【完結】廃棄王子、側妃として売られる。社畜はスローライフに戻りたいが離して貰えません!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
上 下
97 / 139

97 おじさんの事、忘れてないよ?

しおりを挟む
「払えなければ首と胴体が永遠にさよならしてしまうな」

「払える訳ない……」

「分割も認めるぞ?」

 さらっと言うがまだそれだけじゃなさそう。

「ソルリア国との協定は殆ど破棄。不戦協定もあったな。エイダンの保釈金の外にソルリア国への賠償金も貰わねば」

「……一思いに潰した方が優しいんじゃないの?」

 ラムはまた悪い笑顔を浮かべて

「だから私の側妃は「お優しい」と言われるのだぞ」

「……俺の優しいは国内限定でーす」

「私限定でもよいのだがな?」

 はは、そ、そうですか……。あれ以降甘さを隠さなくなって来たラムに少し戸惑ってしまう。

「いや、まあ……その。それは、そのうち、な?」

「では今夜でも」

「ひぃや!やめてくれ!」

 何言ってんのこの人っ!仕事しろ仕事!

「お忙しい中失礼致します」

「忙しくないっ!」

 侍従のお調子者の方、ルトが入って来た。

「あの、ディエス様に会いたいという平民がここ暫く毎日参っておりまして」

「平民?誰だろう?」

 最近、王宮の中でドタバタしかしてないから王宮にいる人以外に会ってない気がするんだけど……?

「それが……レジム家に仕えていた」

「ラフレシアの家??」

「執事だと」

「執事!!」

 あーー!誰だかすぐに分かった!

「おじさんだ!!ごめん、呼んで来てくれる??」

「承知いたしました」

 スッと頭を下げてルトは出て行く。

「説明」

「あ、ごめん」

 ちょっとラムのご機嫌が斜めになった。まあ、荒唐無稽な話なんだけど、今のラムなら信じてくれそう。

「と、言う訳で。かっこいいんだけどダサくて残念な神様に一緒に連れて帰ってくれって頼まれたおじさんなんだ。誰かに仕えなきゃ生きていけないって言われたから」

「信じろと?」

「うん」

 それ以上何も言わずラムが指先だけでこっちへ来いと言う。なんだよう、全く。

「座れ」

「嫌だよ!」

 膝の上を指差されても嫌だ!

「お取り込み中失礼致します、例の男を連れて参りました!」

「お取込んでないっ!!」

「ちっ、減給だな」

「俺から増給しとくっ!!」

 扉の前でああ給料の増減はなしですね、とへらりと笑うルトはおじさんを一人伴って現れた。

「ニコラスと申します」

「うん、この人」

 俺が会ったのはこの人だ。顔と言うか雰囲気、多分魂の色とか形とかがこの人だーって確信させられる。

「私は、女神と名乗る人物に会ってから記憶が朧気なのですが、旦那様とお嬢様をその方の元に送り届けた事は覚えております……」

 それくらいしか覚えていないらしい。そして気がついたらレジム家の門の前にいて、俺に会わなくちゃと思ったんだそうだ。

 多分、多分なんだけど。本物のディエスの魂を連れて行ってしまった女神様の仕業なんじゃないかなって。だってあのラフレシア嬢のインパクトたるや恐ろしいものだったから、きっと女神様にスカウトされたんだよ。
 ざまぁされる王子に元ディエス。悪役令嬢にリリシア・ラフレシア。凄い、きっと凄い空前絶後の物語が紡がれそうだ。

「ラム、この人を俺の執事にするから」

「構わん」

 やったー!もう決まった。
しおりを挟む
感想 261

あなたにおすすめの小説

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...