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46 職場に乱入者が現れる

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「本当にで良いのだな」

「脳筋だからな」

 ここの文官と武官は仲が悪いらしい。そりゃ脳筋と眼鏡は宿敵同士みたいなもんだし、仲が悪くなる事も多いだろうがそれを何とかしなきゃいけないのが上に立つ者の役目って奴。だから俺達は額を突き合わせてウンウン唸っていた。

 俺とラムがその辺の折り合いをどうするか執務室で作戦を練っていると、侍従のジョエルが珍しくノックも無しに扉を勢いよく開けた。

 これは、なんかトラブルがある奴!

 俺達はぱっと臨戦体制を取る。ジョエルは使える侍従だから、あいつが礼を損なう時は何かある。

「へ、陛下!ディエス様。突然、レジム公爵がお見えに……!」

 開け放たれたままの扉の向こうからレジム公爵とその後ろにあの一度見たら忘れないセンスの悪い真っ赤なドレスが見えた。

「レジム公爵、反ソレイユ派。娘を側妃に、いや正妃にしたいが為、ソレイユ様を蹴落とそうとしている」

 俺は知っている情報を小さく口にしていた。

「数日前、娘のリリシアが来た、無視した。臭い。正妃になると豪語」

「私の持つ情報とほぼ変わらぬ、問題ない」

 良し、情報の擦り合わせもばっちり。さて何を言って来るのかな?

「陛下」

「うむ」

 俺はギョッとする、執務机のあの緊急脱出用扉が少し開いて床の中から書類がニョキッと出て来たのだ!どこから!?

「レジム家の調書でございます。長く金融に携わり過ぎですね」

「ほう」

 ラム、慣れ過ぎ!書類を受け取って椅子に座る。きっと色々と情報を集めているリゼロか彼の部下だろうな……ぺらりと一枚目を捲ると、俺にも見るように促した……ほほう?

 ジョエルは慌てて扉を閉める。そのままの勢いで入って来そうだったからね。扉の内側に避難したジョエルには申し訳ないが、そのままには出来ないから俺は声をかけた。

「ジョエル、用向きを聞いてくれるか?俺と陛下は今、騎士団の運用について議論中なんだ」

「あ、はい!ディエス様!」

 ただの侍従であるジョエルでは公爵家を翳されたら従うしかない。でもそこに俺……俺じゃ弱いな、ラムの命令なら強く出る事が出来る。俺の言葉にラムも頷くから、ラムの意に沿ってるって事。そして俺とラムは仕事中であることを端的に伝えなくちゃいけない。

 鼻先で扉を閉められたレジム公爵は怒っているだろうが、外に出たジョエルは頑張っている。

「陛下にお会いしたい!」

「どのような御用なのかお聞きいたします!陛下は仕事中です、可及の用件で無ければレジム公爵閣下でもお通しする訳にはまいりません」

 おおー!凄いぞ、ジョエル!格上の貴族に逆らうのは勇気のいる事だろうに。立派だ感動した!

「ラム、ジョエルにボーナス上げようよ」

「そうだな。アレは良く仕えているしな」

 こういう時は話のわかる奴って良いよなぁ。ラムもちょっと良い上司の仲間に入れてあげよう。

「ええい!どけっ!」

「うわっ!」

 ダン!人が扉に叩きつけられる音だ!痛そう……。

「怪我への見舞い金も上乗せかも」

「治療の為の有給休暇も認めるしかあるまいな」

 頭が痛い。衛兵達もわあわあと騒ぎ出してもう会うしか事態を収集出来なくなっていた。

 
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