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 憂鬱な月曜日が始まる。

「私は会社に行くが、大丈夫か?大福よ」

「何も問題ないぞ、誠子よ。私も在宅で仕事だ。お互いに頑張ろう。何かあればラインする」

「分かった。行ってきます」

 私は鍵をかけ、会社に出かける。行ってきます、そう言って会社に行くのは何年振りだろう。なんとなく心地のいいものだ。
 今日は何を買って帰ろうか?家を出た瞬間に帰る事を考えてしまった!不覚!


 会社の私はとにかく不可がない程度に働いている。地味に、地味に。電話が無ければ口を開く事もない事務員だ。

「はい、お電話ありがとうございます。株式会社⚪︎×でございます」

 はて、大福も仕事をしているんだろうか?お客様の文句を聞くコールセンターみたいなもんだろ。
 人の文句ばかり聞くのは大変な事だ。労ってやらねばなぁ。

「朝比奈さん、何かいい事あった?」

 同じ事務員の佐倉美智子が声をかけてきた。地味な私と違い、性格も良くて可愛くて明るい。そんな優良物件だから、もうすぐ結婚が決まっている。

「ああ、ハムスターを飼ったんだ」

 別に大福はみんなにみせるなとはいわなかったしな。こちらを向いて少しドヤ顔でひまわりの種を手に持っている大福の全身画像だ。

「うわーー!可愛いですね!真っ白?お餅みたい!」

「うん、名前は大福。良い声で喋るんだよ」

 佐倉さんはあはっ!と笑った。

「良い声ですか?ハムスターってあまり鳴かないって聞きましたけど、大福ちゃんはおしゃべりなんですね!」

 彼女の中では小さくちちっ、とかキュッと鳴く姿が想像されているのだろうが、うちの大福は

「お帰り、誠子。今日もお疲れ様」
  
 少し低くて張りのある声で、残業1時間こなしてきた私の帰りを迎えてくれる。

「ただいま、大福。大福も仕事してたんだろ?お疲れ様」

 ああ、でも大した事はないぞ、とスマホの上から労ってくれた。見れば大福のスマホの充電は赤になっているから、かなりコールセンターの仕事が入ったんだろうな。お疲れさん。

「確か、予備のライトニングが……ああ、あったあった。大福、充電しないとまずいだろ?」

「すまないな、誠子。何から何まで」

 構わんよ、大福。私はお弁当の袋を取り出す。

「まあ飯にしようや、大福。りんごも買って来たんだ。どうだ?」

 大福はソワッとする。ほう?お前、りんご好きなのか?

「おお……誠子、良く私の好物を知っていたな。何よりの馳走だ」

 大福は自分のほっぺたを両手でくりくりとマッサージする。可愛いがなんだ?そこにいっぱいりんごでも詰めるための準備運動か??

「そうだ、職場の若い子が大福が可愛いと言っていたよ。また写真撮って良いか?」

 大福はきょとんとしてから

「私の姿で良ければいくらでも」

 と、ほっぺたマッサージをしながら答えた。

うん、まずはりんごでも切ろうか。

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