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73 宅飲み、ジャパニーズスタイル!
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「りゃむぅ~~~~!」
「お前はカズシか?」
「おう!ポン酒うめぇ」
床に分厚いカーペットを引いてその上に靴を脱いで上がり、小さな盆の上に食器類を並べた。よくわからんがディエスが言うには。
「ジャパニーズスタイル!」
なんて酔う前のディエスが嬉しそうにはしゃいでいたな。今日も完全に酔ったディエスはカズシになっている。このために何故か木で真四角の器を作らせて、それに並々に透明なライスワインを注ぐ。意味が分からんがご機嫌なのでそれでいい。
「これこれぇ、これだよ、これぇ」
「どれだ?」
「マス酒ぇ……!」
早いうちから酔いが回ったらしく、細長いリボンの様な物を頭に巻き付けて大喜びしている。
「ネクタイ、ないもん!」
まったく理解できないがこれがカズシのいう「じゃぽねーぜすたいる」らしい。
「うまくいってよかったねえ、りゃむう~!これでみんななかよしで、うれいがなくなる~」
「ああ、カズシのおかげだ。お手柄だぞ」
「だろう!おれはできるソクヒだからなー!」
ヒック!としゃくりあげてながら、とろんとした目で寄りかかってくる。
「ところで、りゃむ。おれは和志だっけ?ディエスじゃなかったっけえ?」
「……どうだろう?」
「どっちでもいっかあ!」
最近、カズシとディエスの垣根は曖昧になって、混じり合ってきているように思う。ディエスでいる時、カズシはあまりカズシであったときの話をしない。便利なものはどうもカズシの世界にあったものが多いらしい。
「カズシ、カズシの世界の話をしてくれ」
「俺のせかいぃ~?くっそムカつく上司がいてぇ、やすみなんてなくて、ずーーっとはたらいてはたらいて。なあんにもかわらないせかいぃ~だよ、クソつまんねえけど、平和だった」
私に体重を預けて遠い目をしている。
「向こうに帰りたいか?」
帰りたいと言われたらどうするかなんて考えずに聞いてしまった。平和な世と言うものは良い物だ、聞く限りこちらの世界の方が血なまぐさい。
「んー……多分、帰らん……」
「何故?」
生活が、命が脅かされないという事はそれだけで素晴らしい。今、私はディエスに生活も命の保証もしてやれているが、もし私がいなかったら、どうなるか分からない。
「ラムを……置いていけない」
「……私、を?」
意外な答えが返って来て、私は面喰ってしまう。何故、私なのだ?
「ラムは、独りぼっちだからなあ……俺くらい傍にいてやらなきゃ可哀想だろ」
「あ……」
「ふへへ、良いんだぞぉ甘えて!おれはできるソクヒ様だからなあ~そんでもってぇスローライフするんだあ!」
へらへらと笑う。これだけ酔っていれば、カズシ……いやディエスは今日の事は覚えていないだろう。今、何を言っても明日の朝には「頭がいてぇ」と言いながら「昨日なんか言った?」と聞いてくる。そして「何も?」と答えればそれを信じる。
だから、今から何を言っても覚えていない。
「甘えて、良いか?」
「うん。なんつっても、俺はぁラムの奥さんらしいからなぁ~良いぞう甘えてぇ」
私の前でぱっと両手を広げた。飛び込んで来い、という事か?にこにこ笑って待っている。
「……ディエス……」
その開いた身体を抱き寄せる。
「あは」
「暖かい」
「そりゃあ、俺は生きてるからなぁ」
楽しそうに抱き返してくる力強さと暖かさ。私が真に欲しかった物はこれだったか。
「愛していると言ったら、迷惑だろうか」
つい、口から滑り出た。命令することには慣れたが希う事は暫く忘れていたのに。
「はあ?なぁに言ってんだぁ?」
素っ頓狂な声が上がった。ディエスもカズシも同性同士で愛を語る文化外の育ちだ。受け入れられなくて当然か。この場にディエスがいるのも、金で売られて来たような物だ……私は弱気になっている。
「夫婦は愛し合ってなんぼだろうよ、愛してなきゃ別れるっつーの!あはは!俺も好きだよ!ラム!」
細身ではあるが、女性のそれではない抱擁。混じりけのないただ抱き合うためだけの抱擁。労りも慰めもなく、ただ
「ラムもあったけーなあ!」
相手の体温を感じるだけ、それだけの抱擁がとても胸にいたい。
「私も、生きているからな」
「ちげーねーや!あははは!」
「カズシ、抱いていいか?」
ディエスでなくカズシを抱いてみたい、我が儘だろうか?その全てが欲しいだなんて。
「んー……?」
ディエスでもあり、カズシでもある私の側妃は回らない頭で少し考えるふりをしてから
「良いよ、俺はぁ出来る奥さんだからな!」
何も考えていない返事を寄越したが、その能天気さが今とても愛しいと思う。
「お前はカズシか?」
「おう!ポン酒うめぇ」
床に分厚いカーペットを引いてその上に靴を脱いで上がり、小さな盆の上に食器類を並べた。よくわからんがディエスが言うには。
「ジャパニーズスタイル!」
なんて酔う前のディエスが嬉しそうにはしゃいでいたな。今日も完全に酔ったディエスはカズシになっている。このために何故か木で真四角の器を作らせて、それに並々に透明なライスワインを注ぐ。意味が分からんがご機嫌なのでそれでいい。
「これこれぇ、これだよ、これぇ」
「どれだ?」
「マス酒ぇ……!」
早いうちから酔いが回ったらしく、細長いリボンの様な物を頭に巻き付けて大喜びしている。
「ネクタイ、ないもん!」
まったく理解できないがこれがカズシのいう「じゃぽねーぜすたいる」らしい。
「うまくいってよかったねえ、りゃむう~!これでみんななかよしで、うれいがなくなる~」
「ああ、カズシのおかげだ。お手柄だぞ」
「だろう!おれはできるソクヒだからなー!」
ヒック!としゃくりあげてながら、とろんとした目で寄りかかってくる。
「ところで、りゃむ。おれは和志だっけ?ディエスじゃなかったっけえ?」
「……どうだろう?」
「どっちでもいっかあ!」
最近、カズシとディエスの垣根は曖昧になって、混じり合ってきているように思う。ディエスでいる時、カズシはあまりカズシであったときの話をしない。便利なものはどうもカズシの世界にあったものが多いらしい。
「カズシ、カズシの世界の話をしてくれ」
「俺のせかいぃ~?くっそムカつく上司がいてぇ、やすみなんてなくて、ずーーっとはたらいてはたらいて。なあんにもかわらないせかいぃ~だよ、クソつまんねえけど、平和だった」
私に体重を預けて遠い目をしている。
「向こうに帰りたいか?」
帰りたいと言われたらどうするかなんて考えずに聞いてしまった。平和な世と言うものは良い物だ、聞く限りこちらの世界の方が血なまぐさい。
「んー……多分、帰らん……」
「何故?」
生活が、命が脅かされないという事はそれだけで素晴らしい。今、私はディエスに生活も命の保証もしてやれているが、もし私がいなかったら、どうなるか分からない。
「ラムを……置いていけない」
「……私、を?」
意外な答えが返って来て、私は面喰ってしまう。何故、私なのだ?
「ラムは、独りぼっちだからなあ……俺くらい傍にいてやらなきゃ可哀想だろ」
「あ……」
「ふへへ、良いんだぞぉ甘えて!おれはできるソクヒ様だからなあ~そんでもってぇスローライフするんだあ!」
へらへらと笑う。これだけ酔っていれば、カズシ……いやディエスは今日の事は覚えていないだろう。今、何を言っても明日の朝には「頭がいてぇ」と言いながら「昨日なんか言った?」と聞いてくる。そして「何も?」と答えればそれを信じる。
だから、今から何を言っても覚えていない。
「甘えて、良いか?」
「うん。なんつっても、俺はぁラムの奥さんらしいからなぁ~良いぞう甘えてぇ」
私の前でぱっと両手を広げた。飛び込んで来い、という事か?にこにこ笑って待っている。
「……ディエス……」
その開いた身体を抱き寄せる。
「あは」
「暖かい」
「そりゃあ、俺は生きてるからなぁ」
楽しそうに抱き返してくる力強さと暖かさ。私が真に欲しかった物はこれだったか。
「愛していると言ったら、迷惑だろうか」
つい、口から滑り出た。命令することには慣れたが希う事は暫く忘れていたのに。
「はあ?なぁに言ってんだぁ?」
素っ頓狂な声が上がった。ディエスもカズシも同性同士で愛を語る文化外の育ちだ。受け入れられなくて当然か。この場にディエスがいるのも、金で売られて来たような物だ……私は弱気になっている。
「夫婦は愛し合ってなんぼだろうよ、愛してなきゃ別れるっつーの!あはは!俺も好きだよ!ラム!」
細身ではあるが、女性のそれではない抱擁。混じりけのないただ抱き合うためだけの抱擁。労りも慰めもなく、ただ
「ラムもあったけーなあ!」
相手の体温を感じるだけ、それだけの抱擁がとても胸にいたい。
「私も、生きているからな」
「ちげーねーや!あははは!」
「カズシ、抱いていいか?」
ディエスでなくカズシを抱いてみたい、我が儘だろうか?その全てが欲しいだなんて。
「んー……?」
ディエスでもあり、カズシでもある私の側妃は回らない頭で少し考えるふりをしてから
「良いよ、俺はぁ出来る奥さんだからな!」
何も考えていない返事を寄越したが、その能天気さが今とても愛しいと思う。
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