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46 頬杖ついて待っている

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「いやー!もっと、もっとジャムをちょうだいっ!まるで春の花のエキスそのものを口に入れたような芳醇でまろやかな味わい!それでいて甘く瑞々しいフルーツのようでもあり、熟れに熟れた果実の熟成感もある!ああ!もっともっと!鍋いっぱいにあのジャムを食べさせてぇーーーー!」
「お、王妃様っ!落ち着かれて下さい!」
「ええい!誰か王妃様を取り押さえてくれ!頼む、たのむーー!」

 拙者達はそんなことはつゆ知らず、我が家の正門が一番よく見える窓からぼーっと外を見ていた。この窓から帰ってくる人を一番最初に見つけることができるから。

「リュキー、マシェー?ジェソガは? 」
「んー……みんなでやっててー……」
「ポテチできたってよー食おうぜ」
「んー先に食べててー……」

 仕方がないだろ?何にもやる気にならないんだから。レイ殿が帰って来たら王宮の様子を聞かなくちゃ。怒られたりしてなきゃ良いんだけど。もうちょっと特産物でも増やしてお金を稼いだ方が良いかなぁ?最近女神神殿の人が女神フィギュアを高値で買ってくれるって言ってたし、2.3個売ろうかなぁ。着色はレイ殿も手伝ってくれるかなぁ?意外と手先も器用だからバリ取りとか手伝ってくれるかもー……早く帰ってこないかなぁ……。

「あーあ。リュキもマシェも団長と副団長いないと魂抜けちゃって使い物になんねぇなぁ」
「ま、しゃあないよなぁ~始終ベッタリだしなぁ」

 ノースが抜けた東西南トリオが後ろで何か言ってるけど全然聞こえなかったり。

「早く結婚したら良いのに」
「そうだな。でも俺達が先だって。リュキもマシェもそういう所お人好しって言うか真面目って言うか」

 ナッシュとニールに苦笑いされてたらしいけど、全然見てなかった。

「お前らの結婚式で俺らに愛する人が見つかりますよーにっ!」
「頼むよー!女神様っ」
「お前らも友達呼べよ! 」

 トリオはナ行ペアに頭を下げていたみたいだけど。

「友達なんていませんよ……あの赤女のせいで友達無くしたのは皆一緒でしょ」
「そうなんだよなーー!フィーちゃんの友達に期待するしかねーなぁ」

 王女スカーレットの愚痴もこぼしていたみたいだけど、やっぱり聞こえてなくて。

「兄さん!今、エボニーの声が聞こえた!オル殿達帰って来たよ!」
「えっ!ほんと!?わーい!おかえりーおかえりー!!」

 まだ見えなかったけれど、確かに風に乗ってレイ殿の愛馬のゴルディの声も聞こえる。まだ姿が見えていないのに身を乗り出してパタパタと手を振ってしまった。

「あっ!こら、落ちる落ちる!」
「あぶねぇ、身を乗り出しすぎだよ二人ともっ」
「窓より玄関か厩へ行けよー」
「そうですよ、お迎えに行きましょう」

 それもそうだ!私とマシェはよく見える三階から一階の厩へ向かって走り出した。早く会いたい、どんな顔してくれるかな?

「ほんっとどんだけ好きなんだよ」
「あれで運命の人とのお付き合いの練習だとか言ってる意味わかんないよな?」

 その場に残っていた五人のため息なんてもう聞こえていない。

「リュキの運命の人は金髪で、マシェの運命の人は黒髪なんだそうで」
「はあ」
「だから団長も副団長も違うんだそうで」

 ここで五人は顔を見合わせたらしい。

「はあ……そうですか」

 何のことが私達には全くさっぱり見当も付かなかった。まあ、お迎えに行ったので五人の話なんて一欠片も聞いていなかったから分かんなくて当然なんだけど!



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