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97 おじさんの事、忘れてないよ?

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「払えなければ首と胴体が永遠にさよならしてしまうな」

「払える訳ない……」

「分割も認めるぞ?」

 さらっと言うがまだそれだけじゃなさそう。

「ソルリア国との協定は殆ど破棄。不戦協定もあったな。エイダンの保釈金の外にソルリア国への賠償金も貰わねば」

「……一思いに潰した方が優しいんじゃないの?」

 ラムはまた悪い笑顔を浮かべて

「だから私の側妃は「お優しい」と言われるのだぞ」

「……俺の優しいは国内限定でーす」

「私限定でもよいのだがな?」

 はは、そ、そうですか……。あれ以降甘さを隠さなくなって来たラムに少し戸惑ってしまう。

「いや、まあ……その。それは、そのうち、な?」

「では今夜でも」

「ひぃや!やめてくれ!」

 何言ってんのこの人っ!仕事しろ仕事!

「お忙しい中失礼致します」

「忙しくないっ!」

 侍従のお調子者の方、ルトが入って来た。

「あの、ディエス様に会いたいという平民がここ暫く毎日参っておりまして」

「平民?誰だろう?」

 最近、王宮の中でドタバタしかしてないから王宮にいる人以外に会ってない気がするんだけど……?

「それが……レジム家に仕えていた」

「ラフレシアの家??」

「執事だと」

「執事!!」

 あーー!誰だかすぐに分かった!

「おじさんだ!!ごめん、呼んで来てくれる??」

「承知いたしました」

 スッと頭を下げてルトは出て行く。

「説明」

「あ、ごめん」

 ちょっとラムのご機嫌が斜めになった。まあ、荒唐無稽な話なんだけど、今のラムなら信じてくれそう。

「と、言う訳で。かっこいいんだけどダサくて残念な神様に一緒に連れて帰ってくれって頼まれたおじさんなんだ。誰かに仕えなきゃ生きていけないって言われたから」

「信じろと?」

「うん」

 それ以上何も言わずラムが指先だけでこっちへ来いと言う。なんだよう、全く。

「座れ」

「嫌だよ!」

 膝の上を指差されても嫌だ!

「お取り込み中失礼致します、例の男を連れて参りました!」

「お取込んでないっ!!」

「ちっ、減給だな」

「俺から増給しとくっ!!」

 扉の前でああ給料の増減はなしですね、とへらりと笑うルトはおじさんを一人伴って現れた。

「ニコラスと申します」

「うん、この人」

 俺が会ったのはこの人だ。顔と言うか雰囲気、多分魂の色とか形とかがこの人だーって確信させられる。

「私は、女神と名乗る人物に会ってから記憶が朧気なのですが、旦那様とお嬢様をその方の元に送り届けた事は覚えております……」

 それくらいしか覚えていないらしい。そして気がついたらレジム家の門の前にいて、俺に会わなくちゃと思ったんだそうだ。

 多分、多分なんだけど。本物のディエスの魂を連れて行ってしまった女神様の仕業なんじゃないかなって。だってあのラフレシア嬢のインパクトたるや恐ろしいものだったから、きっと女神様にスカウトされたんだよ。
 ざまぁされる王子に元ディエス。悪役令嬢にリリシア・ラフレシア。凄い、きっと凄い空前絶後の物語が紡がれそうだ。

「ラム、この人を俺の執事にするから」

「構わん」

 やったー!もう決まった。
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