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17 先手を打たないとでも?
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「そ、そうだわ!学園よ!学園の寮になら何か残っているわ!」
「なるほど!よく思い出したリルファ!」
アンゼリカとリルファが通っていた王立の学園。基本的に全寮制で、土曜日と日曜日は家に帰り、平日は学園と寮の行きかえり、そんな生活をしているのだ。
「寮の部屋にも普段着とかアンゼリカから奪い取った宝石がいくつか置いてあるわ!」
「おお!」
貰った、借りたなどと言っている場合ではないのか、リルファは奪ったと言い切る。待てと言い置いた辻馬車は二人が戻ってくるのをきちんと待っていた。
「お客さん、早くお金を払ってくださいよ。我々だって商売なんですから!」
イライラと平民の御者が言うがそれ以上の声でリルファは畳みかけた。
「王立学園へ行ってちょうだい!そこでお金は払うわ!」
「……本当でしょうね?払ってくれなきゃ役人に突き出しますからね」
したがなしに御者は二人の傲慢な貴族を乗せ、馬の首を王立学園の方へ向けた。
「あらあら……」「ふふふ……」
学園の寮の前についた馬車から行儀悪く飛び出したリルファを数名の女子が見かけて、クスクスと笑っている。しかしリルファにはそんないけ好かない女どもに構っている時間などなかった。急いで寮のドアを開け、部屋へと走る。
まだタティオを乗せた辻馬車の前に、何やら大荷物を載せた数台の荷車があって、ガラガラと移動して行ったのを良く見る事もなく。
「引っ越しでしょうか?あの大荷物」
「ああ、アレは……ご存じありません?昨日の婚約破棄騒動」
淑女になるべく学んでいる女性達は静かにほほ笑む。
「ああ!アンゼリカ様の……え、するとアンゼリカ様が学園を……?」
「そんな訳あるはずがないですわ。だってアンゼリカ様は何一つ悪い所がないのですもの……去るのはやはり……」
「ですわよね……あの方、すぐに睨んでくるし、言葉は悪いしで私苦手でしたから……」
「そうね、私もよ。何故この学園にあんな方がいらっしゃるのか不思議だったわ」
小さな悪意たちに気が付かず、リルファは自分に割り当てられた高位貴族が使用する階にある部屋を目指し、乱暴に扉を開けた。
「なっ……!」
部屋には何一つ残っていなかった。学園で着ていたリルファの制服も、下着一枚に至るまですべてである。
「リルファ・ザザーラン。今月の寮費をお支払いになってください」
「寮監様!私の部屋が何者かに荒らされています!」
「何者かではありません。アンゼリカ・ザザーラン、いえ、新しく提出された書類ではアンゼリカ・ラグージとなっていましたね。彼女の指示です。それよりも寮費の支払いを」
「わ、私の制服や、宝石は一体!?」
「アンゼリカ・ラグージが持って行ったのですから、彼女が持っているのでは?それよりも寮費を。もう3か月も滞納しております、明日中に払わねば寮から出て行っていただきます」
「う、嘘……だって寮のお金はお父様がお支払いに……」
「いいえ、毎月ギリギリにアンゼリカさんが持って来ていましたよ。その支払いもアンゼリカさんはもうザザーラン家とは縁を切ったのでしないと言いました」
手ぶらでとぼとぼと帰ってくるリルファにタティオはまたも真っ青になるしかなかった。
「てめーら!金もねえのに馬車に乗れると思うな!!」
結局そのままタティオとリルファは役人に突き出され、詰所の汚い牢屋に一晩泊まることになった。
「どうして……どうしてこんなことに……」
王太子妃の夢から一気に真っ逆さまに突き落とされ、リルファは呆然と呟いた。
「なるほど!よく思い出したリルファ!」
アンゼリカとリルファが通っていた王立の学園。基本的に全寮制で、土曜日と日曜日は家に帰り、平日は学園と寮の行きかえり、そんな生活をしているのだ。
「寮の部屋にも普段着とかアンゼリカから奪い取った宝石がいくつか置いてあるわ!」
「おお!」
貰った、借りたなどと言っている場合ではないのか、リルファは奪ったと言い切る。待てと言い置いた辻馬車は二人が戻ってくるのをきちんと待っていた。
「お客さん、早くお金を払ってくださいよ。我々だって商売なんですから!」
イライラと平民の御者が言うがそれ以上の声でリルファは畳みかけた。
「王立学園へ行ってちょうだい!そこでお金は払うわ!」
「……本当でしょうね?払ってくれなきゃ役人に突き出しますからね」
したがなしに御者は二人の傲慢な貴族を乗せ、馬の首を王立学園の方へ向けた。
「あらあら……」「ふふふ……」
学園の寮の前についた馬車から行儀悪く飛び出したリルファを数名の女子が見かけて、クスクスと笑っている。しかしリルファにはそんないけ好かない女どもに構っている時間などなかった。急いで寮のドアを開け、部屋へと走る。
まだタティオを乗せた辻馬車の前に、何やら大荷物を載せた数台の荷車があって、ガラガラと移動して行ったのを良く見る事もなく。
「引っ越しでしょうか?あの大荷物」
「ああ、アレは……ご存じありません?昨日の婚約破棄騒動」
淑女になるべく学んでいる女性達は静かにほほ笑む。
「ああ!アンゼリカ様の……え、するとアンゼリカ様が学園を……?」
「そんな訳あるはずがないですわ。だってアンゼリカ様は何一つ悪い所がないのですもの……去るのはやはり……」
「ですわよね……あの方、すぐに睨んでくるし、言葉は悪いしで私苦手でしたから……」
「そうね、私もよ。何故この学園にあんな方がいらっしゃるのか不思議だったわ」
小さな悪意たちに気が付かず、リルファは自分に割り当てられた高位貴族が使用する階にある部屋を目指し、乱暴に扉を開けた。
「なっ……!」
部屋には何一つ残っていなかった。学園で着ていたリルファの制服も、下着一枚に至るまですべてである。
「リルファ・ザザーラン。今月の寮費をお支払いになってください」
「寮監様!私の部屋が何者かに荒らされています!」
「何者かではありません。アンゼリカ・ザザーラン、いえ、新しく提出された書類ではアンゼリカ・ラグージとなっていましたね。彼女の指示です。それよりも寮費の支払いを」
「わ、私の制服や、宝石は一体!?」
「アンゼリカ・ラグージが持って行ったのですから、彼女が持っているのでは?それよりも寮費を。もう3か月も滞納しております、明日中に払わねば寮から出て行っていただきます」
「う、嘘……だって寮のお金はお父様がお支払いに……」
「いいえ、毎月ギリギリにアンゼリカさんが持って来ていましたよ。その支払いもアンゼリカさんはもうザザーラン家とは縁を切ったのでしないと言いました」
手ぶらでとぼとぼと帰ってくるリルファにタティオはまたも真っ青になるしかなかった。
「てめーら!金もねえのに馬車に乗れると思うな!!」
結局そのままタティオとリルファは役人に突き出され、詰所の汚い牢屋に一晩泊まることになった。
「どうして……どうしてこんなことに……」
王太子妃の夢から一気に真っ逆さまに突き落とされ、リルファは呆然と呟いた。
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