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101 暗のお姫?様
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「フィフナーの王太子殿下の婚約者様の話を聞いたか?」
「聞いた聞いた!なんでうちのはあんなので向こうはあんなに良いんだ?!」
そんな頭に来る噂が流れて来た。メイドを呼び出して聞き出すとフィフナーのイオリア様の婚約者の話で、大体の感じはこうだったーーーー。
「ううっ……この携帯食料の溶かしたやつめちゃくちゃまずい……」
「でも、なんとか今日も生き抜ける。王太子殿下様々だ」
イオリアが見つけた方法、一人分の携帯食料をお湯で溶かして分け与える……元々、激しく体を動かす冒険者用に作られて栄養が詰まっている携帯食料だから、できる事だ。
「女神様の怒りが解けるまで耐えて欲しい」
そう言いながら自ら雨の中、兵士や騎士達に混じって携帯食料をお湯で溶いて回っている。
そしてーーー
「失礼しますわ。私の愛をひとすくい……」
婚約者のエリーゼがピンクのジャムを鍋にいれると、なんと鍋の携帯食料が「食える味」になるという。
「このジャムは女神様からの祝福が詰まった物ですから」
大きな鍋に小さなスプーンで一つだけ入れるのに味が全く変わる。ある時はとうもろこしスープ、ある時は甘いミルクスープとなるらしい。
「うめぇ!これなら食える」
「良かったですわ。実はこれ、可愛い弟が教えてくれまして」
気軽に話しかけて励ましてくれる王太子と婚約者は国民の人気も鰻登りで近々王が交代するらしいと噂もある。
「フィフナーはきっともうすぐ雨も止む。女神様の怒りも解けるだろう。それまで持ちこたえてくれ」
「分かりました……王太子様ぁ」
メイド達の話で私は閃いた。ピンクのジャムってお母様の持っていたアレじゃない!アレを携帯食料の鍋に入れて回れば私の人気も上がるってことよ!だから私は侍女達に命令したの。
「街を回って携帯食料をありったけ集めて来なさい!そしてお母様からジャムを奪い取るのよ!!」
「そ、そんなことできません」
「やるのよ!民の為ですもの、嫌ならお父様にいって罰してもらうんだから!」
お母様は散々ゴネたらしいけれど、ジャムの瓶を出して寄越した、なんと50個近くあり、どれだけ隠していたのか呆れてしまったわ。そしてワール商会とかいう所を脅して携帯食料を国へ納めさせる。
「全部持っていくなんてやめてください!これは皆に配る為に我が商会で確保しているものです!これを持っていかれたら我々が死んでしまう!」
「しかし……国からの命令です」
「クソッ……なんて国だ、やってられん」
禿げ頭の商会長とかいう人物が顔を真っ赤にして怒っていたらしいけれど、国の一大事にそんなことを言うなんて反逆罪で逮捕した方がいいんじゃないかしら?
でもこれで私の人気も回復するし良いこと尽くめだわ!
そう思ったのに、現実は上手く行かなかった……。
「きゃああっ!臭い、臭いーー!」
「うわっなんだこの悪臭!」
「携帯食料の鍋が腐ってる!」
「こんなの食えねえよ!こんな腐った食えねえものを配るのか!俺達を馬鹿にしているのかっ」
知らない、知らないわよ!!だって私がジャムを掬った時、確かにピンク色のいい匂いがしてたもの!それなのに、鍋に垂らした途端、変な色と匂いがしてきた。
「うそ……え?」
「あいつだ!あいつが鍋に毒を入れたんだ」
「わ、私は違う、そんなことしてない……だってこれはジャムだもの!これを入れれば人気者になれるジャムよ!?」
「嘘だ、手に持っている瓶を見ろ!毒々しいし臭い!あいつがやったんだ!!」
さっきまできれいなピンクだったのにジャムはあの時みた臭いドロドロした緑色の何かに変化していた……。私のせいじゃない、私のせいじゃないのにーーー!私は暴動が起きた民の中から命からがら城へ戻ってきた……。どうしてこんなことになったの、私は王女なのに!
「ってぇことがあったみたいですよ」
「女神様って容赦ないねえ~」
「ま、でもあの女は自業自得って気もしますけどね。真に民のことを思ってやったのなら、腐ることもなかったんじゃないかなって思います」
「あ、同意~~」
この国でジャムをお鍋に入れて美味しくできる人は……オル団長の母上とかレイ殿の母上くらいじゃないのかなあ?
「聞いた聞いた!なんでうちのはあんなので向こうはあんなに良いんだ?!」
そんな頭に来る噂が流れて来た。メイドを呼び出して聞き出すとフィフナーのイオリア様の婚約者の話で、大体の感じはこうだったーーーー。
「ううっ……この携帯食料の溶かしたやつめちゃくちゃまずい……」
「でも、なんとか今日も生き抜ける。王太子殿下様々だ」
イオリアが見つけた方法、一人分の携帯食料をお湯で溶かして分け与える……元々、激しく体を動かす冒険者用に作られて栄養が詰まっている携帯食料だから、できる事だ。
「女神様の怒りが解けるまで耐えて欲しい」
そう言いながら自ら雨の中、兵士や騎士達に混じって携帯食料をお湯で溶いて回っている。
そしてーーー
「失礼しますわ。私の愛をひとすくい……」
婚約者のエリーゼがピンクのジャムを鍋にいれると、なんと鍋の携帯食料が「食える味」になるという。
「このジャムは女神様からの祝福が詰まった物ですから」
大きな鍋に小さなスプーンで一つだけ入れるのに味が全く変わる。ある時はとうもろこしスープ、ある時は甘いミルクスープとなるらしい。
「うめぇ!これなら食える」
「良かったですわ。実はこれ、可愛い弟が教えてくれまして」
気軽に話しかけて励ましてくれる王太子と婚約者は国民の人気も鰻登りで近々王が交代するらしいと噂もある。
「フィフナーはきっともうすぐ雨も止む。女神様の怒りも解けるだろう。それまで持ちこたえてくれ」
「分かりました……王太子様ぁ」
メイド達の話で私は閃いた。ピンクのジャムってお母様の持っていたアレじゃない!アレを携帯食料の鍋に入れて回れば私の人気も上がるってことよ!だから私は侍女達に命令したの。
「街を回って携帯食料をありったけ集めて来なさい!そしてお母様からジャムを奪い取るのよ!!」
「そ、そんなことできません」
「やるのよ!民の為ですもの、嫌ならお父様にいって罰してもらうんだから!」
お母様は散々ゴネたらしいけれど、ジャムの瓶を出して寄越した、なんと50個近くあり、どれだけ隠していたのか呆れてしまったわ。そしてワール商会とかいう所を脅して携帯食料を国へ納めさせる。
「全部持っていくなんてやめてください!これは皆に配る為に我が商会で確保しているものです!これを持っていかれたら我々が死んでしまう!」
「しかし……国からの命令です」
「クソッ……なんて国だ、やってられん」
禿げ頭の商会長とかいう人物が顔を真っ赤にして怒っていたらしいけれど、国の一大事にそんなことを言うなんて反逆罪で逮捕した方がいいんじゃないかしら?
でもこれで私の人気も回復するし良いこと尽くめだわ!
そう思ったのに、現実は上手く行かなかった……。
「きゃああっ!臭い、臭いーー!」
「うわっなんだこの悪臭!」
「携帯食料の鍋が腐ってる!」
「こんなの食えねえよ!こんな腐った食えねえものを配るのか!俺達を馬鹿にしているのかっ」
知らない、知らないわよ!!だって私がジャムを掬った時、確かにピンク色のいい匂いがしてたもの!それなのに、鍋に垂らした途端、変な色と匂いがしてきた。
「うそ……え?」
「あいつだ!あいつが鍋に毒を入れたんだ」
「わ、私は違う、そんなことしてない……だってこれはジャムだもの!これを入れれば人気者になれるジャムよ!?」
「嘘だ、手に持っている瓶を見ろ!毒々しいし臭い!あいつがやったんだ!!」
さっきまできれいなピンクだったのにジャムはあの時みた臭いドロドロした緑色の何かに変化していた……。私のせいじゃない、私のせいじゃないのにーーー!私は暴動が起きた民の中から命からがら城へ戻ってきた……。どうしてこんなことになったの、私は王女なのに!
「ってぇことがあったみたいですよ」
「女神様って容赦ないねえ~」
「ま、でもあの女は自業自得って気もしますけどね。真に民のことを思ってやったのなら、腐ることもなかったんじゃないかなって思います」
「あ、同意~~」
この国でジャムをお鍋に入れて美味しくできる人は……オル団長の母上とかレイ殿の母上くらいじゃないのかなあ?
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