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85 ホラー!!
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「お召しにより参上致しました。この老いぼれに声をかけていただけるとは心より感謝致します」
「呼ぶのが遅れてごめんね?冷夏の対策が忙しくて……」
「お気遣い感謝致します、ディエス様」
俺はロイター侯爵をを呼び出していた。ロイター侯爵はゼルトラン君のお父さんだ。当のゼルトラン君は厳しくて清貧と有名な修道院に突っ込まれたそうだ。
お鼻はちょっと曲がったままだけど、「鏡を見るたび反省するからちょうど良い」なんて言われちゃったらしい。少し可哀想だけど生きてるし、ロイター家も存続させたんだから我慢して欲しいな。
「重大な頼み事をしたいんだ。受けてくれるかい?」
「勿論でございます」
そう言ってくれると思ってた。隠すように小さな籠に入れられた赤ちゃんを見せる。
「彼は第三皇子のウィルフィルド様。この意味分かるね?」
「心得ました」
先日正妃ソレイユが第二皇子を産んだと大々的に発表した。ソレイユが産んだ子供は一人だ、と。
「夏、気候が安定すれば発表する予定になってる。それまで誰にも気取られず大切に養育して欲しい。俺も見に行きたいけど、頻繁に出入りして疑われるのは不味い。同じ理由でソレイユ様の実家のファーメイヤ公爵家に預ける訳にもいかない」
「委細承知にて……可愛い赤子でございますな……正妃様によく似ておられる……」
「だよなぁ~超可愛い!あーいっぱい構ってやれないのが辛いわ」
ウィルフィルド様は泣きもせず大人しく眠っている。賢くていい子だ。
「正妃様がお迎えに来られるまで命に変えてもお守り致します!」
「頼んだよ」
流石に俺にはおっぱいも無いし、手元で育てる事は出来ない。双子が不吉じゃ無いと証明したいのに、中々上手く行かない。でも色々な人の手を借りても絶対に幸せにするんだ。ロイター侯爵には色々な人にバレる前に帰って貰った。きっと身命を賭して可愛がってくれるに違いない。
ずーっと厳しい顔をしていたロイター侯爵が孫を見るお爺ちゃん顔でウィルフィルド様を見ていたから、大丈夫だと思う。ウィルフィルド様も侯爵に抱かれても泣かなかったので、相性も悪くないと思う。俺も出来る事を頑張ろう!
「仕事が溜まってきたし……」
レジム家関連の報告書が増えていた。
「レジム家が爵位返却して来たぞ」
「え?!売却じゃなくて、返却?!何で???」
最後の最後に売れてお金になるのが爵位じゃないか?!それを売らないで返却って一体何があったんだ?レジム家の動向はセイリオスが派遣した執事から逐一伝わって来ていた。昔からレジム家に仕えていた執事が消えた後、入り込んだ男はこっちの手のものだったって訳。
だって傾いて倒れるのが秒読みなレジム家に誰が仕えようなんて思う?いないよねぇ?
「セイリオスの手のあの執事ほ話によると、昔から仕えていた執事がある日突然顔を出したそうだ」
「ふうん?それで?」
報告書によれば、暫く行方不明になっていた元執事が帰ってきて
「……旦那様……お嬢様……私がお二人を素晴らしい場所へ案内致します……素晴らしい神の元へ……」
様子がおかしかったが、ふと気がつくとその元執事もレジム公爵もリリシアも姿が無かったそうだ。
そしてレジム公爵の執務机の上にはいつの間にか爵位を返却する書類が一枚だけ乗っていたと言う。
「その後、3人をみた者は誰もいないと言う……」
「こっ!怖い!!ホラーかよ!!!!」
最後まで聞かなきゃ良かったぁーーーー!
公爵が消え、爵位がラムの元へ戻ったレジム領にはすぐ救済の手を伸ばした。公爵が自分達が食べる為に最後まで溜め込んでいた小麦を他領に売り、代わりに倍量以上の芋や雑穀を手に入れ、死にかけた領民に提供する。無料の炊き出しも行い、鉱山収容所に向かう者も多数いた。
レジム公爵がどこへ消えたか誰も分からなかったので悪いのは公爵だと領民に説明し、皇帝預かりとなったので安心して欲しいと人を派遣する。少しづつレジム領は落ち着きを取り戻して行き、セイリオスの計画通り大きなカジノが建てられるだろう……。
「レジム領は側妃ディエス預かりとする」
「ひょえ」
俺は辞退しようとしたが、現時点でやせ細り、土地も切り売りされ領民の暴動も激しいレジム領を欲しいという貴族はなく、了承を得られてしまった。
「後で絶対狡いって言われるやつだよーこれええ」
「その為の確認の書面もある。セイリオスからの感謝も含まれておるのだろうよ」
自分の為にやった事なんだけどなあ……。しかし誰も手を挙げないならしょうがないのか、とレジム領受け取りの書面にサインをしてしまった。
「呼ぶのが遅れてごめんね?冷夏の対策が忙しくて……」
「お気遣い感謝致します、ディエス様」
俺はロイター侯爵をを呼び出していた。ロイター侯爵はゼルトラン君のお父さんだ。当のゼルトラン君は厳しくて清貧と有名な修道院に突っ込まれたそうだ。
お鼻はちょっと曲がったままだけど、「鏡を見るたび反省するからちょうど良い」なんて言われちゃったらしい。少し可哀想だけど生きてるし、ロイター家も存続させたんだから我慢して欲しいな。
「重大な頼み事をしたいんだ。受けてくれるかい?」
「勿論でございます」
そう言ってくれると思ってた。隠すように小さな籠に入れられた赤ちゃんを見せる。
「彼は第三皇子のウィルフィルド様。この意味分かるね?」
「心得ました」
先日正妃ソレイユが第二皇子を産んだと大々的に発表した。ソレイユが産んだ子供は一人だ、と。
「夏、気候が安定すれば発表する予定になってる。それまで誰にも気取られず大切に養育して欲しい。俺も見に行きたいけど、頻繁に出入りして疑われるのは不味い。同じ理由でソレイユ様の実家のファーメイヤ公爵家に預ける訳にもいかない」
「委細承知にて……可愛い赤子でございますな……正妃様によく似ておられる……」
「だよなぁ~超可愛い!あーいっぱい構ってやれないのが辛いわ」
ウィルフィルド様は泣きもせず大人しく眠っている。賢くていい子だ。
「正妃様がお迎えに来られるまで命に変えてもお守り致します!」
「頼んだよ」
流石に俺にはおっぱいも無いし、手元で育てる事は出来ない。双子が不吉じゃ無いと証明したいのに、中々上手く行かない。でも色々な人の手を借りても絶対に幸せにするんだ。ロイター侯爵には色々な人にバレる前に帰って貰った。きっと身命を賭して可愛がってくれるに違いない。
ずーっと厳しい顔をしていたロイター侯爵が孫を見るお爺ちゃん顔でウィルフィルド様を見ていたから、大丈夫だと思う。ウィルフィルド様も侯爵に抱かれても泣かなかったので、相性も悪くないと思う。俺も出来る事を頑張ろう!
「仕事が溜まってきたし……」
レジム家関連の報告書が増えていた。
「レジム家が爵位返却して来たぞ」
「え?!売却じゃなくて、返却?!何で???」
最後の最後に売れてお金になるのが爵位じゃないか?!それを売らないで返却って一体何があったんだ?レジム家の動向はセイリオスが派遣した執事から逐一伝わって来ていた。昔からレジム家に仕えていた執事が消えた後、入り込んだ男はこっちの手のものだったって訳。
だって傾いて倒れるのが秒読みなレジム家に誰が仕えようなんて思う?いないよねぇ?
「セイリオスの手のあの執事ほ話によると、昔から仕えていた執事がある日突然顔を出したそうだ」
「ふうん?それで?」
報告書によれば、暫く行方不明になっていた元執事が帰ってきて
「……旦那様……お嬢様……私がお二人を素晴らしい場所へ案内致します……素晴らしい神の元へ……」
様子がおかしかったが、ふと気がつくとその元執事もレジム公爵もリリシアも姿が無かったそうだ。
そしてレジム公爵の執務机の上にはいつの間にか爵位を返却する書類が一枚だけ乗っていたと言う。
「その後、3人をみた者は誰もいないと言う……」
「こっ!怖い!!ホラーかよ!!!!」
最後まで聞かなきゃ良かったぁーーーー!
公爵が消え、爵位がラムの元へ戻ったレジム領にはすぐ救済の手を伸ばした。公爵が自分達が食べる為に最後まで溜め込んでいた小麦を他領に売り、代わりに倍量以上の芋や雑穀を手に入れ、死にかけた領民に提供する。無料の炊き出しも行い、鉱山収容所に向かう者も多数いた。
レジム公爵がどこへ消えたか誰も分からなかったので悪いのは公爵だと領民に説明し、皇帝預かりとなったので安心して欲しいと人を派遣する。少しづつレジム領は落ち着きを取り戻して行き、セイリオスの計画通り大きなカジノが建てられるだろう……。
「レジム領は側妃ディエス預かりとする」
「ひょえ」
俺は辞退しようとしたが、現時点でやせ細り、土地も切り売りされ領民の暴動も激しいレジム領を欲しいという貴族はなく、了承を得られてしまった。
「後で絶対狡いって言われるやつだよーこれええ」
「その為の確認の書面もある。セイリオスからの感謝も含まれておるのだろうよ」
自分の為にやった事なんだけどなあ……。しかし誰も手を挙げないならしょうがないのか、とレジム領受け取りの書面にサインをしてしまった。
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