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4 隣の芝生は本当に青い レイクリフ視点

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「あー……少し……くらいなら何とかなります故」
「あ、ありがとうございます! 」

 我々はフィフナー国の優しさに触れて泣きそうだった。約束も何もかもなく突然やって来た怪しい真っ赤な集団をフィフナー国は追い返したりしなかった。

「そちらの王女様のご希望に添えるお答えはできないとは思いますが、数日滞在する申請許可はお受けいたします」
「ありがとうございます!」
「我が国もせっかくやって来た隣国の王女を門前払いするという所業はいかがと思いますしね……ご苦労様です」

 フィフナー国の方にもどうやら我が国の醜聞は広がっているらしく、温かい目で同情されてしまった。スカーレット様はこの馬鹿な奇行のせいで王女だというのに貰い手がないのは有名になりつつある。我々としてはどこかに片付けてしまいたいのだが、それも叶わず……。

「ほらぁ私が美しいから何の問題もなかったじゃない」

 おめえのお陰じゃないよ、何度口に出したかったか分からない言葉をググッと飲み込む。俺達はルゼン国の騎士なのだ、騎士としての礼節を守る心を失ってはならない。

 フィフナー王国の侍従殿はそれなりに見栄えのする館に案内してくれた。

「まあ!素敵」
「近々、我が国の王太子殿下の誕生日が控えておりますので、別のお客様もおいでになることがございます。そこのところはご容赦を」
「ええ、許します」

 我が国の阿呆王女は何様のつもりなのだ。しかし、フィフナー王国はわかっている、この阿呆女のご機嫌を取りつつ同席もあるよ、と釘を刺してくれた。非常にありがたい配慮に涙が出そう。

「申し訳ありませんが騎士様達は」
「お前達、城下町にお行き」
「……畏まりました」

 こんなに人数を泊められないということだ。だが、我々からしてみればこの真っ赤な馬鹿王女から離れられるなんて、なんてご褒美なのか……感激に打ち震える。

「ふん、そんなに心配する事はないわ。なにせここは王宮ですもの、警備は大丈夫でしょう? 」
「もちろんでございます、スカーレット第三王女様」

 俯いて笑顔を隠している我々を心配しているのかと勘違いしている王女、そして全部気がついたら上でにこやかに接してくれる侍従殿。最近のフィフナー王国は富み、余裕があると言う噂は本当らしかった。

 10年くらい前まで、我がルゼン国もこのフィフナー王国も同じ位貧しい国だった。昔の何かで手柄を上げ、国を興したは良いが、これと言って特産もない我らの国は衰えて行き、国も王族も貴族も名ばかりとなりつつあったのに、フィフナーは盛り返した。
 色々な産業が生まれ始めたのだ。色々な発明があったが、今でも浸透しているのが、四角くて小さな携帯食料だ。とにかく軽くて小さくて持ち運びが楽な上に栄養が手軽に取れて、腹持ちが良い。
 冒険者やら、傭兵、遠征に行く騎士などもは携帯しているし、私も5.6粒常備している。しかしあまり食べたい物ではない。とにかくパサパサしていて美味しくない。しかし、飢えて死ぬ事は無くなった……それくらい普及したこの携帯食料の発案元はフィフナー王国なのだ。
 今でも定期的にその売り上げの一部がこの国に納められる。それだけでもかなりの金額だろう。それにと例を挙げればいとまが無いほど、たくさんの品々をフィフナーは生み出していた。
 その下支えがあり、この国は富んでいるのだ、他国の押しかけ王女が滞在しても問題ないくらいの潤いはある、羨ましい事だ。

「我々の方で面倒を見ておきますので、騎士様達は交代で羽を伸ばして来て下さい」
「お気遣い痛み入ります! 」

 侍従殿は我々の疲れた顔を見て、こっそり耳打ちしてくれた。とてもありがたい申し出に一も二もなく飛びついてしまったのだが、我々はのちに後悔をする事になる。
 きっとこの人が良さそうな侍従殿は知らなかったし、純粋に我々を心配してくれたんだろう。しかし、我が国の馬鹿王女が秘密の手紙を受け取っていたなんて、誰も気が付かなかったのだ。
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