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3 フリック速くね? 慣れだ、慣れ

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「誠子、誠子。夕飯食べないと」

「んあ?」

 ふわふわがほっぺたにくっ付いていた。

「あー大福。起こしてくれてありがとうな。飯、飯。大福も腹減った?」

「うむ」

 私は買ってきた弁当を食べ、大福も餌ときゅうりを食べた。

「大福は声が良いな。流石コールセンター」

「ん?そうか?」

「うん、聞いてて心地良い。さっきはそれで寝てしまったよ」

「はは、ありがとう。なあ誠子。物は相談なんだが、しばらくここに置いてくれないか?金が振り込まれたら出て行くから」

 私はびっくりした。

「おいおい、まさか今日買ったベッドを一回使っただけで捨てさせるつもりだったのか?!ひまわりの種など、徳用のいっぱい入ってるの買ったんだぞ?!食い切るまでいて貰わにゃ困る」

 大福は小さい目を多分いっぱいに見開いて

「ありがとう誠子。お前の少しズレてる感性、嬉しいよ」

「ディスってんの?マグカップに詰めて身動き取れなくするよ?」

「すまんかった」

 こうして私と大福の同居が始まった。

「あ、大福、ライン交換しよう。QR出して」

「ああ、これだ」

 ラインも交換した。そして少し不安になった。

「なあ、大福。お前文字入力できるのか?」

 大福の小さな体で、ラインを打つときにスマホの上を行ったり来たり、手を伸ばしたり縮めたりものすごい重労働を強いてしまうんじゃないか?

「ん?普通程度にはできるぞ。ホラ、ライン送った」

 ピロン、私のスマホが鳴り、大福からのメッセージが届いた「よろしくな」そしてスタンプもついている。ハムスターの可愛いヤツだ。

「直接電話してくるのもイヤな奴もいるらしくてな。ラインによる愚痴聞きもやってるんだ」

 す、すっすっ。滑らかに操作する大福。

「フリックはやくね?」

「慣れだ、慣れ。使ってりゃ早くなるだろう?」

 スマホの上に乗って操作する大福は、可愛いと思った。

「なんていうかペットの写真を撮る気持ちわかる気がする」

「ん?私の写真でも撮るのか?良いぞ、ハムスターらしいポーズ取ってやるぞ?どうだ?」

 大福は良い声で答えながら両手でひまわりの種を持った。

「あはは!ハムスターっぽいな、大福。よし、一枚撮ってやろう」

「かっこよく頼むぞ」

 パシャ、と撮影の合成音がして、見事に真っ白な大福のハムスター写真が私のスマホに記録された。

「はは、何気にカメラ使ったの初めてかもな」

「そうなのか?恋人の写真とか撮らないのか?誠子」

 んなもんいねーよ、大福。

「休みの日、昼まで寝ていて起きたらハムスターをポケットに詰めてホームセンターに行って、帰りにコンビニで弁当買って来る女に彼氏がいる訳ないだろ?大福よ」

「すまんかった」

 分かれば良いんだぜ。

「大福、カラカラ車、乗らないのか」

「疲れるだろ」

 今度は私が謝る番だった。

「そうだな、すまんかった」

 その後、大福と一緒にテレビを見て寝た。大福も私と一緒の時はあまり仕事をしていないようだ。

「緊急の時は対応させてもらうけどな」

「仕事ってそういうのあるよなぁ」

 大福との生活は心地良かった。
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