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62 実質は鬼上司
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レジム公爵は焦っていた。
「何故だ!何故対策費の許可が下りない!!」
皇帝ラムシェーブル宛にこの度受けた指令に掛かる予算の見積もりを出して、国庫から出金してもらう予定なのに、その許可はいつになっても降りる気配がなかった。もう期限まで半分を切っている。残り一ヵ月半になった時点で、レジム公爵は官僚の元に怒鳴り込んだ。
「おい!貴様ら!この私が提出した対策費の申請書はどうした!」
「……突然何の話ですか」
冷静に返してくる官僚に怒りが沸点に達し、暫く怒鳴りつけていたがそれでも官僚は静かだった。こういう野蛮な貴族の扱いに慣れている、それに尽きる。
「わしが!ワシがだいぶ前に出した書類の返事はいつかと!聞いておるのだ!」
「いつですか?」
「貴様ああああああ!!」
それでも官僚は少ない手がかりから書類を受け付けた日にちを割り出し
「申請書不備で次の日には返却しております。ご自身の執務机を良くご覧になってはいかがでしょうか?」
「な、なんだと!!??ええい!貴様みたいな役立たずはクビだ!」
「我々の人事に関与されるのは陛下と側妃様だけでございます。お帰り下さい」
「きききききさまああああ、ワシをコケにしおってえええええ!!」
レジム公爵は騒ぎに騒いで、城の衛士達が呼ばれるほど騒ぎ立てたが、得るものなく戻って行った。そして官僚の言葉通り、整理されていない高く積み上がった書類の中に戻された申請書が紛れ込んでいるのを見つけてしまう。
「な、なに……?紙の……大きさが?は??意味が分からん!」
自ら書類を書くことがほぼなかったレジム公爵はディエスの「A4かB5以外認めない!」に見事に引っかかっていた。あと「提出書類は用件のみ「お手紙禁止!」」にも勿論弾かれている。
本当なら書記官達が書き直してくれたり、指導してきちんとした書類の作り方を教えてくれるものなのだが
「あれだけ書類があると「ついうっかり」そのまま返してしまう事がありますねえモグモグ」
「ああ、たまに「ついうっかり」します。モグモグ何ですかこれ美味しいですね」
「そうそう、「ついうっかり」しても次に出してくれればきちんと対応しますよねえ、モグモグほんとだ」
「モグモグこれはディエス様が頑張ってる私達の為に差し入れてくれた高級焼き菓子ですよ。美味しいですね」
「あの方、結構色々持って来てくれるよなー。「ごめんねー仕事増やしちゃって。これ飲んで頑張って。無理しないでね」って言いながらポーション置いてくのはどうかと思うけどなあ!」
「でもあんな美味い高級ポーション飲んだの初めてだよー。美味いなー癖になりそ」
「馬鹿ッそれがディエス様の罠だぞ。元気になったらいっぱい仕事持って来られるんだぞ??」
「「「やっぱり~?」」」
わはは、と笑いながら焼き菓子を頬張る書記官達の顔は明るい。仕事は増えたはずなのに、ディエスが来る前より生き生きと働いている。
「知ってるか?官僚長には最高級ポーションが箱で贈られたらしいぞ!」
「うはー!飲んでみたい、けど。どんだけ仕事ふられるんだーー!コエー!」
「官僚長そろそろ分身とかして二人分働くんじゃねえか!?」
「違いない!」
「アイリスの君は鬼かなーーー!?」
それでも自分達の仕事ぶりを認めて多少だが給料も上げてくれたディエスの人気は高く、ここでもレジム公爵は嫌われていたのだった。
「何故だ!何故対策費の許可が下りない!!」
皇帝ラムシェーブル宛にこの度受けた指令に掛かる予算の見積もりを出して、国庫から出金してもらう予定なのに、その許可はいつになっても降りる気配がなかった。もう期限まで半分を切っている。残り一ヵ月半になった時点で、レジム公爵は官僚の元に怒鳴り込んだ。
「おい!貴様ら!この私が提出した対策費の申請書はどうした!」
「……突然何の話ですか」
冷静に返してくる官僚に怒りが沸点に達し、暫く怒鳴りつけていたがそれでも官僚は静かだった。こういう野蛮な貴族の扱いに慣れている、それに尽きる。
「わしが!ワシがだいぶ前に出した書類の返事はいつかと!聞いておるのだ!」
「いつですか?」
「貴様ああああああ!!」
それでも官僚は少ない手がかりから書類を受け付けた日にちを割り出し
「申請書不備で次の日には返却しております。ご自身の執務机を良くご覧になってはいかがでしょうか?」
「な、なんだと!!??ええい!貴様みたいな役立たずはクビだ!」
「我々の人事に関与されるのは陛下と側妃様だけでございます。お帰り下さい」
「きききききさまああああ、ワシをコケにしおってえええええ!!」
レジム公爵は騒ぎに騒いで、城の衛士達が呼ばれるほど騒ぎ立てたが、得るものなく戻って行った。そして官僚の言葉通り、整理されていない高く積み上がった書類の中に戻された申請書が紛れ込んでいるのを見つけてしまう。
「な、なに……?紙の……大きさが?は??意味が分からん!」
自ら書類を書くことがほぼなかったレジム公爵はディエスの「A4かB5以外認めない!」に見事に引っかかっていた。あと「提出書類は用件のみ「お手紙禁止!」」にも勿論弾かれている。
本当なら書記官達が書き直してくれたり、指導してきちんとした書類の作り方を教えてくれるものなのだが
「あれだけ書類があると「ついうっかり」そのまま返してしまう事がありますねえモグモグ」
「ああ、たまに「ついうっかり」します。モグモグ何ですかこれ美味しいですね」
「そうそう、「ついうっかり」しても次に出してくれればきちんと対応しますよねえ、モグモグほんとだ」
「モグモグこれはディエス様が頑張ってる私達の為に差し入れてくれた高級焼き菓子ですよ。美味しいですね」
「あの方、結構色々持って来てくれるよなー。「ごめんねー仕事増やしちゃって。これ飲んで頑張って。無理しないでね」って言いながらポーション置いてくのはどうかと思うけどなあ!」
「でもあんな美味い高級ポーション飲んだの初めてだよー。美味いなー癖になりそ」
「馬鹿ッそれがディエス様の罠だぞ。元気になったらいっぱい仕事持って来られるんだぞ??」
「「「やっぱり~?」」」
わはは、と笑いながら焼き菓子を頬張る書記官達の顔は明るい。仕事は増えたはずなのに、ディエスが来る前より生き生きと働いている。
「知ってるか?官僚長には最高級ポーションが箱で贈られたらしいぞ!」
「うはー!飲んでみたい、けど。どんだけ仕事ふられるんだーー!コエー!」
「官僚長そろそろ分身とかして二人分働くんじゃねえか!?」
「違いない!」
「アイリスの君は鬼かなーーー!?」
それでも自分達の仕事ぶりを認めて多少だが給料も上げてくれたディエスの人気は高く、ここでもレジム公爵は嫌われていたのだった。
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