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72 美智子さんは友達だ

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 海野家は高い壁で囲まれている。その壁をよじ登ろうとする者。登り切った所で足を滑らせて落ちた。

「茂達が遊んでいるようなんですけど、さすがに人の家に無断で忍び込もうとするとは……」

 監視カメラの映像だった。リアルタイムらしいが、さっき大福を転ばせた茂君三人組がかまいたちアタックを仕掛けて遊んでいるらしい。どうやら壁を登って来た人たちに、かまいたち三兄弟は見えていないようだ。

「見えないのが普通なんですけどね?ふふっ」

 
 おかー様はニコニコと笑った。私と大福は海野さんに話すしかないと結論を出した。

「あーーー輪島ね。知ってるっていうか昔からある妖怪の家じゃ有名だよ、悪い方に」

「座敷童子を飼い殺しにする鬼畜だろ。ホント毛嫌いされてるんだよね、あの家。佐倉の方でも嫌ってる」

「苫麻子様……お隠れになられたのね」

 海野のおかー様はどうやらトマコ様の事を知っていたようだった。

「そのトマコさんの力を継いだのがザジィ君の言う子で」

 私はスマホの写真を見せる。

「うお!可愛い系イケメン!」「まあ!可愛いコね!」

「今、逃げてるんですけど……どうも私達をつければたどり着くんじゃないかと思っているらしくて……すいません。ご迷惑をおかけしました」

 おかー様はふむ、と考え

「と、言う事は今、輪島の本家には座敷童子が居ないのね?」

「そう思います」

 にこっと笑った。

「誠子ちゃーん!私、いい事考えちゃった~♪うふふ~!ちょお~っと電話してくるわぁ~」

「母さん、どこに電話……」

 るんるん、そんな鼻唄が聞こえてきそうなおかー様は廊下を歩いて行った。

「本庄の妙ちゃんよ~~」

 ぶ!隆さんは噴き出した。何が……どうした!?

「もう輪島は終わったから大丈夫だよ……行こう。今日は夕飯食べて行ってくれ」

 私は大福と顔を見合わせた。終わったの……?


「あいつらさ~おっかしーの!何回も登ってきて落ちて切られてさあははは!」

「あんだけ切ったの久しぶりだね~」

「ホントホント面白かった!」

 かまいたちの三兄弟はなかなかのヤンチャものだった。

「でね、説明するとさ。本庄って一反木綿の家なの。妙さんは母さんの友達。手芸マジ上手いよ、一反木綿だし」

 ほう……布のエキスパートですかね?

「でさ、まーかなり昔、輪島の家に捕まってそりゃひどい目に合わされたんだ。ボロボロになりながら逃げだしたみたいなんだけど、そりゃ恨むよね!でも輪島には座敷童子の加護もあるしで手を出せなかったみたいなんだけど」

 いないんだよね?座敷童子。にやり、と隆さんは悪い笑顔で笑った。

「……なるほど、理解した……」


「妙ちゃんと、都ちゃんと、悟君にも電話しちゃったわ~!」

「うわー!豪華そうなメンバーっすね!ねえ!おかー様!アタシ輪島の家がぶっつぶれるのみたい!」

「じゃあ誰かにビデオ取ってきてもらいましょ!楽しみ~!」

「妙さんが一反木綿。都さんがカラ傘。悟さんはサトリの一族。まあ嫌ってる妖怪が多いからどういう風に潰されるのか見てみたい気はするなあ」

 隆さんもなかなか好戦的だなぁ……。

「ザジィ君にメッセージ送っておこう……」

「お!あのイケメンとLINEしてんの!みたいみたい!」

「普段引きこもりでドテラ着てるんですよ?」

「うわー!ギャップー!ギャップ萌え~!」

 ザジィ君にLINEを入れるとすぐに既読が付いた後に、通話がかかって来た。

「誠子!どういう事だ!輪島がつぶれるって!!」

「うん、なんか海野さんに相談したら、そうなった」

「海野さんって誰?」

 そうだったザジィ君はたまたま受け継いだから、昔からある家の事なんて分からないんだった。

「よーーイケメン!別にいいんだろ?輪島の本家がなくなっても!」

 電話の横から美智子さんが顔を突っ込んできた。

「い、いいけど。助かるけどさ」

「ならさ!顔見える通話にしてよ!ジャニ系じゃん?デビューすんの?座敷童子ってマジ?」

「誠子!?誰これ!」

 ん~~~?

「友達!」

 美智子さんは友達だ!


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