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87 遠くより足元を見ないと
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「やはりソルリアの国境辺りが酷い。ディエス様の故郷故、毎日何名かは受け入れているが、無理に関を破ろうとしたり」
「っはー……予想通り過ぎて笑えもしないよ」
「食い詰めた農民だけでなく、商人、下級貴族も逃げ出しておるそうです」
「そうかぁ。なあそこまでいくと国として維持できんの??」
あまりに国民が居なくなったら、この先天候が回復しても国としてやっていけんのかな?
騎士団からの報告書を見ながらラムに聞いてみる。
「厳しいかもしれん。民からの信頼がなければ少しの事で暴動がおき、不満が募る。そんな国では落ち着いて政治の政策もとれはせん」
「そうするとどんどん国は荒れて貧乏になって行くだろうね……」
うーん、恩はないけど別に恨んでもいない。沢山いるソルリアの人間が憎い訳でもない。可哀想だなって思うし、多分何とかする為の力がある……目の前の男に。
そいつを動かす方法も知っている。なんだかんだで俺に甘いそいつは、俺が「お願い」したら聞いてくれるだろう。だがそれで良いのか?
今回の人数は余りに多い。全部受け入れれば帝国にも影響がでる。無責任な事は言えない。そうやって仕事を無計画に増やし、倒れていった社畜を俺は数多く見て知っている……。
「どうした?」
視線は書類のまま、ラムの声が飛んできた。なんだか俺の考えを察している気がして少し戸惑うが、俺は決断なんて出来ない。
「いや、いい」
「そうか」
好きな様にして良いと言われた気がするけど、俺は頭を振った。別の仕事もどんどん増えている。遠くより足元を見ないとな……。
もうすぐ、新年祭がある。この世界は冬の寒い時期、一月が新年だ。どうやら毎年、各領や属国などから代表がご機嫌伺いにやって来る盛大なイベントらしいが今年は小さく、参加もしなくて良い事になっている。
「その費用を民に充てよ」
と、言ってあるので、今年は参加がほとんどないだろう。ソレイユ様も産後という事で大事を取って参加しないし。
それでも王都のタウンハウスに暮らす貴族達は挨拶くらいには来るだろうから準備も必要だ。
「俺、新年祭の打ち合わせに王妃宮行ってくるね」
「ああ、今日の昼は何かのヌードルらしいぞ」
「お!麺類か!こっち戻って食うから残しておいてくれよ!」
料理長が工夫していろんな麺類を作ってくれてんだよなー!そのうち蕎麦とか出来てそうですげー楽しみ!
「王妃宮で食って来ないように」
「勿論だぜ!」
俺はいつもの女性騎士と侍女やメイドを引き連れてソレイユ様の元に向かった。一人で行けるんだけど、連れていかないと駄目だと言われて大移動だ。
ま、新年祭にかけこつけてロイター家から届いたウィルフィルドの様子を知らせた手紙とか、ソレイユ様からウィルフィルドに向けたよだれかけとかを届けているだけどね。
あと、次男のイーライ様を見に行ってる。イーライ様も可愛いくてしょうがない!早く双子ちゃんを並べたいぞ!
とりあえずイーライ様もウィルフィルド様も風邪も引かず順調に成長している。母親を取られてちょっと拗ねたアレッシュ様が俺の膝に乗ったり抱っこをせがんで来たり、わがままを言ったりしているがこれは仕方のない事だ。
俺は王妃宮についたら、まずアレッシュ様を抱っこする事から始めるけど、まだまだ小さいから何の負担にも成らないぜ!
「アレッシュ様、ソレイユ様とイーライ様を頼みます。お母様と弟を守ってくださいね」
「……わかった、ボクはおにーちゃんだからね!」
戻る時にお願いしてみたら、ぽん、と胸を叩いたのでアレッシュ様はもう立派なお兄ちゃんだった。なんて頼りになるんだろう。
「ぼくのことすきになっちゃうでしょ?」
「ええ、とても」
「むふー!ぼくがおおきくなったらけっこんしようね!」
はは、その時一人だったらね。
「っはー……予想通り過ぎて笑えもしないよ」
「食い詰めた農民だけでなく、商人、下級貴族も逃げ出しておるそうです」
「そうかぁ。なあそこまでいくと国として維持できんの??」
あまりに国民が居なくなったら、この先天候が回復しても国としてやっていけんのかな?
騎士団からの報告書を見ながらラムに聞いてみる。
「厳しいかもしれん。民からの信頼がなければ少しの事で暴動がおき、不満が募る。そんな国では落ち着いて政治の政策もとれはせん」
「そうするとどんどん国は荒れて貧乏になって行くだろうね……」
うーん、恩はないけど別に恨んでもいない。沢山いるソルリアの人間が憎い訳でもない。可哀想だなって思うし、多分何とかする為の力がある……目の前の男に。
そいつを動かす方法も知っている。なんだかんだで俺に甘いそいつは、俺が「お願い」したら聞いてくれるだろう。だがそれで良いのか?
今回の人数は余りに多い。全部受け入れれば帝国にも影響がでる。無責任な事は言えない。そうやって仕事を無計画に増やし、倒れていった社畜を俺は数多く見て知っている……。
「どうした?」
視線は書類のまま、ラムの声が飛んできた。なんだか俺の考えを察している気がして少し戸惑うが、俺は決断なんて出来ない。
「いや、いい」
「そうか」
好きな様にして良いと言われた気がするけど、俺は頭を振った。別の仕事もどんどん増えている。遠くより足元を見ないとな……。
もうすぐ、新年祭がある。この世界は冬の寒い時期、一月が新年だ。どうやら毎年、各領や属国などから代表がご機嫌伺いにやって来る盛大なイベントらしいが今年は小さく、参加もしなくて良い事になっている。
「その費用を民に充てよ」
と、言ってあるので、今年は参加がほとんどないだろう。ソレイユ様も産後という事で大事を取って参加しないし。
それでも王都のタウンハウスに暮らす貴族達は挨拶くらいには来るだろうから準備も必要だ。
「俺、新年祭の打ち合わせに王妃宮行ってくるね」
「ああ、今日の昼は何かのヌードルらしいぞ」
「お!麺類か!こっち戻って食うから残しておいてくれよ!」
料理長が工夫していろんな麺類を作ってくれてんだよなー!そのうち蕎麦とか出来てそうですげー楽しみ!
「王妃宮で食って来ないように」
「勿論だぜ!」
俺はいつもの女性騎士と侍女やメイドを引き連れてソレイユ様の元に向かった。一人で行けるんだけど、連れていかないと駄目だと言われて大移動だ。
ま、新年祭にかけこつけてロイター家から届いたウィルフィルドの様子を知らせた手紙とか、ソレイユ様からウィルフィルドに向けたよだれかけとかを届けているだけどね。
あと、次男のイーライ様を見に行ってる。イーライ様も可愛いくてしょうがない!早く双子ちゃんを並べたいぞ!
とりあえずイーライ様もウィルフィルド様も風邪も引かず順調に成長している。母親を取られてちょっと拗ねたアレッシュ様が俺の膝に乗ったり抱っこをせがんで来たり、わがままを言ったりしているがこれは仕方のない事だ。
俺は王妃宮についたら、まずアレッシュ様を抱っこする事から始めるけど、まだまだ小さいから何の負担にも成らないぜ!
「アレッシュ様、ソレイユ様とイーライ様を頼みます。お母様と弟を守ってくださいね」
「……わかった、ボクはおにーちゃんだからね!」
戻る時にお願いしてみたら、ぽん、と胸を叩いたのでアレッシュ様はもう立派なお兄ちゃんだった。なんて頼りになるんだろう。
「ぼくのことすきになっちゃうでしょ?」
「ええ、とても」
「むふー!ぼくがおおきくなったらけっこんしようね!」
はは、その時一人だったらね。
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