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85 兄上とエリーゼちゃんが来たぞ
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「まあ……リュキとマシェをよろしくお願い致します」
「か、顔をお上げください、王子妃殿下」
「しーっ!オル団長、それは内緒でござる!」
「イオ兄上とエリーゼちゃんはお忍びでござるっ!」
いやしかし、といいながら膝を床につけて首を垂れようとするオル団長とレイ殿を止めるのが大変だった。今日はお忍びでイオリア兄上と兄上の奥様のエリーゼちゃんをオル団長とレイ殿に会わせたのだ。
「スチッピーフンガー!」
「リュキ、マシェ。確かにお前達は小さな頃から何か不思議な能力を隠しているようだったが、まさかこんなことまでできたのか」
「ま、まあ色々でござるよ。そうでもなきゃあんなにお金を稼げるわけないじゃないですか」
「少し腑に落ちたぞ……」
空間を裂いて違う場所にラクラク移動なんて確かにチート能力であるし。そしてあの酒場の二階の宿屋の部屋にお二人を連れて行ったらオル団長もレイ殿も畏まっちゃって大変だった。
「リュキとマシェがあまりに気安いのでつい緩く接してしまいますが……イオ様とエリーゼ様は確かに威厳があります」
「な、なんか酷いでござるよーオルどのぉー!」
マシェがぽかぽかと拳を振り上げてオル団長にじゃれつきに行っている。今日も仲良しで良きかな良きかな。
「リュキとマシェはこの人達が良いのね?」
「そうでござるよ、エリーゼちゃん」
エリーゼちゃんはうら若き女性なのに、昔からあまり怖くなかった。多分今思えばエリーゼちゃんは兄上のぞっこんで兄上一筋で頭を打って記憶喪失になったとしても私やマシェのことはきっと好きにならずに、兄上に向かって突撃していくような人だったからだと思う。
「良く似合っているわ。まるで女神様がそうなるように設えたよう……絶対幸せになるのよ、リュキ、マシェ」
「この国の今後のことは私とエリーゼでなんとかするが……すまない、乗り切ってくれ」
「大丈夫、オル殿が一緒ならなんとかなるでござるよ」
マシェはオル団長の腕にぶら下がりながら笑っている。細マッチョさんなのでそんな芸当もできるんだ……レ、レイ殿だってできるもんねっ!
「私もレイ殿がいてくれたら大丈夫でござるよ、兄上」
「そうか……本当に強くなったな、リュキ、マシェ」
きっと兄上からみたら我々は女の子に強く言われてひっくり返り、ずっと泣いていた5歳の頃から成長していなかったんだろうな。それがやっと兄上の中で大人の我々として認識されたのかもしれない。
「さて、エリーゼちゃんにはお土産があるからねーいっぱい持っていきなよ」
「なんかねー薔薇ジャム。今まで腐ったりしなかったのにぜーんぶ腐っちゃったんだって。ワール氏から驚いて手紙が来てた」
そりゃあ女神様の祝福がてんこ盛りのお花で作ってるんだ。我々に冷たくした国なんて祝福もしたくなくなるんだろうね。一応約束した分くらいは残ったらしいけれど、新規で手に入れることはできなくなったらしい。でも私とマシェが荷物で持ってきた分はきれいな色だし腐ってもいないんだよね。
「あら、綺麗……ありがとうリュキ、マシェ。大事に使うわ」
「絶対にアイラ妃には見せないようにお願いしますぞ」
「できれば正妃様にも内緒でおたのもうします。知られると何かと追及されてそうでヤでござる」
「分かったわ」
エリーゼちゃんなら何かと安心できるから、大丈夫だろう。きっと中毒みたいになって「ジャムよこせージャムよこせー」って連呼したりしないはずだ。
「か、顔をお上げください、王子妃殿下」
「しーっ!オル団長、それは内緒でござる!」
「イオ兄上とエリーゼちゃんはお忍びでござるっ!」
いやしかし、といいながら膝を床につけて首を垂れようとするオル団長とレイ殿を止めるのが大変だった。今日はお忍びでイオリア兄上と兄上の奥様のエリーゼちゃんをオル団長とレイ殿に会わせたのだ。
「スチッピーフンガー!」
「リュキ、マシェ。確かにお前達は小さな頃から何か不思議な能力を隠しているようだったが、まさかこんなことまでできたのか」
「ま、まあ色々でござるよ。そうでもなきゃあんなにお金を稼げるわけないじゃないですか」
「少し腑に落ちたぞ……」
空間を裂いて違う場所にラクラク移動なんて確かにチート能力であるし。そしてあの酒場の二階の宿屋の部屋にお二人を連れて行ったらオル団長もレイ殿も畏まっちゃって大変だった。
「リュキとマシェがあまりに気安いのでつい緩く接してしまいますが……イオ様とエリーゼ様は確かに威厳があります」
「な、なんか酷いでござるよーオルどのぉー!」
マシェがぽかぽかと拳を振り上げてオル団長にじゃれつきに行っている。今日も仲良しで良きかな良きかな。
「リュキとマシェはこの人達が良いのね?」
「そうでござるよ、エリーゼちゃん」
エリーゼちゃんはうら若き女性なのに、昔からあまり怖くなかった。多分今思えばエリーゼちゃんは兄上のぞっこんで兄上一筋で頭を打って記憶喪失になったとしても私やマシェのことはきっと好きにならずに、兄上に向かって突撃していくような人だったからだと思う。
「良く似合っているわ。まるで女神様がそうなるように設えたよう……絶対幸せになるのよ、リュキ、マシェ」
「この国の今後のことは私とエリーゼでなんとかするが……すまない、乗り切ってくれ」
「大丈夫、オル殿が一緒ならなんとかなるでござるよ」
マシェはオル団長の腕にぶら下がりながら笑っている。細マッチョさんなのでそんな芸当もできるんだ……レ、レイ殿だってできるもんねっ!
「私もレイ殿がいてくれたら大丈夫でござるよ、兄上」
「そうか……本当に強くなったな、リュキ、マシェ」
きっと兄上からみたら我々は女の子に強く言われてひっくり返り、ずっと泣いていた5歳の頃から成長していなかったんだろうな。それがやっと兄上の中で大人の我々として認識されたのかもしれない。
「さて、エリーゼちゃんにはお土産があるからねーいっぱい持っていきなよ」
「なんかねー薔薇ジャム。今まで腐ったりしなかったのにぜーんぶ腐っちゃったんだって。ワール氏から驚いて手紙が来てた」
そりゃあ女神様の祝福がてんこ盛りのお花で作ってるんだ。我々に冷たくした国なんて祝福もしたくなくなるんだろうね。一応約束した分くらいは残ったらしいけれど、新規で手に入れることはできなくなったらしい。でも私とマシェが荷物で持ってきた分はきれいな色だし腐ってもいないんだよね。
「あら、綺麗……ありがとうリュキ、マシェ。大事に使うわ」
「絶対にアイラ妃には見せないようにお願いしますぞ」
「できれば正妃様にも内緒でおたのもうします。知られると何かと追及されてそうでヤでござる」
「分かったわ」
エリーゼちゃんなら何かと安心できるから、大丈夫だろう。きっと中毒みたいになって「ジャムよこせージャムよこせー」って連呼したりしないはずだ。
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