【完結】廃棄王子、側妃として売られる。社畜はスローライフに戻りたいが離して貰えません!

鏑木 うりこ

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79 悪の側妃なんて嫌ですー!

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「人狩り!」

「いや一応違うらしい。でも遠くの鉱山に連れてかれて、働かされる。噂では食い物と寝る所はちゃんとあるらしいけど……胡散臭いよなあ?」

「でも……死ぬよりマシか……?」

 小麦の生育が思わしくないと誰もが気が付き始めた夏の頃。貧民街には鉱山夫募集、現地まで送るという簡素な馬車が常駐するようになった。

「今年、寒いだろ?つまり冬も寒いんだ。多分このまま行くと路上で寝てると凍死する。お前らがそれまでに職を見つけて真っ当に働けりゃ問題ないんだけど、無理だろ?で、皇帝陛下の計らいで鉱山で働けば食い物と寝る所は用意してやるって事よ」

「そ、そんなとこ、連れてかれたら一生強制労働だろ!?」

「いや?そんな事ねえよ。この馬車、帰りたければ帰りに乗せて帰って来て良いぜ。ただ、鉱山は楽な仕事も用意してるけど、給料がほんのちょびっとだ。食い物代にかかるからなあ」

 馬車の停留場では役人が色々説明してくれる。

「おいらたち子供でも良いのかい?」

「ああ、子供でもいいぞ。ただ給料は更に少ない。でも芋なんかは腹いっぱい食わせてくれるってよ」

「……俺、行く。弟も妹も一緒でいいだろ?」

「勿論だ、乗って出発を待ってろ」

 こうして何人もの貧民達は鉱山へ送られ、帰って来た者も本当にいた。帰ってきたのにまた馬車へ乗り込んで鉱山へ向かう。

「……もっかい……鉱山行く……ここより確実に向こうが良い」

「へ?働かされるんだろ……?」

「……一山当てさえすれば……こんな生活とはおさらばできる!チンチロリンだよ……チンチロリン……」

「……チン?」

 賭博の魔力に取り憑かれた者が出始めている。



「やっちまったかなー?」

「悪の側妃として名をほしいままにしますか?」

「しませんっ!!」

 命は守ってやれたけど、社会復帰はどうかな……?

「やっちまったかなあ……」

 俺は間違ったかもしれん、ごめんね?ラム。

「事情もあろうが、堕ちる者は心が弱い者が多い。それに賭博を与えれば……まあ上手く使ってやるから安心しろ」

「ラム、ありがと」

 心強いなあ~。そして経済は予想の範囲内で推移。上がる物価、高まる不満、起きる騒動。だがどれも範囲内。

「レジム家が土地を売り始めました。以前からいた有能な執事がいないらしく、二束三文で手放しています」

「差し押さえは進んでいるのだな?」

「滞りなく」

 こっちも予想内で動いている。多分このまま、土地を買い取り続けそこにラスベガスを作るんだと。そして王都の中にもいくつか公営のカジノを試験設置してる。娯楽を増やす事は良い事だが……破産する者も現れているようで、何とも。

「のめり込みすぎ、良くない」

 俺は手を合わせて謝っておいた。


 宮中行事も簡略化、簡素化、延期を発表し、セイリオスとクロードの結婚式も伸ばして貰った。自粛ムードが漂うが夏も終わり秋が近づくとそれも仕方がない事となってゆく。

「予想通りだな」

「ああ、予想通り、採れぬ」

 小麦の生産量は大きく落ち込んだ。とても寒い夏が来る。

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