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25 はいたよ

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「うなぁーん……」

「起きた」

「起きたな」


 しばらくクロ……猫村さんはぼーっとしていたが、ハッとしてきょろきょろ辺りを見回す。

「え?あ?へ?あれ?俺?え?」

 うん、ダメなヤツだ。ここはひとつ

「にゃおにゅ~る、食う?」

「食う」

 食うんだ。

 猫村さんが起きたのでとりあえずテレビをつけ、私は弁当を開けた。付け合わせのサラダからではなく、茹でたブロッコリーを冷蔵庫から出してきて大福に手渡す。

「ブロッコリーは美味いものだな」

「ああ、上のもしゃもしゃは花らしい」

「花を食うなど、なかなか愛いではないか」

 猫村さんは猫のままなのに、にゃおにゅ~るの封を上手に切って、ちゅるちゅる吸い付いている。

「猫村さん、鮭おにぎりならあるが。何が好物か分からなかったから買ってこなかった」

「ん?ああ、くれ」

 手渡すと上手にフィルムを開け、やっぱり両手でおにぎりをもって食べている。さすが猫又。しばらくみんなの咀嚼音とテレビの音だけが聞こえる。弁当はまずくはないが美味くはない。やはり少しは手作りするべきだろか?
 
「……帰る……というか、帰らせていただきます……」

「うん……そうだな」

 何かを悟りきった顔で猫村さんが言うもんで、部屋のドアを開け、脱ぎ散らかした猫村さんの服のポケットから鍵をだし、202号室の部屋の扉を開ける。服を全部猫村さんの玄関に置き

「では」

「では」

 努めて冷静に別れの挨拶をして、部屋に戻ってくる。

「お帰り、誠子……うお」

 大福のスマホがものすごいメール着信音に包まれた。ピロン!ピロン!ピロン!

「……もしかして、クロ?」

「その通りだ」

 内容はたいしたことがないのだろう、大福は画面を見るように言うので覗き見ると


ぎゃ どいうこと やば ハム! おればか どうしたら うぎゃ ひい このやろ どう ギャー

 ものすごい滝のように流れていく。きっと隣でテンパっているんだろうな。意地悪く、大福は文字を入力する。


 パンツは履いてくださいね


 そういえばさっき猫になったとき、服が全部脱げたからパンツも脱げてたんだ……。一応服はたたんでおきました……白と紺のストライプのソレはズボンの中に入れたままにしたけど……。


 ハムやろおおおおおおお!!! はいたよ


「ぶはっ!」

 律儀なクロに思わず吹き出してしまった。

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