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10 前ザザーラン公爵夫妻
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「タティオ!どうなっておるのだ!」
「ち、父上!ちょうど良い所に!」
幽霊屋敷になった庭先でへたりと座り込んでいたアンゼリカの元父の所に前ザザーラン公爵トレントとその夫人、アンゼリカにしてみれば元祖父と元祖母が怒りも顕に馬車で訪れたのだ。
父に泣きつこうとしていたタティオより早く、前ザザーラン公爵は顔を真っ赤にして叫んだ。
「タティオ!お前の領地経営はどうなっておるのかと聞いておるのだ!!」
「え……いつも通り滞りなく……」
滞りなくアンゼリカが行っていた。
「黙れ!馬鹿者が!!我がザザーラン領の主要地区全てが人手に渡っておるではないか!お前では話にならん!!アンゼリカを呼べ!」
意味が分からずタティオはオロオロと聞き返す。
「い、一体どう言う事ですか、父上」
「今日の朝一番でラグージ家とルーアン家から人がやってきおった!借金が返せないなら、預かっている土地を全ていただくと!」
「しゃ、借金……」
「どちらの家もきちんとお前のサインが入った借用書を持ってきおった!どうなっておるのだ!アンゼリカ!特にラグージ家など、利息もつけてきっちり返せと行ってきおった!どこだ!アンゼリカッ」
元祖父トレントは大声で叫ぶもアンゼリカは現れる事は絶対にない。何故ならここにアンゼリカはいないのだから。
「タティオ!アンゼリカはどうした!」
「あ、あれは……放逐しました!」
「放逐!?……それでこの書類か……なんと愚かな」
ラグージ家の紋章が入った書類を手に、トレントはブルブルと震えた。
「え、ええ。あの娘は愚かです。殿下から婚約を破棄され……」
「愚か者はお前だ、タティオ!!アンゼリカを失えば我がザザーランがラグージより引き出していた支援が滞る事を忘れておったのかっ!見よ、この書類を!全てアンゼリカがザザーランにいてこその書類であるのに!」
「へ……」
父から叱責され、投げつけられた書類を見る。それは確かにラグージ家当主とタティオが交わした書類だった。かなり昔からタティオは大なり小なりラグージ家に借金をしていた。しかしラグージ家から返してくれと言う催促をされたことはなかったから、借金は清算されているのだと思い込んでいた。
「お前が領地を担保にラグージ家から借りていた金が膨れ上がり、金を払わぬ限り南部はラグージ家に取られる!しかもこの借金、アンゼリカがザザーラン家に居ることが利息を付けぬ条件!アンゼリカがおらねば、積み重なった利息も請求するとある!」
「ひっ!?し、しかし、一度も返せと言われた事など……もう返し終わっているのでは……?」
「1ゴールドたりとも返しておらんわ!一体だれが払ったというのだ!?お前が作った借金ならばお前が払わねば誰も払うまいよ!?」
「そ、それは……アンゼリカが……」
何故、アンゼリカがタティオの借金を払うのだろうか、トレントは息子のタティオが何を言っているかよくわからなくなった。
「似たような内容でルーアン家からも借金の取り立てが来ておる……。ルーアンには東部を取られるぞ!早く金を払うんだ!」
「そ、そんなお金ありません……それより父上、お金を貸してください!銀行や借金取りがウチへ押しかけてくるのです!」
「お前は何を言っているんだ……?!」
トレントはますます混乱した。
「ち、父上!ちょうど良い所に!」
幽霊屋敷になった庭先でへたりと座り込んでいたアンゼリカの元父の所に前ザザーラン公爵トレントとその夫人、アンゼリカにしてみれば元祖父と元祖母が怒りも顕に馬車で訪れたのだ。
父に泣きつこうとしていたタティオより早く、前ザザーラン公爵は顔を真っ赤にして叫んだ。
「タティオ!お前の領地経営はどうなっておるのかと聞いておるのだ!!」
「え……いつも通り滞りなく……」
滞りなくアンゼリカが行っていた。
「黙れ!馬鹿者が!!我がザザーラン領の主要地区全てが人手に渡っておるではないか!お前では話にならん!!アンゼリカを呼べ!」
意味が分からずタティオはオロオロと聞き返す。
「い、一体どう言う事ですか、父上」
「今日の朝一番でラグージ家とルーアン家から人がやってきおった!借金が返せないなら、預かっている土地を全ていただくと!」
「しゃ、借金……」
「どちらの家もきちんとお前のサインが入った借用書を持ってきおった!どうなっておるのだ!アンゼリカ!特にラグージ家など、利息もつけてきっちり返せと行ってきおった!どこだ!アンゼリカッ」
元祖父トレントは大声で叫ぶもアンゼリカは現れる事は絶対にない。何故ならここにアンゼリカはいないのだから。
「タティオ!アンゼリカはどうした!」
「あ、あれは……放逐しました!」
「放逐!?……それでこの書類か……なんと愚かな」
ラグージ家の紋章が入った書類を手に、トレントはブルブルと震えた。
「え、ええ。あの娘は愚かです。殿下から婚約を破棄され……」
「愚か者はお前だ、タティオ!!アンゼリカを失えば我がザザーランがラグージより引き出していた支援が滞る事を忘れておったのかっ!見よ、この書類を!全てアンゼリカがザザーランにいてこその書類であるのに!」
「へ……」
父から叱責され、投げつけられた書類を見る。それは確かにラグージ家当主とタティオが交わした書類だった。かなり昔からタティオは大なり小なりラグージ家に借金をしていた。しかしラグージ家から返してくれと言う催促をされたことはなかったから、借金は清算されているのだと思い込んでいた。
「お前が領地を担保にラグージ家から借りていた金が膨れ上がり、金を払わぬ限り南部はラグージ家に取られる!しかもこの借金、アンゼリカがザザーラン家に居ることが利息を付けぬ条件!アンゼリカがおらねば、積み重なった利息も請求するとある!」
「ひっ!?し、しかし、一度も返せと言われた事など……もう返し終わっているのでは……?」
「1ゴールドたりとも返しておらんわ!一体だれが払ったというのだ!?お前が作った借金ならばお前が払わねば誰も払うまいよ!?」
「そ、それは……アンゼリカが……」
何故、アンゼリカがタティオの借金を払うのだろうか、トレントは息子のタティオが何を言っているかよくわからなくなった。
「似たような内容でルーアン家からも借金の取り立てが来ておる……。ルーアンには東部を取られるぞ!早く金を払うんだ!」
「そ、そんなお金ありません……それより父上、お金を貸してください!銀行や借金取りがウチへ押しかけてくるのです!」
「お前は何を言っているんだ……?!」
トレントはますます混乱した。
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