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59 あーん
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「ラム!キンジローが!ニノミヤンが!」
「……」
ソレイユ様にもお伝えしてから俺は正妃宮から走って帰ってきた。アレッシュ様が
「でぃえちゅーー!かえる、やー!」
「アレッシュ様っ!男ならやらねばならない時があります!未来のおやつを守る為に!」
「……う、うきゅ……?」
ぷにぷにの幼児の手を振り払ってラムの執務室へ飛び込んだ。これはきっとやばい奴だ。ちょっと興奮気味の俺の説明をラムは静かに聞いていて
「つまりはカズシの世界のニノという勤勉な男が、夏前に食べた茄子の味が秋に食べる茄子の味と似ていた。故にその夏は冷夏が起こる可能性が高いと判断。農民に冷夏でも育つ作物の栽培に切り替えさせ、たくさんの人々を飢えから救った、そういう事だな?」
「そう!それ!」
なんだこいつ賢いな!驚いた。
「俺がさっきソレイユ様の所で食べたお昼ご飯の茄子が、美味しかったんだ。あれはそういう事なんじゃないかなって!」
この世界の主食は米じゃなくて小麦だけど、やばいよね。このまま行くと飢饉からの暴動とかあっちゃったら嫌だよ、俺!
「……昼飯……美味かった、のか……待って、いたのに」
「ん?なんか言った?」
「なにも」
「とにかく、今年はこれから天候不順で作物が育たないかもしれないよ!」
これって凄いやばい事だよね?
「誰か、資料を。至急」
帝国の歴史は長く、冷夏が起こった時の事も色々あったが、どうもそうなりそうで俺達は青い顔をするしかなかった。
「ていうか、ラム。お腹が鳴ってない?ご飯ちゃんと食べたのか?」
「……」
無言で横を向いたよ、この男。なんで?
「もしかして、お昼食べてないのか?駄目だぞ、ちゃんと食べないと元気に働けないぞ」
「……」
スネてる、なんでだろ??俺が不思議に思っていると侍従のルトが良い匂いの焼き立てクッキーをたくさん持って来た。
「ディエス様!お、おやつです!おやつ。出来たてを料理長から貰ってきました!美味しいですよ、ね!お召し上がりください!!」
「おー美味そうだね」
昼飯を食べたばかりだけど、2.3個は摘まめそうだな。まだ暖かくてふわふわしている。なんだか必死にルトが俺にお皿を押し付けてくるので受け取って一個つまんでみた。
「美味い!美味いよ、ラム。食べる?」
振り返るとなんだか知らんがラムは馬鹿みたいに紙の書類を抱えて両手がふさがっている。いつの間にそんなに資料集めたんだ?お前やっぱり優秀だな!
「……うむ」
「てか両手が凄い事なってるじゃねーか。ホラ、口開けろよ。美味いよ」
「うむ」
ぽこっと口を開けたのでクッキーを一枚入れてやる。
「美味いなあ、料理長は料理が上手いなあ!」
「うむ」
またぽこっと開けるのでもう一枚入れる。
「美味いもんな」
「うむ」
入れても入れても口をぽこぽこ開けてくるので、ぽいぽい入れてやった。
「腹減ってたの?」
「……」
「ま、良いか」
ルトはふう、助かったとばかりに汗を拭いているし、ラムの機嫌は良くなったみたいだしで、これから俺達は冷夏についての資料をひっくり返して対策を練らねばならなかった。
「ルトに金一封を」
「ありがたき幸せ!!」
「なんで!?」
「……」
ソレイユ様にもお伝えしてから俺は正妃宮から走って帰ってきた。アレッシュ様が
「でぃえちゅーー!かえる、やー!」
「アレッシュ様っ!男ならやらねばならない時があります!未来のおやつを守る為に!」
「……う、うきゅ……?」
ぷにぷにの幼児の手を振り払ってラムの執務室へ飛び込んだ。これはきっとやばい奴だ。ちょっと興奮気味の俺の説明をラムは静かに聞いていて
「つまりはカズシの世界のニノという勤勉な男が、夏前に食べた茄子の味が秋に食べる茄子の味と似ていた。故にその夏は冷夏が起こる可能性が高いと判断。農民に冷夏でも育つ作物の栽培に切り替えさせ、たくさんの人々を飢えから救った、そういう事だな?」
「そう!それ!」
なんだこいつ賢いな!驚いた。
「俺がさっきソレイユ様の所で食べたお昼ご飯の茄子が、美味しかったんだ。あれはそういう事なんじゃないかなって!」
この世界の主食は米じゃなくて小麦だけど、やばいよね。このまま行くと飢饉からの暴動とかあっちゃったら嫌だよ、俺!
「……昼飯……美味かった、のか……待って、いたのに」
「ん?なんか言った?」
「なにも」
「とにかく、今年はこれから天候不順で作物が育たないかもしれないよ!」
これって凄いやばい事だよね?
「誰か、資料を。至急」
帝国の歴史は長く、冷夏が起こった時の事も色々あったが、どうもそうなりそうで俺達は青い顔をするしかなかった。
「ていうか、ラム。お腹が鳴ってない?ご飯ちゃんと食べたのか?」
「……」
無言で横を向いたよ、この男。なんで?
「もしかして、お昼食べてないのか?駄目だぞ、ちゃんと食べないと元気に働けないぞ」
「……」
スネてる、なんでだろ??俺が不思議に思っていると侍従のルトが良い匂いの焼き立てクッキーをたくさん持って来た。
「ディエス様!お、おやつです!おやつ。出来たてを料理長から貰ってきました!美味しいですよ、ね!お召し上がりください!!」
「おー美味そうだね」
昼飯を食べたばかりだけど、2.3個は摘まめそうだな。まだ暖かくてふわふわしている。なんだか必死にルトが俺にお皿を押し付けてくるので受け取って一個つまんでみた。
「美味い!美味いよ、ラム。食べる?」
振り返るとなんだか知らんがラムは馬鹿みたいに紙の書類を抱えて両手がふさがっている。いつの間にそんなに資料集めたんだ?お前やっぱり優秀だな!
「……うむ」
「てか両手が凄い事なってるじゃねーか。ホラ、口開けろよ。美味いよ」
「うむ」
ぽこっと口を開けたのでクッキーを一枚入れてやる。
「美味いなあ、料理長は料理が上手いなあ!」
「うむ」
またぽこっと開けるのでもう一枚入れる。
「美味いもんな」
「うむ」
入れても入れても口をぽこぽこ開けてくるので、ぽいぽい入れてやった。
「腹減ってたの?」
「……」
「ま、良いか」
ルトはふう、助かったとばかりに汗を拭いているし、ラムの機嫌は良くなったみたいだしで、これから俺達は冷夏についての資料をひっくり返して対策を練らねばならなかった。
「ルトに金一封を」
「ありがたき幸せ!!」
「なんで!?」
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