59 / 75
59 誠子、襲撃される
しおりを挟む
「あ、あんた……あんたみたいなブスに九郎君は似合わないッ!絶対に渡さないんだから!!」
「え、九郎君って誰……あ、クロか」
「ブスのクセに!」
ブスブス言わなくてもいいじゃないか……。
「だから、話を聞いて欲しい……」
「黙れッ!ブスのくせに!」
私は黙るしかなかった。若い子は怖い!
何故、私がこの凄くフリフリのついた20台そこそこくらいの女性にファミレスで差し向いに座り、ブスブス言われ続けなくてはいけないのか、よくわからない。仕事が終わり、近くの駅に着いたとき
「アサヒナセイコさんですよね」
ちょっと暗くて怖い感じのこの子に声を掛けられた。勿論初対面だ。
「猫村九郎さんのことで少しお話したいことがあります。そこのファミレスまで付き合ってもらえませんか?」
目がちょっと怖かったけれども、ファミレスというし。何か真剣そうだったのでついてきたらコレだった。
『大福!変な女子に絡まれた!クロの知り合いっぽい!助けて!』
大福に即LINEを入れられたのは良かった。
『誠子!?通話にして話を聞かせてくれ、場所は駅のそばのファミレスだな?』
大福の指示に従う。そしたらコレだ。ブスブス言い続けられている。そして
「九郎君は私にとっても優しくしてくれた!九郎君の為に色々買ったし貢いだわ!だから……だから九郎君は私の、私のなの!あなたみたいな女がそばにいていい人じゃないのよ!消えて頂戴!」
「私に関係ない……」
「うるさいッ!」
ヒステリックな声が店内に響いて、お客さんやら店員がビクッと振り返った。勿論私も肩を縮めた。うおーいたすけてくれー!
「お、お客様、店内で大声は……」
「うるさいわねッあっちいってよ!店員のクセに!客に従ってればいいのよ!」
怖い……ついでに常識がないな、この子は。店員さんが私に憐みの目を向けてくる。いざとなったら警察を呼ばないと……。でもクロの関係者ならクロに話をした方がいいのか?
スマホが低く震えて大福からメッセージが届く。目の前の子に見つからないようにそっと覗き込む。
『クロには連絡したが、職場先から帰るから少し時間がかかると。すまないと謝っていた。私とザジィでそっちに向うから少しだけ耐えてくれ』
うおーーー心強いぜ!持つべきものは隣人とハムスターの旦那様だな!ザジィ&大福がファミレスにつくまで私は理不尽な文句を受け続けていた。話の内容は特になくて、ただ私とクロが仲が良いのが頭にきた。そんな感じだけだった。
「九郎君と結婚するのは私なんだからーー!」
あ、そうなんだ。頑張ってね……そんなことを心を無にして聞いていると、やっと助けがやって来た。
「おい、お前なんなの?人の迷惑って言葉知ってる?」
「え」
テーブルに手をついて冷たく言うザジィ君は、まともな服を着ている。おお、最近のすきっとした若者みたい!汚いヨレヨレの部屋着のTシャツでもないし、適当なスウェットズボンでもないぞ!あとお気に入りの綿入りドテラは脱いできたんだな!
名前も知らないフリフリドレス?のお嬢さん(?)は声を失った。お忘れかもしれないが、ザジィ君は南国ジャニ系美少年顔なのだ。怖い顔をしても可愛いのだ。
誠子!誠子!大丈夫か!?
ザジィ君の上着からぴょこんと大福が飛び出してきて、私のポケットに入って小声で大福が話しかけてきた。
大福~助かったよ~なんかこの子が、クロの事で話があるからファミレス行こうって言うもんで来てみたらコレだよ。なんだろうね?
多分……クロの夜の仕事の客じゃないか?ってザジィ君と話していた。買ったとか貢いだとか言っていなかったか?
いってたー!超言ってたー!
それだな。
「あ、あの!わ、私……信条美唯といいます……あの、あの!お名前は……?」
ザジィ君は私の横にどっかり座り
「なんで俺があんたに名前教えなきゃいけないの?」
おー怒ってる怒ってる!ザジィ君が怒るとなかなか怖いな!しーん、と水を打ったような静けさが店内を支配する。え、あ、皆さん、お気遣いなくお食事などを楽しんでいただければ……!そう思うけれど、気になるんだよね。多分私もこんな現場に居合わせたら気になって耳をそばだてちゃうと思う。当事者にはなりたくなかったがな。
「あの、あなたは、その、ブ」
ブスと言いかけてザジィ君ににらまれ止まった。
「アサヒナセイコさんとはどんなご関係なんですか……?」
上目遣いに聞いてくる。今更可愛いふりをしても無駄だと思うよ、フリフリお嬢さん。ん?よく見るとお嬢さんでもなさそうな……あれ?私より年上じゃないか?この人……。
ギリッとにらむザジィ君だが、多分この顔は困った顔だ。だって私とザジィ君の関係は同じアパートの隣の隣に住んでいる人、それだけだからな!
弟で。
小さな大福の声がザジィ君にも届いた。
「誠子は俺のねーちゃんだよ、なんか文句あんのか?」
「似てないわ!」
「母親が違うんだ、似てねえよ。悪いか」
おっとお!?ここにきて私に弟が出来ました!?そしてとーちゃん、浮気てたんだな、良くないぞ、とーちゃん。勿論これはザジィ君の今適当に作った嘘設定だけれども、もし私のとーちゃんが聞いたら
誠子~誤解だ~私はそんなこと~ああ~だが、この子は~俺の息子だ~!
生前のとーちゃんならその嘘にのってきて、冗談を言うであろう場面が容易に想像できて、吹き出しそうになるのを必死でこらえた。
「え、九郎君って誰……あ、クロか」
「ブスのクセに!」
ブスブス言わなくてもいいじゃないか……。
「だから、話を聞いて欲しい……」
「黙れッ!ブスのくせに!」
私は黙るしかなかった。若い子は怖い!
何故、私がこの凄くフリフリのついた20台そこそこくらいの女性にファミレスで差し向いに座り、ブスブス言われ続けなくてはいけないのか、よくわからない。仕事が終わり、近くの駅に着いたとき
「アサヒナセイコさんですよね」
ちょっと暗くて怖い感じのこの子に声を掛けられた。勿論初対面だ。
「猫村九郎さんのことで少しお話したいことがあります。そこのファミレスまで付き合ってもらえませんか?」
目がちょっと怖かったけれども、ファミレスというし。何か真剣そうだったのでついてきたらコレだった。
『大福!変な女子に絡まれた!クロの知り合いっぽい!助けて!』
大福に即LINEを入れられたのは良かった。
『誠子!?通話にして話を聞かせてくれ、場所は駅のそばのファミレスだな?』
大福の指示に従う。そしたらコレだ。ブスブス言い続けられている。そして
「九郎君は私にとっても優しくしてくれた!九郎君の為に色々買ったし貢いだわ!だから……だから九郎君は私の、私のなの!あなたみたいな女がそばにいていい人じゃないのよ!消えて頂戴!」
「私に関係ない……」
「うるさいッ!」
ヒステリックな声が店内に響いて、お客さんやら店員がビクッと振り返った。勿論私も肩を縮めた。うおーいたすけてくれー!
「お、お客様、店内で大声は……」
「うるさいわねッあっちいってよ!店員のクセに!客に従ってればいいのよ!」
怖い……ついでに常識がないな、この子は。店員さんが私に憐みの目を向けてくる。いざとなったら警察を呼ばないと……。でもクロの関係者ならクロに話をした方がいいのか?
スマホが低く震えて大福からメッセージが届く。目の前の子に見つからないようにそっと覗き込む。
『クロには連絡したが、職場先から帰るから少し時間がかかると。すまないと謝っていた。私とザジィでそっちに向うから少しだけ耐えてくれ』
うおーーー心強いぜ!持つべきものは隣人とハムスターの旦那様だな!ザジィ&大福がファミレスにつくまで私は理不尽な文句を受け続けていた。話の内容は特になくて、ただ私とクロが仲が良いのが頭にきた。そんな感じだけだった。
「九郎君と結婚するのは私なんだからーー!」
あ、そうなんだ。頑張ってね……そんなことを心を無にして聞いていると、やっと助けがやって来た。
「おい、お前なんなの?人の迷惑って言葉知ってる?」
「え」
テーブルに手をついて冷たく言うザジィ君は、まともな服を着ている。おお、最近のすきっとした若者みたい!汚いヨレヨレの部屋着のTシャツでもないし、適当なスウェットズボンでもないぞ!あとお気に入りの綿入りドテラは脱いできたんだな!
名前も知らないフリフリドレス?のお嬢さん(?)は声を失った。お忘れかもしれないが、ザジィ君は南国ジャニ系美少年顔なのだ。怖い顔をしても可愛いのだ。
誠子!誠子!大丈夫か!?
ザジィ君の上着からぴょこんと大福が飛び出してきて、私のポケットに入って小声で大福が話しかけてきた。
大福~助かったよ~なんかこの子が、クロの事で話があるからファミレス行こうって言うもんで来てみたらコレだよ。なんだろうね?
多分……クロの夜の仕事の客じゃないか?ってザジィ君と話していた。買ったとか貢いだとか言っていなかったか?
いってたー!超言ってたー!
それだな。
「あ、あの!わ、私……信条美唯といいます……あの、あの!お名前は……?」
ザジィ君は私の横にどっかり座り
「なんで俺があんたに名前教えなきゃいけないの?」
おー怒ってる怒ってる!ザジィ君が怒るとなかなか怖いな!しーん、と水を打ったような静けさが店内を支配する。え、あ、皆さん、お気遣いなくお食事などを楽しんでいただければ……!そう思うけれど、気になるんだよね。多分私もこんな現場に居合わせたら気になって耳をそばだてちゃうと思う。当事者にはなりたくなかったがな。
「あの、あなたは、その、ブ」
ブスと言いかけてザジィ君ににらまれ止まった。
「アサヒナセイコさんとはどんなご関係なんですか……?」
上目遣いに聞いてくる。今更可愛いふりをしても無駄だと思うよ、フリフリお嬢さん。ん?よく見るとお嬢さんでもなさそうな……あれ?私より年上じゃないか?この人……。
ギリッとにらむザジィ君だが、多分この顔は困った顔だ。だって私とザジィ君の関係は同じアパートの隣の隣に住んでいる人、それだけだからな!
弟で。
小さな大福の声がザジィ君にも届いた。
「誠子は俺のねーちゃんだよ、なんか文句あんのか?」
「似てないわ!」
「母親が違うんだ、似てねえよ。悪いか」
おっとお!?ここにきて私に弟が出来ました!?そしてとーちゃん、浮気てたんだな、良くないぞ、とーちゃん。勿論これはザジィ君の今適当に作った嘘設定だけれども、もし私のとーちゃんが聞いたら
誠子~誤解だ~私はそんなこと~ああ~だが、この子は~俺の息子だ~!
生前のとーちゃんならその嘘にのってきて、冗談を言うであろう場面が容易に想像できて、吹き出しそうになるのを必死でこらえた。
1
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説
好きになるには理由があります ~支社長室に神が舞い降りました~
菱沼あゆ
キャラ文芸
ある朝、クルーザーの中で目覚めた一宮深月(いちみや みつき)は、隣にイケメンだが、ちょっと苦手な支社長、飛鳥馬陽太(あすま ようた)が寝ていることに驚愕する。
大事な神事を控えていた巫女さん兼業OL 深月は思わず叫んでいた。
「神の怒りを買ってしまいます~っ」
みんなに深月の相手と認めてもらうため、神事で舞を舞うことになる陽太だったが――。
お神楽×オフィスラブ。
皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜
菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。
まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。
なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに!
この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。
我が家の家庭内順位は姫、犬、おっさんの順の様だがおかしい俺は家主だぞそんなの絶対に認めないからそんな目で俺を見るな
ミドリ
キャラ文芸
【奨励賞受賞作品です】
少し昔の下北沢を舞台に繰り広げられるおっさんが妖の闘争に巻き込まれる現代ファンタジー。
次々と増える居候におっさんの財布はいつまで耐えられるのか。
姫様に喋る犬、白蛇にイケメンまで来てしまって部屋はもうぎゅうぎゅう。
笑いあり涙ありのほのぼの時折ドキドキ溺愛ストーリー。ただのおっさん、三種の神器を手にバトルだって体に鞭打って頑張ります。
なろう・ノベプラ・カクヨムにて掲載中
諦めて溺愛されてください~皇帝陛下の湯たんぽ係やってます~
七瀬京
キャラ文芸
庶民中の庶民、王宮の洗濯係のリリアは、ある日皇帝陛下の『湯たんぽ』係に任命される。
冷酷無比極まりないと評判の皇帝陛下と毎晩同衾するだけの簡単なお仕事だが、皇帝陛下は妙にリリアを気に入ってしまい……??
Aコードコンチェルト
ツヅラ
キャラ文芸
能力者教育機関“ヴェーベ”の、北東教育機関の最上級生であるA級能力者チームは、とにもかくに、A級能力者の使命である、怪人を倒すことにやる気がなかった。
おかげで、貢献度はぶっちぎりの最下位。
その日も、怪人が現れたが、いつも通り、やる気もなく出撃する予定もなかった。だが、顧問のクビがかかっているという話を聞き、慌てるように、怪人を倒しに向かった。そして、増殖する新種の怪人と退治することになった。
その日、ヴェーベを訪れていたルーチェとその父、ルシファエラは、怪人に襲われ、ガレキの下敷きとなった。
二人は、近くにいた能力者に助けられ、一命を取り留めたルシファエラは、その時、助けてもらった能力者に、ルーチェと、あるデータを帝国本土まで無事に運ぶことを依頼することにした。
初めて帝国本土にやってきた能力者たちは、そこである陰謀と出会うのだった。
※小説家になろうにアップしたものの編集版です
根岸アリアはお茶がしたい
原野伊瀬
キャラ文芸
〝名探偵〟が偶然居合わせた喫茶店で、事件が起きないはずがない。
誰が犯人で、誰が被害者か……
現役JK探偵は普通の高校生ライフを守るため、事件が起きる前に推理を騙る。
著名な推理作家の姉を持つ女子高生・根岸 アリア――。
ひきこもりがちな彼女が一歩外に出れば、行く先々で死体が転がり、親類縁者がことごとく殺人事件の被疑者や被害者になってしまう。もはや呪いとも言うべき“名探偵の宿命”を背負いながら、一方でごく普通の青春に憧れてもいた。
そんな彼女がとある事件で知り合った大学生・九野創介の濡れ衣を晴らした事で、お礼にお茶に誘われる。 念願のリア充イベントに浮かれるアリアだったが、デート先で殺人事件が起こるのはまず間違いない。
待ち合わせの時間まで15分! 事件が起こるよりも先に犯人を見つけ出せるのか!?
※なおこの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
『有意義』なお金の使い方!~ある日、高1の僕は突然金持ちになっちゃった!?~
平塚冴子
キャラ文芸
イジメられられっ子、母子家庭、不幸だと思っていた僕は自殺まで考えていた。
なのに、突然被験者に選ばれてしまった。
「いくらでも、好きにお金を使って下さい。
ただし、有意義な使い方を心掛けて下さい。
あなたのお金の使い道を、こちら実験結果としてクライアントに提供させて頂きます。」
華京院 奈落と名乗る青年サポーターが、取り敢えず差し出した1千万円に頭が真っ白くなった…。
有意義なお金の使い方って何だ…?
そして…謎の一族…華京院が次々と現れてくる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる