの……?」

 心配そうに尋ねるリルファにタティオは自信満々に答える。

「なあに大丈夫だ。どうせすぐに取り返して見せるよ。それに爵位があんなに簡単に他人に譲れるはずがない。王宮に届けたってあんなに怪しい商人では通るはずがない」

「そ、それもそうね!流石お父様だわ!」

 ほっと胸を撫でおろすリルファをみて、気を良くしている。

「まあ良い、喉が渇いた。茶を入れろ!」

 トレントの命令だったが、二人のメイドは顔を上げ、口を開く。

「ではお持ちになった茶器とお茶の葉をお出しください。どこにあるのですか?」

「そんなものは持って来ておらん!この家にはないのか!?」

「私達が掃除に来るまで空き家だったこの家にそのような物はありませんけど……」

「なっ!?」

 4人が慌てて家の中を確かめると備え付けの家具と、寝るベッドはあれど、細かい食器や食材など何もなかった。

「くっ!仕方がない。お前ら買ってこい!」

「では買い物をするお金を……」

「くそっ」

 カバンの中に詰まっていた金を二人に渡す。色々言いつけられた二人は買い物に出かけたが、かなりの量だったので、時間はかかりそうだった。

 
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