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番外編
2 進撃の双子
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「西と東の国に付け入る隙がある」
「うん、なんだろう。まるでしつらえたようだね。そしてとても都合が良い」
なんだろうか、イーライ達の人生のストーリーに元々あったイベントのように都合良く空いた国。この国から相当遠くでここの影響を受けることがないくらい離れていて……それでいてイーライ達の捜索網に引っかかった国。
「離れ離れになっちゃうけど……」
「ディエス様に会えなくなっちゃうけど……」
双子はなんとなくお互いの考えていることが共有できる。誰にも言っていないが、これは二人の大きな助けになる、そう思っている。
「離れていても僕達は一緒だ」
「うん」
そうして二人は決意する。
「父上を倒してディエス様を手に入れるにはこれしか方法がない!」
そうしてまだ少年と言われる年なのに、二人は自分で決め、東西に旅立ってしまった。皆が止めるのも聞かずに。
二人は良く考え、ついた国の女王と協力体制を取り、着実に領土を増やしてゆく。時には武力で、時には知力で少しづつ左右から帝国目指して大国を作り上げながら進撃を開始した。
「イーライ様とウィルフィルド様がもういなくなっちゃった……寂しい」
可愛い双子が旋風のように去って行き、悲しむディエスを慰める役目はラムだったし、ソレイユも早すぎる巣立ちに悲しんだが、アレッシュの婚約者との交流も必要で忙しくもあった。
「他国から嫁いでいらしたし、アレッシュは側妃を持たないつもりのようですし。変革となると私も手伝わなければ……私が勇気がなくて出来なかった変革を」
この国では正妃が政治に関わる事になりそうだ。それはどちらでもその時によって選び取れれば良い、そう言う事だ。
勿論、ラムシェーブルやディエスの大きな助力もあるだろうけど、ソレイユ派の力も強大なのだから。
それもあるし。
「私はディエス様よりソレイユ様派ですので!」
「あら、嬉しいわ」
喧嘩をしている訳でもないが、ソレイユとディエスは何かと比較対象される存在だ。昼と夜のように、一つの帝国を分け合うシンボルとして。ディエス本人はそんなつもりが全くなくても周りはそう思わない。
下手をすればそれぞれの派閥で戦争が起こっても不思議ではないのに、ディエスの人柄一つでそれが起こらない事をソレイユは良く知っている。
「当然だ!ソレイユ様が一番だ。俺なんて芋でも食ってりゃ良いんだよ!芋」
本気でそう言うし、正妃ソレイユを貶めようとする者は積極的に排除してくる。結局ディエス派はソレイユを邪険には出来ない。
「あの子の出来過ぎ具合にちょっとだけ嫉妬しちゃうわね」
ソレイユとて無能ではない。だからこそ、ディエスの心遣いや優しさに感動したし、それがいかに難しく実行しがたい事であるか分かっている。
それをいとも容易くやってのける人間性に少しだけ嫉妬してしまう。
「分かりますわ、お義母様。何というか完璧過ぎて腹が立ちます」
「分かってもらえるかしら?!ルータベーガちゃん」
「ええ。優しくてカッコいいし仕事も出来て一人しか愛していないなんて完璧過ぎて腹が立ちます!」
「そう、それなのよ!」
「そして私達にも凄く優しいし……ムカつきます!」
「分かってくれるのね!」
王妃と王太子妃の仲をある意味取り持っていた事もディエスは知らなかった。
「あー……ライとウィルが行っちゃったー。あいつら決めたら絶対やり遂げないと気が済まないからなぁ……そういう所、父上に似たよなぁ」
溜息をつきながらアレッシュは書類を書いている。これから双子が起こす問題を少しでも減らす為に手を打っていた。
「それにしても、最後にちゃんと相談に来ると思ってたのになぁ……来ないんだもん、止め損ねた」
はぁ、と更に大きな溜息をついてアレッシュは外を見た。中庭にはたくさんのあやめが今日も美しく揺れている。
お前達、ちゃんとディエス様に気持ちを聞いたのか、と。
「……可哀想だと思うが、あの二人には良い経験になるだろうさ。恋愛感情も理解しなきゃなぁ」
あの双子が大陸を制覇して、ラムシェーブルより広い国を治める立派な国王になっても、ディエスの愛は手に入らない事に気がついていないのだ。
「私達はラムシェーブルの子供だからあれだけ可愛がって貰えた、そういう事なんだよなぁ」
はぁ、もう一つ大きな溜息。アレッシュがその事実に気がついて絶望したのはいつ頃だったか。ディエスがアレッシュを可愛がってくれるのは、ラムシェーブルの息子だからであって、アレッシュを愛しているわけではない。
そこからきちんと婚約者と向き合った。付き合ってみるとルータベーガがとても話の合う令嬢でびっくりしたし、自分の視野の狭さに驚いた。
「気がついて泣いたら慰めてやらないとなぁ……なにせ私はお兄ちゃんだからなぁ」
誰かに言われて気がつくか、それとも自分達で気づくか。ディエスに直に言われたらダメージが大きいだろうなぁとまた溜息をつく。
「こればっかりはなあ」
双子の活躍より、いつその事実に気がつくかそちらの方が気になって仕方がないアレッシュだった。
「うん、なんだろう。まるでしつらえたようだね。そしてとても都合が良い」
なんだろうか、イーライ達の人生のストーリーに元々あったイベントのように都合良く空いた国。この国から相当遠くでここの影響を受けることがないくらい離れていて……それでいてイーライ達の捜索網に引っかかった国。
「離れ離れになっちゃうけど……」
「ディエス様に会えなくなっちゃうけど……」
双子はなんとなくお互いの考えていることが共有できる。誰にも言っていないが、これは二人の大きな助けになる、そう思っている。
「離れていても僕達は一緒だ」
「うん」
そうして二人は決意する。
「父上を倒してディエス様を手に入れるにはこれしか方法がない!」
そうしてまだ少年と言われる年なのに、二人は自分で決め、東西に旅立ってしまった。皆が止めるのも聞かずに。
二人は良く考え、ついた国の女王と協力体制を取り、着実に領土を増やしてゆく。時には武力で、時には知力で少しづつ左右から帝国目指して大国を作り上げながら進撃を開始した。
「イーライ様とウィルフィルド様がもういなくなっちゃった……寂しい」
可愛い双子が旋風のように去って行き、悲しむディエスを慰める役目はラムだったし、ソレイユも早すぎる巣立ちに悲しんだが、アレッシュの婚約者との交流も必要で忙しくもあった。
「他国から嫁いでいらしたし、アレッシュは側妃を持たないつもりのようですし。変革となると私も手伝わなければ……私が勇気がなくて出来なかった変革を」
この国では正妃が政治に関わる事になりそうだ。それはどちらでもその時によって選び取れれば良い、そう言う事だ。
勿論、ラムシェーブルやディエスの大きな助力もあるだろうけど、ソレイユ派の力も強大なのだから。
それもあるし。
「私はディエス様よりソレイユ様派ですので!」
「あら、嬉しいわ」
喧嘩をしている訳でもないが、ソレイユとディエスは何かと比較対象される存在だ。昼と夜のように、一つの帝国を分け合うシンボルとして。ディエス本人はそんなつもりが全くなくても周りはそう思わない。
下手をすればそれぞれの派閥で戦争が起こっても不思議ではないのに、ディエスの人柄一つでそれが起こらない事をソレイユは良く知っている。
「当然だ!ソレイユ様が一番だ。俺なんて芋でも食ってりゃ良いんだよ!芋」
本気でそう言うし、正妃ソレイユを貶めようとする者は積極的に排除してくる。結局ディエス派はソレイユを邪険には出来ない。
「あの子の出来過ぎ具合にちょっとだけ嫉妬しちゃうわね」
ソレイユとて無能ではない。だからこそ、ディエスの心遣いや優しさに感動したし、それがいかに難しく実行しがたい事であるか分かっている。
それをいとも容易くやってのける人間性に少しだけ嫉妬してしまう。
「分かりますわ、お義母様。何というか完璧過ぎて腹が立ちます」
「分かってもらえるかしら?!ルータベーガちゃん」
「ええ。優しくてカッコいいし仕事も出来て一人しか愛していないなんて完璧過ぎて腹が立ちます!」
「そう、それなのよ!」
「そして私達にも凄く優しいし……ムカつきます!」
「分かってくれるのね!」
王妃と王太子妃の仲をある意味取り持っていた事もディエスは知らなかった。
「あー……ライとウィルが行っちゃったー。あいつら決めたら絶対やり遂げないと気が済まないからなぁ……そういう所、父上に似たよなぁ」
溜息をつきながらアレッシュは書類を書いている。これから双子が起こす問題を少しでも減らす為に手を打っていた。
「それにしても、最後にちゃんと相談に来ると思ってたのになぁ……来ないんだもん、止め損ねた」
はぁ、と更に大きな溜息をついてアレッシュは外を見た。中庭にはたくさんのあやめが今日も美しく揺れている。
お前達、ちゃんとディエス様に気持ちを聞いたのか、と。
「……可哀想だと思うが、あの二人には良い経験になるだろうさ。恋愛感情も理解しなきゃなぁ」
あの双子が大陸を制覇して、ラムシェーブルより広い国を治める立派な国王になっても、ディエスの愛は手に入らない事に気がついていないのだ。
「私達はラムシェーブルの子供だからあれだけ可愛がって貰えた、そういう事なんだよなぁ」
はぁ、もう一つ大きな溜息。アレッシュがその事実に気がついて絶望したのはいつ頃だったか。ディエスがアレッシュを可愛がってくれるのは、ラムシェーブルの息子だからであって、アレッシュを愛しているわけではない。
そこからきちんと婚約者と向き合った。付き合ってみるとルータベーガがとても話の合う令嬢でびっくりしたし、自分の視野の狭さに驚いた。
「気がついて泣いたら慰めてやらないとなぁ……なにせ私はお兄ちゃんだからなぁ」
誰かに言われて気がつくか、それとも自分達で気づくか。ディエスに直に言われたらダメージが大きいだろうなぁとまた溜息をつく。
「こればっかりはなあ」
双子の活躍より、いつその事実に気がつくかそちらの方が気になって仕方がないアレッシュだった。
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