【本編完結】作られた悪役令息は断罪後の溺愛に微睡む。

鏑木 うりこ

文字の大きさ
上 下
45 / 54

45 アメシスの馬鹿ーーー!

しおりを挟む
「すっごーーい!ぱんっぱん!アクア……あ、アランだった。アランって細いからすんごく目立つね!きっとボクもこうなるんだねー」

「ア、アメシス?!」

 もしかしてまた高速馬車で来たの??!

「おーい?赤ちゃーん元気ぃ?うわ!ぽこぽこしてる!凄い!人体の神秘!」

「お帰り下さい、アメシスさん。お呼びしておりません」

 冷たい旦那様と執事のロバートの視線を受けてもケロリとしているのは本当に凄いと思う。

「ふふー!でもさ、赤ちゃん出てこなくて困ってんでしょ?ボクねーいい方法思い出したの!前世でボクのお姉ちゃんが言ってたんだけどぉ」

 そこから先、アメシスは私にだけ耳打ちしてくれた。

「え……い、いや!そんな、無理っ!無理だよっ」

 な、な、な、な!なんて恥ずかしい事を言うの?!アメシス!!私は顔が赤くなって行く。

「いやだって、思い出したんだもん。中々出てこない赤ちゃんにはぁー「お迎え棒」だって」

「ばばばばばかなこと言わないでぇーーーー!」

 信じられない!信じられない!!アメシスの馬鹿!なんて、なんて恥ずかしい事を!!

「お迎え……坊ちゃんそれはまさか……」

 ミトお婆ちゃんがアメシスの言葉を聞きつけてしまった!止めて下さい!それ以上聞かないでぇーーー!!

「そう!旦那様とエッチすれば赤ちゃんもスーッと降りて来るって言ってたの思い出したの!」

「そ、そんな訳ないでしょう!!アメシスの馬鹿っ!恥ずかしいっ!!」

「えー!試してみれば良いじゃない!お腹に傷が出来るより良いじゃーん。変なアクア。あ、アランか」

 アメシスはケラケラと笑ってから、角が出そうなほど怒っている旦那様をチラリと見る。常人なら短い悲鳴を上げて、寿命が5.6年は縮む所なのにニヤリと笑みを浮かべられるくらいアメシスの神経は図太い。凄い……!

「良いじゃなーい?ご無沙汰なんでしょー?ちょっとベッドでイチャイチャすれば、赤ちゃんだって驚いて出てくる……わっ!」

「馬鹿な事言わないでぇー!」

 思わずふわふわの羽枕を掴んでアメシスに投げつけた。私はコントロールは良い方なのでアメシスの横顔に上手に当てる。勿論羽枕だから、ぼふん!と良い音がして羽が何枚か散ったけれど、痛みなんてないと思う。
 証拠に枕を掴んだアメシスはにや~っと悪どい笑顔でこっちを見ている。

「へっへっへ!恥ずかしがっちゃってさぁ~?赤ちゃんが出来るまでどうせ毎日してたんでしょー?今更なに、ぶっ!」

 私は枕を2つ使う派ですから!

「アメシスっ!馬鹿っ!きらい!きらいっ!」

「やったな!枕投げはボクも上手なんだから!」

 何故か横にあった3つ目の枕を手に掴んだらアメシスが枕を投げ返してくる。

「わ、ぶふっ!」

「当たったー!ぶひっ!」

「うーーー!」

「アランちゃん!坊ちゃん、止めなされ、止めなされーーー!」

 ミトお婆ちゃんが必死で止めようとしてくれても私とアメシスはしばらく枕を投げ合い続けていた。

 そう言えばまだ小さい頃、こうやってアメシスと枕を投げ合った事もあったっけ。バレて怒られたのは私だけだったけど。

「な、何だか凄く腹が立って来たぁーーー!アメシスの馬鹿ぁーーー!」

「わぶっ?!」

 枕がダブルヒットして、アメシスが床に沈んだと同時に、お、お腹が、お腹が痛い……っ!

「いた、いたた……お、お婆ちゃん、お、お腹痛い……痛いですっ……」

「た、大変!産気付いたんだねアランちゃん!皆、準備をーーー!」

 
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

処理中です...