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超えて

15 かの地へ

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 近く戦争が起こる事と、帝国に向かう事を伝えてチェルンの村をでた。

「もし、誰かに私のことを聞かれたら、帝国へ向かったと言って欲しい」

「良いんですか…?」

「良いよ。人を隠すなら人の中に。帝国ならいっぱい人が居るからね」

 この村と違って。と笑うと、確かにそうですね、と答える。この村で私は目立ちすぎる。

「お気をつけて…!」

「ああ、ありがとう」

 またな、とは言わなかった。仲良くなった子供達とも会わないように夜更に出発した。
 村を出てすぐに、暗闇に溶けた。アサシンのスキルの一つで、よっぽど高レベルでないと見つけられない。
 念には念をいれ、帝国の北の端を通って進む。途中で魔獣を狩ったりしながら進んだので、帝都に着く頃には冒険者のクラスはAまで上がっていた。

 レベルですか?だいぶ昔から上限カンストです…。廃プレイどうもどうも。


 帝都は大きい、鈴子の部分が感嘆の声を上げた。そびえる城の尖塔。大教会の鐘。
 そして、帝都は汚い。下町のその下のスラム街、虐げられる奴隷たち。

それでも帝都は美しい。一攫千金を夢見る者たちの、希望と野望がこの町を彩る。

「さて、のんびりするのはここまでです。ここからは気を引き締めていかないと」

 まずは冒険者ギルドに向かおう。そして、私はこの魔都をどう転がそうとしているのか。




 冒険者ギルドで目立つのは簡単だ。ある程度の容姿と、腕があればすぐだ。

 課金パワーで作り上げた容姿はすぐに人目を引く。オラオラー銀シャリさまだぞー道を開けぇーー!
 人にどう取られるか、歩き方一つも計算してある。これは宰相時代に身につけたものだ。みくびらてはいけない立場だったから。

「なあ、あんた どっかで会ったことない?」

 安い口説き文句は無視をする。

「お高く止まってんじゃねーよ!」

醜い嫉妬は捻りあげる。

 すると、どうでしょう!人身掌握の匠の技です。

「ギルドに銀月がいる」

 ついでに顔を隠して訳ありげに振る舞えば、すぐに噂は広まった。

「ギルドにたまに出入りする銀月は、訳ありの貴人だ」と。

 ちょっと 髪の色がシルバーだと月と例えたがるね!もっとひねってはどうだろうか?

 勿論 私の推しは銀シャリなのだが、お寿司文化がないのが悔しい限りだ。


 撒き餌に大物が食いつくのをじっくりと待つ。騎士団とか、3人いる王子辺りが釣れるのが楽でいい。
 1番は第2王子なんだよな。第4王子は面倒だから出てきて欲しくないな。

「リィン・ファラン!お前はなぜ兄上の所にいない!」

 面倒くさいやつが出てきちゃった。ハズレくじ係のチェルンを村に置いてきたのは失敗だったな。

「どなたかしりませんが、私はただのリィンです。誰かと間違えてませんか?」

「黙れ!他は騙せても私は騙されんぞ!リィン・ファラン!」

「だから違いますって」

 面倒くさい。とても面倒くさい。ソレルとそっくりな顔で噛み付いてくる帝国第4王子はとても面倒くさい。
 違うって言ってるんだから、納得して欲しいんだが、この御仁もあんまり頭が良くない。正しく、ソレルの弟だ。

 第4王子ルーン。父は皇帝、母は側妃リュンヌ。追放された第3王子ソレルの後を継いで王位継承権3位の駄々っ子。
 今でも兄のことを気にかけている少々粘着気質。ソレルが帝国を追放される前はとても仲が良かったらしい。

 ついでに人の話は聞かない。

「うるさい!うるさい!リィン・ファラン‼︎」

 困ったお子様は私の腕を掴む。

「お前は!俺と一緒にこい!」

 話を聞かないお子様に、話をしてもしょうがない。私は

「やめてください、離してください」

 と、5マネーくらい投げてもらえそうな三文芝居をして、ルーン王子の馬車に詰め込まれた。
 面倒な事になったなぁ。早くしないといけないのに。

 ルーン王子は私をどこに連れて行くつもりなんだろう?


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