116 / 139
116 大惨事の予感
しおりを挟む
「ディエス」
「ああ、今行くー」
ラムが木陰から俺を呼んでいる。屋敷の広い庭の大きな木の下にテーブルと椅子が設置されていて、大きな椅子がラムの指定席だ。
「今は何が取れるんだ?」
「トマト!」
麦わら帽子の俺は目すらサングラスで防御しながら3本だけあるトマトを世話していた。スローライフだ!とうとうやってやったぜ!
「色付いてるな。今年は食えるのか?」
「鳥次第だなぁ~」
去年は良し!収穫だ!と決めた朝に鳥に掻っ攫われてしまったんだよ。悔しい!
「しかしその格好は」
「仕方がないだろう……レーツィアが日焼け厳禁って言うから」
俺は日陰に入って麦わら帽子とサングラスと口元を覆い隠すスカーフとアームカバーと……まあそれぞれ太陽の光を遮る日焼け止めグッズの数々を外して行く。暑いわ!
ニコラスが冷たいお茶を淹れてくれたので休憩時間なのだ。お茶と言っても俺にはフルーツジュース、ちょっと塩が入っている奴。俺が何か言った訳じゃないんだけど、ニコラスは経験で知ってるみたい、暑い汗をたっぷりかくような時には水だけじゃなくてミネラルもいるって事。
「さすが~~」
本当ならここで缶ビールでもプシュっと行きたい所だけれど、流石に缶ビールはないからなぁ。誰か作ってくれないかなぁ?
「あの話、本当に受けるのか?」
「うーん。俺、レーツィアに勝てないんだよなぁ、なんか知らないけど。レーツィアに言われたら従わないといけないような気持ちが刷り込まれてる気がする」
青空を見上げるとまだ少女だった頃のレーツィアがほーっほっほっほ!と高笑いしながらこっちを見ている気がした。
「さもありなん」
あっ!ラムまで同意した?!でもその辺りはラムにも覚えがある事なんだろう。きっとラムが見上げる空にはソレイユ様が上品に微笑んでいらっしゃるに違いない。
「しっかし、化粧品のモデルなんて何でおっさんに頼むかな……」
そう、俺はレーツィアの商会の高級化粧品「ミステリアス・アイリス」シリーズのイメージモデルをやらされようとしている。正直言う、きっつい。
「ここらでバーンと出してドーンと広めてがっつり行きたいのよ」
「はぁ。今でも売れてるんだろ?」
超高級化粧品の紫の小瓶を並べてレーツィアは目を輝かせている。
「もっと行けるはずですもの!」
なんとここにある小指くらいの小瓶が一つ5万ゴールドするらしい。所謂5万円よ?!こんなちっさいのに!ありえねぇって思うけど普通に売れているらしいから女性の美への探究心って凄い。
「ディエスがいい具合の歳になったからね。ミステリアス・アイリスは少し歳上の女性を狙ったラインにしたの。その辺りのご夫人はお金持ちなのよ?」
「へ、へぇ……」
嫌な予感がして、逃げ出したかったのだが、蛇に睨まれたカエルって言うの?レーツィアから逃げられないんだよね……。三つ子の魂百までって奴かも。レーツィアと初めて会ったのは5歳だけど、そこからずーっと勝てない……いや、勝負にすらなっていない気がするんだ。
「と、言うわけで頼むわよ!ドレスはこっちで用意しておくから」
「嫌だけど」
「日焼け厳禁よーーー!」
「聞いてくれ!レーツィア!」
「ラム様もお願いしますねー」
「……何をだ?」
言いたい事だけ言って、企画書を置いてレーツィアは帰って行く。俺達なんかよりバリバリ働いていて、行動力が物凄い。
「ド、ドレスとか言ってなかったか?」
「女性用化粧品のモデルならやはり着るのではないか?」
「絶対やだけど?!」
おっさんに女装なんてどんだけ大惨事が起こると思ってんだよ!レーツィアの馬鹿ぁ!
「ああ、今行くー」
ラムが木陰から俺を呼んでいる。屋敷の広い庭の大きな木の下にテーブルと椅子が設置されていて、大きな椅子がラムの指定席だ。
「今は何が取れるんだ?」
「トマト!」
麦わら帽子の俺は目すらサングラスで防御しながら3本だけあるトマトを世話していた。スローライフだ!とうとうやってやったぜ!
「色付いてるな。今年は食えるのか?」
「鳥次第だなぁ~」
去年は良し!収穫だ!と決めた朝に鳥に掻っ攫われてしまったんだよ。悔しい!
「しかしその格好は」
「仕方がないだろう……レーツィアが日焼け厳禁って言うから」
俺は日陰に入って麦わら帽子とサングラスと口元を覆い隠すスカーフとアームカバーと……まあそれぞれ太陽の光を遮る日焼け止めグッズの数々を外して行く。暑いわ!
ニコラスが冷たいお茶を淹れてくれたので休憩時間なのだ。お茶と言っても俺にはフルーツジュース、ちょっと塩が入っている奴。俺が何か言った訳じゃないんだけど、ニコラスは経験で知ってるみたい、暑い汗をたっぷりかくような時には水だけじゃなくてミネラルもいるって事。
「さすが~~」
本当ならここで缶ビールでもプシュっと行きたい所だけれど、流石に缶ビールはないからなぁ。誰か作ってくれないかなぁ?
「あの話、本当に受けるのか?」
「うーん。俺、レーツィアに勝てないんだよなぁ、なんか知らないけど。レーツィアに言われたら従わないといけないような気持ちが刷り込まれてる気がする」
青空を見上げるとまだ少女だった頃のレーツィアがほーっほっほっほ!と高笑いしながらこっちを見ている気がした。
「さもありなん」
あっ!ラムまで同意した?!でもその辺りはラムにも覚えがある事なんだろう。きっとラムが見上げる空にはソレイユ様が上品に微笑んでいらっしゃるに違いない。
「しっかし、化粧品のモデルなんて何でおっさんに頼むかな……」
そう、俺はレーツィアの商会の高級化粧品「ミステリアス・アイリス」シリーズのイメージモデルをやらされようとしている。正直言う、きっつい。
「ここらでバーンと出してドーンと広めてがっつり行きたいのよ」
「はぁ。今でも売れてるんだろ?」
超高級化粧品の紫の小瓶を並べてレーツィアは目を輝かせている。
「もっと行けるはずですもの!」
なんとここにある小指くらいの小瓶が一つ5万ゴールドするらしい。所謂5万円よ?!こんなちっさいのに!ありえねぇって思うけど普通に売れているらしいから女性の美への探究心って凄い。
「ディエスがいい具合の歳になったからね。ミステリアス・アイリスは少し歳上の女性を狙ったラインにしたの。その辺りのご夫人はお金持ちなのよ?」
「へ、へぇ……」
嫌な予感がして、逃げ出したかったのだが、蛇に睨まれたカエルって言うの?レーツィアから逃げられないんだよね……。三つ子の魂百までって奴かも。レーツィアと初めて会ったのは5歳だけど、そこからずーっと勝てない……いや、勝負にすらなっていない気がするんだ。
「と、言うわけで頼むわよ!ドレスはこっちで用意しておくから」
「嫌だけど」
「日焼け厳禁よーーー!」
「聞いてくれ!レーツィア!」
「ラム様もお願いしますねー」
「……何をだ?」
言いたい事だけ言って、企画書を置いてレーツィアは帰って行く。俺達なんかよりバリバリ働いていて、行動力が物凄い。
「ド、ドレスとか言ってなかったか?」
「女性用化粧品のモデルならやはり着るのではないか?」
「絶対やだけど?!」
おっさんに女装なんてどんだけ大惨事が起こると思ってんだよ!レーツィアの馬鹿ぁ!
331
お気に入りに追加
7,216
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
ある日、人気俳優の弟になりました。
樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる