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99 暗のお姫?様

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 だから!だから声をかけてあげたのに!

「スカーレット……どうしてそんなに太ってしもうたのじゃ?」
「お父様!そんなことは今はどうでもいいの、こんなの本気出せばすぐ痩せるんだから!」
「そうか、さすがじゃのう。スカーレット」
「それよりオルフェア達のことよ!」

 ついてすぐにお父様にオルフェア達の騎士復帰をお願いしたけれど、渋い返事しか来ない。

「いや、彼らは自らの意思で辞めていったんじゃ。我らも引き留めだけれど、フィフナーの王子に付き従うと」
「そんな馬鹿な話はないでしょう?!彼らは私のことを愛していたのよ?!」
「な、なんと騎士のくせに王女であるスカーレットに恋慕を?!」
「そうよ!見れば分かるじゃないっ」
「そ、そうかのう……フィフナーの王子を愛してしまったと騎士を辞めたんじゃが、スカーレットのことだったかのう……?」
「見て分かんないの?!お父様は恋愛に疎いから!ねぇお母様」
「違うと思うわ、スカーレット。早くその醜い体を元に戻しなさい。そしてジャムは渡さないわよ」

 お母様は何か小瓶に夢中でずっと握りしめているし、話も通じなかった。


 そしてあの結婚式だ。レイクリフとオルフェアは意に染まぬ結婚から私を救いに来てくれた!のに、連れて行く相手を間違えたのよ!

「リュキ!」「レイ殿~」
「マシェ、こちらへ」「オル殿ぉちゃんと歩けますって」

 二人とも間違えて連れて行ったのに、国は総出で私を悪者にした!意味が分からないわ!
 だって、私は私を愛する人達を救いたかっただけなのよ?それなのに何にも知らない国民はこぞって私に後ろ指を指す。

「あー!運命の恋人を引き裂いた悪のでぶっちょ王女だ!」
「わがまま王女だ、女神様の怒りを買った悪の王女!」

 わ、私は何もしていない!

「にしても騎士様とお姫様、素敵だったねぇ」
「キラキラしてて良い匂いだったー!お花も振ってたし。あの時はお日様もさしてた!」
「あのお花、食べれるんだぜ!すんごく美味しいし、お腹痛いのとか頭痛いのとか治るんだ」
「流石、女神様の祝福は違うわねえ」

 ど、どういうこと?!あいつらまさか街を練り歩いて行ったの?!

「可愛かったわよねぇ。うふふ」
「ちょっと恥ずかしがっていた所も何とも……」
「あと、甘い飴くれた!」

 モノで民を釣るとは卑怯な!でもどんなに抗議しても全ての民は私の敵だった。民だけじゃない、貴族まで私に冷たく当たる。

「何と言うことをしてくれたんだ。本当に空から雨が去ることがないではないか!」
「宰相殿!あなたは女神の愛し子を何と心得る!」

 私とフィフナーの無能王子の結婚に反対を唱えず静観した貴族どもがこれ見よがしに攻撃を仕掛けてくるの!

「ならば、ならば最初から反対なされば……」
「そなたと王と王女の独断で決めたようなものではないか!」
「ああ!せっかくの産業も全部取り止めになったぞ!ワール商会も店を閉めておる!あの商会がフィフナー王子達の腰巾着なのは有名な話ではないか!」

 そして全員こちらを睨む。

「余計な事を」
「末代までの恥晒し」
「聞きましたか?街の吟遊詩人達の歌を!嘆かわしい」

 わ、私が何をしたって言うのよ!何も、何も悪い事をしていないわよ!

 お父様に会っても唸るしかしなくなったので、お母様にお会いする事にした。私は悪くないわよね?!

「スカーレット。まだ痩せてないの?あなた、そんな見た目じゃどこの後妻にも行けないわよ。本当にあの人がわがままばかり許すから、民達にも嫌われるし、どうする気?」
「お、お母様?」

 お母様は私の方を見る事なく、そんな事を言い放った。手に持った小さな小瓶をうっとり眺めつつ、酷い物言いだわ!

「わ、私は私には騎士達がおります!私は騎士達から慕われておりますから!」
「そんな事ないわよね。わがままで騎士の才能と出世の道を潰すあなたは全員から嫌われているわよ?オルフェアとレイクリフの騎士団がどれだけ辛酸を舐めたか、あなたは知らないんだっけ。貴女が彼らを解雇した時、涙を流してまで喜んでいたもの」
「そ、そんな馬鹿な事ありません!だって皆、私のことを愛して……」

 その時やっとお母様は私の方を見た。そして最近浴びた視線の中で最も冷たいものが突き刺さる。

「オルフェアとレイクリフが愛しているのは双子王子でしょう?このルゼンに一刻の富とこのジャムをもたらしたのも双子王子。あなたは悪評しか持ってこない。我が子ながら情けないわ。やっぱりあの人に任せたのがいけなかったのね、失敗したわ」
 
 お母様の言葉がグサグサと突き刺さる。失敗?!いくら母親といえど言っていいことと悪い事があるわ!
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