【本編完結】作られた悪役令息は断罪後の溺愛に微睡む。

鏑木 うりこ

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ボクが悪役令息?!

6 へ?

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「選抜試験は……合格者がいなかったんだ」

「へ?」

 ボクは可愛くない声を上げてしまった。

「参加予定の令嬢達が次々と辞退したのは知っているよね?アメシスの作戦だもんね」

「あ、はい。でも何人か来るって言ってましたよ」

 お茶令嬢を筆頭に4人は敵がいたはずなんだけど??

「ああ、試験会場には来たんだ。でもアメシスが不在と知ると皆帰ってしまったんだよ」

「なんで!」

 ボクが居なきゃ一人ライバルが減って有利なのに!

「彼女達の目的は、私の婚約者になる事じゃなくて、アメシスを負かす事だったみたいなんだよ」

「へ??」

 また可愛くない。ボクはアランみたいに可愛いびっくり声は出せないぞ!

「皆、口々に「あの生意気小僧が泣いてごめんなさいするのが見られないなら意味がない」って帰ってしまったんだよ」

「ええーーーー!ボクは泣いてごめんなさいなんてもうしないよ!」

 流石のボクもアッタマに来た!

「後、長年連れ添った婚約者を捨てられないそうだ……そっちに何かしたかい?アメシス」

「うん、しました。贈り物をする様にしかけたり、観劇のチケットをお渡ししたりしましたよ!」

 強敵になりそうな御令嬢の婚約者達が奮起するように煽ったりね。プレゼントのアドバイスとか、褒め方とかさ。婚約者の心をがっちりつかんで離さないようにするにはどうしたらいいかって。ただ黙っていればついてくる女の子なんて早々いないんだから、ちゃんと褒めたりしないと駄目だよって説教とかしたよ。

「まあそんなアメシスの地道な努力……作戦?が成功して、誰も私の婚約者になってくれなかったんだよ」

「はあ?!こんな素敵な王子様の婚約者を蹴るなんて馬鹿じゃん!あいつら」

 優しくて良い匂いがして世界一カッコいい人なんだぞ!あいつら目が腐ってるんじゃない?!信じられない!

「だから、誰もいなくて私は困っているんだよ。分かってくれる?アメシス」

「お任せ下さい!殿下!殿下の良さを天下に遍く令嬢に知らしめてきます!」

 殿下?サフィール殿下?どうしたんですか??頭が痛いんですか??ボ、ボク、急いでお薬取って来ます!

「シス……君のそういう所はとても可愛いと思うけれど、ライバルを増やすのは君にとっては良くない事なんじゃないのかい?少しは考えてから行動して欲しいな」

「へ?」

 そ、そうか……いくら殿下が素敵な王子様でもその魅力を皆に教えたらまた婚約者にしてくださいって令嬢が押しかけて来たら……!

「ボク、絶対戦って勝ちますから!任せてください!」

「シスなら勝てそうだけど、もう任せておけないよ。シス、アメシス。私の可愛いアメシス。どうか私と結婚して欲しい。君はちょっとお馬鹿で短絡的な所もあるけれど、頑張り屋さんで素晴らしい閃きと優しい心を持っている。私と一緒にこの国を支えて行って欲しいんだ……お願いだよ、アメシス」

「ぽえ?」

 ボクの前に膝まづいた殿下は隠していたみたいな紫のバラを一輪、ボクに差し出した。あ、これ知ってる。バラが好きな王妃様が育ててたやつだ。なんか水色のバラを育ててたみたいだけど、水色はこの国では咲かなかったって。その水色のバラの兄弟株に紫のが咲いたってメイドさん達が噂してたもの。

「アメシス。私の婚約者になってくれるならこのバラを受け取って欲しい。まだ一輪しか咲いてないのを母上に頼んで手折って来たんだ。私と結婚して欲しい」

「ぽ……」

 あ、あれ?ボク、殿下に何を言われてるの?結婚?え、と?あれ?けっこん、ケッコンってなんだっけ?ケッコンケッコンケッコン……?血痕???

アメシスーなにいってるのー!?あまりの事に脳内処理が追い付かなくなったボクは、真っ赤になってそのまま倒れたらしい。遠くでアランが慌ててボクに走り寄ってくる幻想が見えた……。


「……下水巡らせて、治水しよ……山から水路引こう……」

 夢で古代の治水と下水の引き方について滅茶苦茶誰かに勉強させられた気がするけど、まあいいや。それより!?

「あった!やっぱりあったあああ!!」

 辺りをきょろきょろすると花瓶に紫色のバラが一輪活けてあって、ボクはあれが夢じゃなかったんだってわかった!

「お父様ーー!これ、これ殿下からもらったのーーーーー!!!」

 寝間着のまま花瓶を持って走り回ったら皆に怒られてしまったし、

「お父様っ!ボク、殿下の婚約者にまたしてもらえるっ!やったああああああ!」

 って執事が止めるのも聞かずに飛び込んだら、執務室にはお父様と殿下までいて

「シス!?起きたのかい!?体は大丈夫か??熱を出して三日も目を覚まさないからとても心配したよ!」

「ぽええええええええええええええ!」

 とても恥ずかしい目に合った……。

「ダ、ダイジョブです……ご心配をおかけましたぁ……」

「そのようだね」

 にっこり微笑まれて、あまりの恥ずかしさに穴があったら入りたくなった!!

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