25 / 75
25 はいたよ
しおりを挟む
「うなぁーん……」
「起きた」
「起きたな」
しばらくクロ……猫村さんはぼーっとしていたが、ハッとしてきょろきょろ辺りを見回す。
「え?あ?へ?あれ?俺?え?」
うん、ダメなヤツだ。ここはひとつ
「にゃおにゅ~る、食う?」
「食う」
食うんだ。
猫村さんが起きたのでとりあえずテレビをつけ、私は弁当を開けた。付け合わせのサラダからではなく、茹でたブロッコリーを冷蔵庫から出してきて大福に手渡す。
「ブロッコリーは美味いものだな」
「ああ、上のもしゃもしゃは花らしい」
「花を食うなど、なかなか愛いではないか」
猫村さんは猫のままなのに、にゃおにゅ~るの封を上手に切って、ちゅるちゅる吸い付いている。
「猫村さん、鮭おにぎりならあるが。何が好物か分からなかったから買ってこなかった」
「ん?ああ、くれ」
手渡すと上手にフィルムを開け、やっぱり両手でおにぎりをもって食べている。さすが猫又。しばらくみんなの咀嚼音とテレビの音だけが聞こえる。弁当はまずくはないが美味くはない。やはり少しは手作りするべきだろか?
「……帰る……というか、帰らせていただきます……」
「うん……そうだな」
何かを悟りきった顔で猫村さんが言うもんで、部屋のドアを開け、脱ぎ散らかした猫村さんの服のポケットから鍵をだし、202号室の部屋の扉を開ける。服を全部猫村さんの玄関に置き
「では」
「では」
努めて冷静に別れの挨拶をして、部屋に戻ってくる。
「お帰り、誠子……うお」
大福のスマホがものすごいメール着信音に包まれた。ピロン!ピロン!ピロン!
「……もしかして、クロ?」
「その通りだ」
内容はたいしたことがないのだろう、大福は画面を見るように言うので覗き見ると
ぎゃ どいうこと やば ハム! おればか どうしたら うぎゃ ひい このやろ どう ギャー
ものすごい滝のように流れていく。きっと隣でテンパっているんだろうな。意地悪く、大福は文字を入力する。
パンツは履いてくださいね
そういえばさっき猫になったとき、服が全部脱げたからパンツも脱げてたんだ……。一応服はたたんでおきました……白と紺のストライプのソレはズボンの中に入れたままにしたけど……。
ハムやろおおおおおおお!!! はいたよ
「ぶはっ!」
律儀なクロに思わず吹き出してしまった。
「起きた」
「起きたな」
しばらくクロ……猫村さんはぼーっとしていたが、ハッとしてきょろきょろ辺りを見回す。
「え?あ?へ?あれ?俺?え?」
うん、ダメなヤツだ。ここはひとつ
「にゃおにゅ~る、食う?」
「食う」
食うんだ。
猫村さんが起きたのでとりあえずテレビをつけ、私は弁当を開けた。付け合わせのサラダからではなく、茹でたブロッコリーを冷蔵庫から出してきて大福に手渡す。
「ブロッコリーは美味いものだな」
「ああ、上のもしゃもしゃは花らしい」
「花を食うなど、なかなか愛いではないか」
猫村さんは猫のままなのに、にゃおにゅ~るの封を上手に切って、ちゅるちゅる吸い付いている。
「猫村さん、鮭おにぎりならあるが。何が好物か分からなかったから買ってこなかった」
「ん?ああ、くれ」
手渡すと上手にフィルムを開け、やっぱり両手でおにぎりをもって食べている。さすが猫又。しばらくみんなの咀嚼音とテレビの音だけが聞こえる。弁当はまずくはないが美味くはない。やはり少しは手作りするべきだろか?
「……帰る……というか、帰らせていただきます……」
「うん……そうだな」
何かを悟りきった顔で猫村さんが言うもんで、部屋のドアを開け、脱ぎ散らかした猫村さんの服のポケットから鍵をだし、202号室の部屋の扉を開ける。服を全部猫村さんの玄関に置き
「では」
「では」
努めて冷静に別れの挨拶をして、部屋に戻ってくる。
「お帰り、誠子……うお」
大福のスマホがものすごいメール着信音に包まれた。ピロン!ピロン!ピロン!
「……もしかして、クロ?」
「その通りだ」
内容はたいしたことがないのだろう、大福は画面を見るように言うので覗き見ると
ぎゃ どいうこと やば ハム! おればか どうしたら うぎゃ ひい このやろ どう ギャー
ものすごい滝のように流れていく。きっと隣でテンパっているんだろうな。意地悪く、大福は文字を入力する。
パンツは履いてくださいね
そういえばさっき猫になったとき、服が全部脱げたからパンツも脱げてたんだ……。一応服はたたんでおきました……白と紺のストライプのソレはズボンの中に入れたままにしたけど……。
ハムやろおおおおおおお!!! はいたよ
「ぶはっ!」
律儀なクロに思わず吹き出してしまった。
1
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説
『遺産相続人』〜『猫たちの時間』7〜
segakiyui
キャラ文芸
俺は滝志郎。人に言わせれば『厄介事吸引器』。たまたま助けた爺さんは大富豪、遺産相続人として滝を指名する。出かけた滝を待っていたのは幽霊、音量、魑魅魍魎。舞うのは命、散るのはくれない、引き裂かれて行く人の絆。ったく人間てのは化け物よりタチが悪い。愛が絡めばなおのこと。おい、周一郎、早いとこ逃げ出そうぜ! 山村を舞台に展開する『猫たちの時間』シリーズ7。
大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。
だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。
蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。
実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
落ちこぼれの半龍娘
乃南羽緒
ファンタジー
龍神の父と人間の母をもついまどきの女の子、天沢水緒。
古の世に倣い、15歳を成人とする龍神の掟にしたがって、水緒は龍のはみ出しもの──野良龍にならぬよう、修行をすることに。
動物眷属のウサギ、オオカミ、サル、タヌキ、使役龍の阿龍吽龍とともに、水緒が龍として、人として成長していく青春物語。
そのなかで蠢く何者かの思惑に、水緒は翻弄されていく。
和風現代ファンタジー×ラブコメ物語。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
Aコードコンチェルト
ツヅラ
キャラ文芸
能力者教育機関“ヴェーベ”の、北東教育機関の最上級生であるA級能力者チームは、とにもかくに、A級能力者の使命である、怪人を倒すことにやる気がなかった。
おかげで、貢献度はぶっちぎりの最下位。
その日も、怪人が現れたが、いつも通り、やる気もなく出撃する予定もなかった。だが、顧問のクビがかかっているという話を聞き、慌てるように、怪人を倒しに向かった。そして、増殖する新種の怪人と退治することになった。
その日、ヴェーベを訪れていたルーチェとその父、ルシファエラは、怪人に襲われ、ガレキの下敷きとなった。
二人は、近くにいた能力者に助けられ、一命を取り留めたルシファエラは、その時、助けてもらった能力者に、ルーチェと、あるデータを帝国本土まで無事に運ぶことを依頼することにした。
初めて帝国本土にやってきた能力者たちは、そこである陰謀と出会うのだった。
※小説家になろうにアップしたものの編集版です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる